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天才テリー伊藤対談「オフレコ厳禁」
小泉首相の靖国参拝や富田メモの存在など、靖国神社を巡る議論が熱を帯びている。この一連の動きを、新右翼「一水会」の鈴木邦男氏と天才テリーが独自の意見で大激論。さらに、最近の市民運動の是非や、国民の右傾化まで話は及び…。
▼首相の靖国参拝は居直りだ
テリー 小泉首相の靖国参拝をどう思いました?
鈴木 居直りと傲慢を感じました。「俺にはアメリカがついている。アジアのほかの国は文句を言うな」と言ってるようで。
テリー 今後のアジア外交にどんな影響があると思いますか?
鈴木 まずいでしょうね。男の生き方、美学を通しただけで、外交がない。国益を犠牲にしていると思います。
テリー 7月には、「富田メモ」(1978年、昭和天皇が靖国神社のA級戦犯合祀について不快感を表したことを、富田朝彦元宮内庁長官が書き記したとされるメモ)の存在も明らかにされましたよね。
鈴木 僕は、やっぱりと思いましたね。今までもそういう説は広く流れていたんですけど、右翼的な人は強力に否定して、天皇陛下がそんなことをおっしゃるはずはない、だったら証拠を出してみろよとよく言ってましたよ。でも、証拠が出たわけですからね。
テリー 小泉さんは「人は人」っていう言い方をしたじゃないですか。
鈴木 あれはちょっと許せないなと思いましたね。
テリー あれはないですよね。
鈴木 ないです。靖国って何だって言うと、天皇陛下のために命をささげた人をまつってるわけですからね。英霊は天皇陛下に来ていただきたいわけですよ。首相なんかに別に来てもらいたくないですよ。極端に言うと。だって、東条首相バンザイで戦死した人なんか誰もいないですからね。
テリー 富田メモを右翼の人はどう受け取ってるんですか。
鈴木 右翼のほとんどの人は信じたくないというようなことを言っています。小林よしのりさんはもっとすごくて、「わしは天皇制を支持するけど、天皇を個人崇拝はせん」と(笑)。みんな戸惑ってますよ。宮崎哲弥さんは「メモが本物なら、ナショナリズムと天皇主義の間に亀裂を入れることになるかもしれない」と。
テリー そうですよね。
鈴木 7月末の「朝まで生テレビ」でその問題をやって、僕も出たんですけど、終わってからもいろいろと話をしてみると、こういうことを言う人がいましたね。「今の天皇陛下は非常に民主的な陛下だから、昭和天皇の遺志を継いでいるだけじゃなくて、ご本人の意志としても靖国神社に行かないんじゃないか。そうなると右翼の人は天皇を取るのか靖国神社を取るのか」と。
テリー それについてはどう思いますか。
鈴木 僕は天皇陛下を取ります。慰霊の施設としては靖国神社しかないと思いますけど、非常に偏屈ですね。A級戦犯の合祀もドサクサに紛れてやったようなところがありますし、そのあと一切批判に応じないと。
テリー ただ僕は、靖国神社が勝手に合祀したとは思わないんですよ。当時の厚生省も当然関与してましたよね。
鈴木 そうですね。だから、そのときに天皇がもし合祀をやめろと言ったら、天皇が政治に介入したことになるから、言えなかったと思うんですよ。それで不承不承認めて、行動としては参拝されないと。それは気の毒だなと思いますね。
▼A級戦犯は分祀したほうが…
テリー 僕はA級戦犯は分祀したほうがいいと思ってるんですけど。
鈴木 スムーズにできればそれでもいいかもしれないけど、いったんまつった人を外すのは、もちろんお墓もないし骨もないんだけど、日本人の意識としては嫌だと思うんです。それに分祀ということは、ほかにまつるわけですね。
テリー 東郷神社は受け入れるって言ってますね。
鈴木 前に韓国のテレビ局に取材されたとき答えたんですけど、例えば東条英機神社や愛国神社を作ると、今の右傾化の状況の中、これは韓国、中国に言われてやったんだなとなると、かえって排外的ナショナリズムをあおることになるんじゃないですかって言ったら、韓国のテレビ局の人も「それはまずいですね」って言ってましたけど。
テリー 確かにそれは難しいですよね。僕の考えでは、一番のポイントは英霊が今どう思ってるかということだと思うんですよ。例えば僕があの時代に戦死して靖国神社にまつられていたら、A級戦犯の全員じゃないですけど、お前たちのせいで俺は死んだんだ、何でお前たちと一緒なんだと思うと思うんです。
鈴木 だからメモても不快感という強い表現になってましたけど、ご自分も含めて戦争を指導した人間と、赤紙1枚で戦争に駆り出されて死んだ人間とは違うだろうという考えが天皇陛下の中にあるんじゃないかと思うんですよ。で、戦死と言っても、実際は戦死の人たちが多いですよね。
テリー あと、病死も多いですね。東南アジアで亡くなった方はマラリアとか。
鈴木 テリーさんがおっしゃった英霊の気持ちを考えた場合、首相の参拝によって近隣諸国ともめるのは英霊もいたたまれないと思うんですよ。自分たちのことを名目にして再びアジアがキナ臭くなって戦争だなんて言ったら、冗談じゃないっていう気持ちですよね。
テリー そうですよね。
鈴木 だから、ちょっと参拝を休んででも近隣諸国を説得する手を考えるっていうことがあってもいいと思うんですけどね。ただ、今までそういうことを言えなかったんですね。僕自身も。
テリー 何でですか。
鈴木 小泉首相が参拝しているのはいいことだというので、ちょっとでも批判すると韓国、中国に魂を売ったのかと言われるわけですよ。
テリー それはおかしいですよね。靖国で眠っている英霊の気持ちを考えるべきだと思うんですよ。
鈴木 亡くなった人たちが話してくれればいちばんいいんですよね。A級戦犯にしても死んだら神様なんだ、みんな同じなんだということで、亡くなった人を批判できない雰囲気が日本ではありますよね。
テリー そうですね。
▼日本全体が保守化している
テリー 21世紀、右翼はどうなっていくんですか。
鈴木 僕は左翼は死滅したと思っていますし、右翼は乗り越えられたと思っています。
テリー 何に乗り越えられたんですか。
鈴木 例えば「新しい歴史教科書をつくる会」とか拉致問題の「救う会」とか、そういう一般の市民運動ですよね。警察にマークされることもなくやってますけど、言ってることは右翼より過激ですよ。それから、「正論」とか「諸君!」とかに書いている新保守派の人たちだって、核武装しろとか、北朝鮮をすぐにやっつけちゃえとか言ってます。
テリー そうだよねえ。
鈴木 街宣車でしゃべってる人たちは、核武装しろとか、北朝鮮を攻めろなんて言ってない。もっと穏やかなことを言ってますよ。ただ、格好や雰囲気が怖いからそう思われてだけで。
テリー もちろん俺も国を愛してるんですけど、そういう人間がシンパシーを感じるやり方はないのかと思うけど。
鈴木 かつての60年、70年の、左右激突してるころの思い出というか…。
テリー テイスト。
鈴木 それをそのまま引きずってるんですよ。僕も街宣車のことを何か言うと批判されるんですけど、われわれは戦ってるんだと。ただ、発言の場がないから、悪徳企業とか悪徳政治家に恐怖感を与えて、そのことによって国を守るんだと。なるわほど、理屈としてはそうなのかな思うんですけど。
テリー 北朝鮮に先制攻撃とか、日本も核を持たなきゃダメとか一般の人も言うようになって、日本全体が右傾化というか…。
鈴木 保守化、管理化してますよね。
テリー こういう現状はどう思われますか。
鈴木 嘆かわしいと思います。そういうことを言うのは、かつての戦いの経験のある人じゃないですから。政治家ても学者でも、純粋培養されたような人たちですから、もうネット右翼と変わらないですよ。
テリー ネット右翼?
鈴木 ええ。昔は左翼が強大だったから、右翼も影響されてというか、いい敵と闘うことでかなり成長したと思いますよ。今は愛国心を持つのは当たり前だ、北朝鮮をやっつけるのは当たり前だと、すべてが当たり前になっちゃって、そうすると声の大きなヤツ、より過激なヤツが勝つということになってますね。
テリー そうか。
鈴木 北朝鮮と戦争をやるんだから靖国神社はその戦死者もまつるべきだと言ってる人もいますよ。何か恐ろしい世界ですよね。
▼靖国に対する認識が違う!?
テリー 日本は今後、どのように世界の中で生きていくべきだと思いますか。
鈴木 いろんな意味で世界情勢に対して責任があると思うんですよ。例えばアラブの自爆テロだって、保守派の人は、日本の特攻隊とは精神が違うと言いますけど、やっぱり神風から学んでる点が多いですよ。僕がイラクに行ってもみんな神風を知ってますし。で、あそこまで戦いながら、何で今日本人はアメリカべったりなんだと批判しますね。
テリー 確かにアメリカべったりですからね。
鈴木 それから、元北朝鮮工作員の安明進さんに会ったら、自分たちは陸軍中野学校(諜報、秘密工作要員の育成機関)の生き残りの人に教育されて、日本のサムライの映画を見せられて、武士道精神を叩き込まれたと言ってました。だから、僕は世界に対して、日本はこういう失敗をしたんだということをもっと教えていくべきだと思うんです。
テリー なるほど。
鈴木 イラク戦争だって、アメリカが日本に戦争を仕掛けたときとまったく同じですよね。で、占領したあとに憲法を作らせたり、同じことをやってる。日本も座して死を待つよりはと戦ったけれども、それはやはり間違っていたと思うんですよ。そういうことも含めて歴史を謙虚に検証し直す。それが世界にとって必要なんじゃないかと思います。
テリー そうですね。
鈴木 ところが、左翼がものすごく強かった時代のトラウマみたいなのがあって、自分たちの靖国神社を守らなくちゃ、ちょっとでも批判に応じたら終わりみたいなところがあるんじゃないですかね。
テリー 僕はこの前、靖国神社の中野遊就館に行ってきたんですけど、あそこはムチャクチャですね。
鈴木 かなりイデオロギーが過剰ですね(笑)。
テリー まさにタイムスリップしてて、これはいくらな何でも違うだろうと。英霊をまつってるのと意味が違うんじゃないかと。
鈴木 そうですね。かつては侵略戦争に利用されたんだ、犬死にだと言われたときがありましたから、その反動で、あの戦争そのものが全部正しかったんだというところまでいっちゃってるんですね。
テリー そうか。余裕がないんですね。
鈴木 そうです。葦津珍彦という右翼の大先輩がいるんですけど、みんな靖国神社に対する考え方が間違ってると。もともと武運長久で、元気に戦地に行って、元気に帰ってくるのを祈るのが本来の姿なんだ。それで不幸にして亡くなった人をまつる。それで死んで帰ってこい、生きて帰ったら恥ずかしいという雰囲気を出してるのは間違ってるとおっしゃって、ああそうかと、僕はちょっとホッとしましたね。
テリー 鈴木さんはすごいね。バランス感覚を持ってるから。
鈴木 いや、そんなこともないです。いろいろと叩かれながら(笑)。
(「アサヒ芸能」2006/9/7)
http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Gaien/2207/2006/shuchou060904-2.html