★阿修羅♪ > アジア5 > 217.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
【国際面】2006年06月27日(火曜日)付
首相辞任、治安回復へ 政情安定には不安も 東ティモール
【ディリ=藤谷健】辞意を表明した東ティモールのアルカティリ首相は26日午後、グスマオ大統領に辞表を提出し、受理された。30人以上が死亡した騒乱の責任をとった。首相に反旗を翻していた軍や警察の一部も近く任務に復帰、4カ月以上続く首都の治安悪化や政情不安は解消に向けて大きく前進した。ただ、政治が安定するには多くの課題が残っている。
首相辞任のニュースが伝わると、ディリ市内でデモを続けていた数千人の市民は、一転して喜びの声を上げ、歌を歌いながら、車に乗って街を走り回った。
また、13万人に上るとされる避難民らが、市内の避難所から荷物をまとめ、ひと月ぶりに家路に向かう姿があちこちでみられた。
消息筋によると、アルカティリ氏に代わる首相について、与党フレティリンは3人の候補をすでに大統領に提示しているという。
具体名は明らかになっていないが、政権ナンバー2の女性閣僚のアナ・ペソア国家行政相が有力視されている。
しかしアルカティリ氏にきわめて近いうえ、現地語のテトゥン語を話せないことから、国民の反発を受ける可能性がある。一方、国民の9割が信徒で、世論に大きな影響を持つカトリック教会は、ホルタ外相兼国防相とグテレス駐米大使を支持していると伝えられている。
今年2月に昇進などをめぐる軍内部の対立に端を発した混乱は、4月下旬以降、警察や一般市民を巻き込み、30人以上が犠牲となった。5月下旬からはオーストラリア軍など2500人近い外国治安部隊が警戒にあたる一方、国連による騒乱の調査が始まった。
今月に入り、首相が政敵や反政府勢力の掃討のため元民兵に武装組織の結成を指示していたとする疑惑が浮上。20日にはグスマオ大統領が、アルカティリ首相の辞任を要求し、受け入れられなければ自らが辞職するという「最後通告」を突きつけた。
●大統領権限の弱さ一因
4カ月以上にわたり、混乱が続いた背景の一つには、大統領と首相の権限分担がはっきりしない政治体制がある。
4年前に独立した東ティモールは、憲法制定にあたり、独立闘争を率いて大衆に人気のあるグスマオ氏と実力者のアルカティリ氏の両立を図るため、大統領と首相のポストを設けたとされる。これに司法と立法を加えた「4権分立」(国連幹部)ともいわれる。
その結果、大統領には実質的な権限がほとんど与えられない一方、首相の率いる行政と国会は、与党フレティリンが牛耳る形となった。
今回のように首相の進退が焦点となっても、大統領には解任の権限がなく、首相が圧倒的な影響力を持つ与党が国会の6割を超える議席を占めることから、両者の手詰まり状態が続くことになった。
このため大統領は辞意を表明することで、世論の求心力を高める「賭け」に出る一方、与党を支配する首相は、党の名を借りる形で辞職要求をはねつけ続けた。
首相が辞任したことで、当面、騒乱状態は沈静化に向かうと見られる。
しかし、未熟な政治体制が残る限り、政治的な安定にはなお時間がかかると見られる。
◇ ◇
◆東ティモールの最近の主な動き
06年2月 西部出身の兵士が待遇改善を求める嘆願書を提出
3月 首相が政府軍兵士の4割以上の約600人を除隊処分
5月24日 騒乱が激化、豪州など4カ国に部隊の派遣を要請
30日 大統領が非常大権を掌握
6月 6日 西部出身者数千人が首相辞任を求めデモ
13日 国連安保理が東ティモール問題で公開協議
20日 元民兵らに武器を配った疑いで前内相に逮捕状
大統領が首相に辞任を求める書簡
22日 首相が辞任を拒否。大統領が辞表提出の意向
23日 留任要求相次ぎ、大統領が「辞任再考する」
25日 与党が首相続投を支持。ホルタ氏ら2閣僚が辞意
http://www.asahi.com/paper/international.html