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東アジアで孤立する日本
米国一辺倒のツケが回ってきた
http://www.bund.org/editorial/20060505-1.htm
「侵略戦争で確保した占領地について権利を主張する人たちがいる」―盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領がかつてない強い調子で日本を非難した。経済・文化交流も進み、北朝鮮問題では最大のパートナーであったはずの韓国。竹島(韓国名・独島)周辺での日本の海洋調査計画を引き金に、日韓関係は一触即発の事態にまで発展した。
竹島問題で高まる日韓の緊張関係
ことの発端は、日韓の排他的経済水域(EEZ)が重なり合う竹島周辺海域で、日本が海上保安庁の測量船による海洋調査を計画したことだ。これに抗議した韓国外交通商省の柳明垣(ユ・ミョンファン)第1次官は4月14日、大島正太郎駐韓大使を同省に呼び、竹島周辺海域での海洋調査の即時中止を求めた。これに対し安倍晋三官房長官は「国際法上の観点から問題はない。韓国側が何らかの措置を行うことは受け入れられない」と記者会見で反論した。
今回日本政府が海洋調査を予定していたのは、竹島の北東にある約7万5000平方キロメートルの海域だ。この海域での調査は約30年ぶりで「かつて制作した海図が正しいかどうか確かめたい」と、あくまで調査は学術的なものだと主張する。
だが、実際のところは、6月にドイツで行われる国際会議「海底地形名称小委員会」で、韓国が日本側EEZにまで韓国名の海底地形名称を提案しようとしていることを昨年11月ごろ知り、「今年に入り、慌てて海洋調査の実施を決定した」という政治的理由が真相だ。韓国はすでにこの海域で詳細な調査を終了しており、海底地形に韓国名が付けば韓国による竹島の実効支配に国際的なお墨付きを与えることになる。日本は、同小委員会で対案を提出すべく必要なデータ収集のための調査に踏み切ったのだ。
15日、東亜日報は社説で「外国のEEZで海洋調査をするには、当該国の許可を得なければならないという海洋法規を無視した妄動である」「国際法に則って、停船や拿捕などの当然の対抗措置を執らなければならない」と主張。こうした世論に押される形で、18日夕、盧武鉉大統領は与党幹部との会議で「韓国が静かな外交を数年間行ってきた間に日本は攻撃的に変わりつつある。日本の船舶が韓国のEEZ内に入ってくる場合、侵略行為と見なすほかない」と述べ、「いかなる状況にも備えるべきだ」との強硬方針を確認した。
18日に海上保安庁の測量船が東京港を出発したことを受け、韓国は最大規模の警備艦サムボン号(5000t級)を始め、20隻の警備船をEEZと竹島付近の海上に配備。19日には、日本の調査船を拿捕しても「法的問題はない」との政府見解を発表した。
たしかに国際法上、EEZでは沿岸国の同意なしには調査できないことになっている。だが韓国は、過去4年間で4回実施した調査では事前通告を行わず、日本側の抗議も無視してきた。一方日本は過去30年間、竹島周辺の海洋調査を1度も行っていない。
こうした経緯を見るならば、今回の日本による海洋調査だけが非難されるいわれはないだろう。
ただし日本側も「自国内のEEZだから韓国と関係なく調査できる」と、HP上や書簡での告知しか行っておらず、正式に韓国側に事前通告したわけでもない。こうした外交上のずさんさが問題をさらにこじらせた。
当初「お互い冷静に」などとタカをくくっていた小泉首相だが、事態の深刻さに気づき、あわてて谷内外務事務次官をソウルに派遣し外交交渉に乗り出した。一時は交渉決裂かと思われたが、土壇場で、@日本は海洋調査を中止する、A韓国は6月の国際会議での地名変更提案を見送る、B中断していた竹島付近のEEZ境界線画定交渉を5月中にも再開する、との合意が成立し、海上での衝突という最悪のシナリオは回避された。
しかし、韓国は「我々の正当な権利である海底地名登録を今後必要な準備を経て適切な時期に推進する」(柳明垣外交通商省第1次官)と明言しており、問題が先送りされただけだ。再開されるEEZ境界線画定交渉で、両国が竹島の領有権を主張し合うだけならば、再び同じ事態が現出するしかない。
竹島の共同管理に道を開くべきだ
島根県隠岐諸島の北西157kmの日本海に位置する竹島。歴史的に日韓両国が領有権を争っているが、1952年以降は韓国が警備隊を常駐させ実効支配を続けている。国連海洋法条約に基づき、各国は沿岸から200カイリ以内を水産物や鉱物など海洋資源の管理権を持つEEZに設定できるが、竹島周辺では日韓双方の主張するEEZが重なっている。
このため日韓両政府は99年、竹島の領有権問題を棚上げにした新漁業協定を締結し、日韓が共同管理する「暫定水域」を設定した。しかし、同水域内では韓国船が主に操業しており、日本の水揚げは減少していた。
これに対して昨年2月、島根県議会が領有権の早期確立を掲げた「竹島の日」条例を制定したことで、日韓関係が急速に悪化した。昨年3月には盧武鉉大統領が竹島領有や歴史教科書問題等を取り上げ、「日本との厳しい外交戦争もありうる」と、かつてない日本批判の談話を発表した。それを引き金に韓国全土で激しい反日運動が展開された。
今回韓国がとりわけ激しく反応したのは、かつて日本の治外法権を認めた1876年の江華島条約が、日本の海洋調査をめぐる武力衝突がきっかけだった歴史とオーバーラップするからだ。盧武鉉大統領が「国粋主義傾向のある日本の政権が侵略の歴史を正当化する行為だ」と非難しているように、韓国は靖国・教科書問題と連動した日本の歴史認識問題と考えている。確かにこの問題が浮上する直前、韓国政府は「竹島は日本の領土」などとした扶桑社の教科書採択を批判していた。
「内政干渉だ」と問題をすり替え、アジア諸国の批判に耳を貸そうとしてこなかった小泉首相の外交姿勢のツケが回ってきているのである。諸外国はこの問題に対し、あくまで日韓2国間の問題だとして距離を置いた対応を示している。
米国政府高官は19日、「行動を抑制し、平和的解決を図るよう両国政府に呼びかけている」との談話を発表した。尖閣諸島の領有権で対立関係にあり、昨年4月日本の安保理常任理事国入りを巡って激しい反日運動が起きた中国では、秦剛(チン・カン)外務省副報道官が「韓国と日本が話し合いを通じて両国間に存在する問題について適切に処理することを希望する」と、立場を表明している。
中国と日本もつい最近まで、東シナ海のガス田開発を巡って険悪な関係になっていた。中国はこの間、尖閣諸島周辺と東シナ海にある天然ガス田の開発について、日中共同開発を提案していた。これに対して尖閣諸島の領有権にこだわる日本が難色を示したことで、4月上旬、中国は独自に東シナ海の日中中間線付近にある天然ガス田「春暁」の生産に着手した。
このままでは日本側の天然ガスまで採掘されてしまうと、日本もあわてて試掘を始めようとした矢先、中国が当該海域に船舶航行禁止措置を発令。
日本政府は一時、船舶護衛のための空自派遣まで検討する騒ぎとなっていた。その後中国が禁止海域を修正したことで事態は沈静化に向かい、4月22日に「両国の利益となる平和的解決を求める」ことを日中両国が合意したばかりだ。
領土・領海問題の核心は、そこにある資源の確保にある。だからこそ資源争奪が古くから国際紛争の大きな原因の一つだったわけだが、戦争による人的・物的損害や国際関係の悪化による市場の狭隘化のデメリットの方が大きいことを国際社会は学んできた。
かつてアルザス・ロレーヌ、ザールランドで産出する鉄鉱石と石炭を巡って幾度となく資源争奪戦争を繰り返してきたドイツとフランスが、第2次大戦後同地方の共同管理で合意し、それが今日の欧州連合(EU)発足の土台となったことは有名だ。また、石油などの資源の枯渇や、環境汚染の問題など、1国では解決できない問題に人類は直面している。
日韓・日中が領有権を巡って確執を繰り返すのではなく、資源の共同管理・共同開発を通じた東アジア共同体の形成へと向かっていくことこそ解決の道であり、東アジアは今その歴史的分岐点に立っている。
そのためにもかつての侵略戦争の反省は不可欠であり、靖国参拝や教科書問題で矮小なナショナリズムを振り回す小泉外交は、もはや完全に行き詰まっている。
http://www.bund.org/editorial/20060505-1.htm