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□「縁辺化」――香港がただの「地方都市」になる日 [サーチナ]
http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__1931435/detail?rd
「縁辺化」――香港がただの「地方都市」になる日
【新聞が書かない中国経済】 連載第7回
それでも香港人はしたたかに生きていく――渡辺賢一
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2カ月ぶりに訪問した香港で、地元の新聞紙面を賑わせていたのは「縁辺化(えんぺんか)」の問題だった。耳慣れない言葉なので国語辞典で調べてみると、「縁辺」には「物のまわり」「物の周辺部」というだけでなく、「一国の周辺」の意味もある。すなわち縁辺化とは、香港が広大な中国大陸の周辺部に過ぎなくなるという意味であった。
地理的には昔も今もその通りなのだが、縁辺化という言葉には、香港が繁栄の蚊帳の外に追いやられる、というニュアンスがある。「このままでは、香港は『国際都市』ではなく、たんなる中国の『地方都市』に転落してしまう」。地元在住のジャーナリストは、真剣にそう危惧していた。
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きっかけは、中国が3月に採択した「第11次5カ年規画」(対象期間は2006−10年)だった。同計画によって、香港に隣接する広東省では、港湾などの大型インフラ整備が推進されることが決まった。広東省の港湾整備が進めば、香港を素通りする貨物がますます増える。華南地域の物流拠点としての香港の地位は、深センや広州など周辺都市の港湾インフラの充実によって地盤沈下を余儀なくされるのだ。香港の昨年の港湾貨物取扱量がじつに十数年ぶりにシンガポールに抜かれ、世界2位となったことは、すでに地位低下が始まったことを暗示しているともいえる。
しかし、振り返ってみれば、香港の産業競争力の低下は今に始まった話ではない。1978年の改革・開放以来、香港の製造業が30年近くにわたって中国本土へ移転し、ほぼ完全に空洞化したことは周知の事実だ。製造業から物流、各種サービス業と、今後より幅広い分野で香港の産業競争力が相対的に低下していくことは逆らえない流れであろう。得意とする金融ですら、いずれ人民元取引の自由化が実現し、中国本土の金融システムや資本市場が整備されれば、数十年という時間単位ではあろうが、香港の競争力が次第に失われていく可能性は否定できない。
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だが、たとえ香港が地方都市になっても、その遺伝子は数限りなく受け継がれ、中国全土、さらには全世界へと拡散するはずだ。香港市民は「香港是我家(香港はわれわれの家だ)」というように、今でこそこの街に愛着を感じているが、その大半は国共内戦や大躍進、文化大革命の混乱を避けて大陸から逃げ込んできた人々である。英国から中国への香港返還が決まった80年代以降、多くの香港人が北米やオーストラリアに移住したことも記憶に新しい。住みにくい街になれば、さっさと新しい土地を求め、より大きなビジネスがあれば、香港を捨てて中国本土や海外に拠点を移すこともいとわない。
イスラエル誕生以前のユダヤ人が、亡国の民にもかかわらず、そのしたたかな商才で欧米のビジネスを牛耳ったように、香港が国際都市としての地位を失っても、その富と「香港らしさ」は世界中に撒き散らされ、それぞれの土地の産業を活気づけるのではないかと思う。縁辺化は必ずしも悪いことばかりではない。
【執筆者】
渡辺 賢一(わたなべ けんいち)
経済ジャーナリスト。香港の日本語新聞『香港ポスト』編集長を経て独立。中国・香港の経済・産業情報を専門とする。主な著書に『大事なお金は香港で活かせ』(同友館)、『業界別 これから上がる!中国株厳選68銘柄』(双葉社)、『FX外国為替保証金取引「超」入門』(技術評論社)、『人民元の教科書』(新紀元社)、『イー・トレード証券ではじめる かんたん ネット株取引〜本気(マジ)で得する活用術』(技術評論社)。最新刊は共著による『世界株式地図』(新紀元社)。
■連載コラム 渡辺賢一の【新聞が書かない中国経済】
http://news.searchina.ne.jp/topic/x616.html
2006年05月07日20時39分