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「北京の動向と胡錦涛訪米時のやらせアジテーション」---JMMから
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投稿者 ミスター第二分類 日時 2006 年 4 月 27 日 19:29:18: syFUAx3Wc1pTw
 

「最近の北京動向」と「胡錦涛訪米時のやらせアジテーション」について興味深い内容が書かれているので紹介させていただきます。

JMM [Japan Mail Media]                No.372 Thursday Edition
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                        http://ryumurakami.jmm.co.jp/
■ 『大陸の風−現地メディアに見る中国社会』 第70回
  「コーヒーにする? それとも牛乳?」
  □ ふるまいよしこ :北京在住・フリーランスライター
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 ■ 『大陸の風−現地メディアに見る中国社会』           第70回
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「コーヒーにする? それとも牛乳?」

 いや〜、ここのところ、北京市民の最大の話題はもっぱら「砂塵暴」、つまり日本でよく言われるところの黄砂ばかり。
中国北部では「風が吹けば桶屋が儲かる」というより、「風が吹けば洗車屋が儲かる」(桶屋に比べてかなりストレートだが)というくらい「風=砂塵」という構図が出来上がっている。特に今月17日のそれは砂塵が、いやもう砂とか塵とかいうレベルのものじゃなくて黄土がそのまま、なんと30万トンも風に乗って舞い降りてきたそうで、街中が工事現場のように土だらけになってしまった。

30万トンという数字にその瞬間に街を歩いていたら首の骨でも折れてしまいそうなすごさを感じたのは…わたしくらいか? 先週末に開店する予定だった友人のレストランは、自慢のサンルームのガラスをオープニングパーティ前にあわてて拭き直したそうである。

「北京は首都であり、また2008年にはオリンピックを開催することになっており、『居住都市』化を宣言しているが、黄砂と水不足がその最大の障害である。
北京では今年に入ってまだ4ヶ月だというのに、すでに大規模な砂塵暴が5回も起きている。
中央政府は巨額を投じて『南部水北部調達』及び全国黄砂防止施設を支援し、北京を包み込む位置にある河北省に対して『政治的』な態度で北京のために黄土をさえぎり、浄水を送る任務を要求している。

このほど取材に訪れた河北省承徳市のある農民は、『おれたちは木を切ることも、河川岸に工場を建てることも出来ない。それもこれも北京のせいだ』と言った」(「『河北は北京が憎い』:黄土を防いでも報われず」香港明報・4月24日)

「南部水北部調達」とは、中国で水資源の豊富な華南地区から水不足にあえぐ北部地域までパイプラインを建設して水を運ぶという計画で、中国という広大な国土におけるその建設資金やメンテナンス、さらにもろもろの費用や手間ヒマを考えるだけでくらくらしてしまうほど壮大なものだ。ほかにも「西部ガス東部輸送」「西部電力東部輸送」といった同様に施設ネットワークを使い、資源の需給地を直結させるというアイディアがいくつか進められている。
もちろん、すべて国の肝いりである。

「数年にわたって、毎年の全国人民代表大会で河北省代表団の代表は海外の記者が傍聴する会議において、北京及び天津に防風防砂及び水供給のための補償メカニズム作りを求めてきたが、これまで何の回答も得られていない。
消息筋によると、承徳市には数年前にダムの建設計画があったが、北京に供給される水量が減るために中央政府に停止を命ぜられた。
中央政府からの補助は不足し、北京・天津市政府からは補償を受けられず、河北省政府が防風防砂及び水源確保という政治任務を完了しても農民の収入は上がらない。
こんな政治任務がその効果をいつまで維持できるのかも疑わしい。農民が北京が憎いというのもしかたがないではないか」(同上)

 この記事によると、承徳市の農民の昨年の平均年収はわずか2582元(1元=約14円)。
北京市統計局が今年2月に発表した北京市民の平均年収1万7653元と比べると、北京からわずか210キロの承徳市には首都経済が波及するどころか、首都への犠牲精神が求められているのである。

 ただ、「首都vs地方」「中央政府vs地方政府」「政府vs農民」「富vs貧」というキーワードが並ぶと、すぐに「圧制」「暴動」「民主」といった言葉を結びつけることを期待する向きがある。

だが現地の状況からすると、このような「大vs小」「強vs弱」といった現象は中国ではほとんど日常化しており、中央政府に政治的任務を求められた地方政府が同じ構造によってその周辺地域に任務遂行を求めることが普通に存在する。

 中国において長年続いてきたこんな構造に対して個々の人々ですらもすでに「慣れ」っこになっており、任務や義務を要求する側もされる側も、そういった環境に慣れ親しんでいない我々からすれば意外なほど、すぐさま敵意をむき出しにすることはない。

 ただ、もちろんこのような出来事がまた日常的に蓄積されているということだけは知っておくべきだろう。

 そんな慣れによって「大の利益追求に小が協力する」という政治的任務が隅々までまかり通り、「小」の利益が「大」の利益に勝るという論理が確立していない、というかそれがまだ意識されていない社会文化背景において、「個」の利益優先が公的に論証されるのはまだまだ難しい。
 それが中国の現状だ。
 多くの就業チャンスを生む都市とその産業を守るのが先か、それとも貧しい農村の産業環境を活性化させるほうが先なのか。
 実際にはどちらに傾いても不満は必ずや噴き出してくる。

 だからこそなのだろう、胡錦涛氏がアメリカ・シアトルで「スターバックスのコーヒーが飲みたい」だの、エール大学で「若かったらここで学びたい」だのとリップサービスを振りまいている最中、国内では温家宝首相が重慶市の三峡ダム建設のために立退いた農民たちが新しく開墾した村を訪れて、「人々が皆、毎日牛乳を500グラムずつ飲めるようにすることが夢だ」と語ったそうである。

 この胡・温体制による「一人が外遊すれば、一人は国内視察」という対照的な構図は、昨年、そして今年の旧正月のときにも演じられた。

 今では現体制トップのアピール方法としてすっかり根付いた感がある……それにしても、誰もが毎日牛乳500グラムずつ飲んでたら、中国人みんなが姚明(ヤオ・ミン)になっちゃうぞ。


 それにしても、胡錦涛主席のアメリカ訪問。
 中国政府は訪米前に特に熱心に海賊版撲滅キャンペーンを高らかに宣言し、さらにはさすがにハイテクノロジーの先端産業であるコンピュータ業界に手をつけるわけにはいかなかったのか、インターネットの「整頓」に着手した。

 11日に大手ポータルサイトを集めて「文明ウェブサイト運営」を宣言させて、「不文明サイト」の摘発に大々的に着手した。
 そのお陰なのかどうかは分からないが、22日には中国最大のATMネットワーク「銀聯」が全国的に8時間ダウンし、さらに24日午前には北京市内のあちらこちらでインターネットに繋がらない、また繋がっても一部一般サイトにアクセスできないといったトラブルも
発生した。
 しかし、使用者側からしたインターネットの混乱が国内ニュースメディアではまったく触れられていないところを見ると、やはり政策推進による「大の利益に小が協力した」結果だったのではないか。
 過ぎたるは及ばざるが如し、市民たちは騒がず、そうやって「慣れ」を発揮する。

 ホワイトハウスでのスピーチ中のハプニングでも、中国国内のCNNの生放送ではその時だけ画面が真っ黒になったそうだ。
 以前も書いたが、中国のテレビ生放送は全て、実際に起こっているその瞬間より数秒遅れて放映されるシステムになっている。
 ただ、まさか一部の外国人住宅だけが視聴が可能なCNNにもそんなシステムが導入されているとは知らなかった。
 CNNのコメントによると、画面処理は中国側の監視者によって行われたという。とはいえ、ドイツ語チャンネルではしっかり問題の箇所は流れたらしい。

 わたしは香港フェニックステレビの生放送でスピーチの様子を見たのだが、残念ながらわたしがテレビを点けたときはすでにハプニングが起こった後だったようで、中国の一般家庭にも流れるフェニックステレビがどうあの場面を処理したのかは定かではない。

 わたしがそれを知ったのは翌朝、インターネットでニュースをチェックしていたときだった。

 その瞬間、「やったか、アメリカ政府」というのが正直な感想だった。

 というのも、胡主席訪米前の中国政府の慎重な貿易関連の発言、そして先にも触れた海賊版撲滅キャンペーンのパフォーマンスなどに、今回の訪米が手ごわいものになるだろうと緊張しているのがすでに感じられていたからである。
 さらにはワシントンをかわして、まずはシアトルでマイクロソフト、スターバックス、ボーイングという中国人にとっての新アメリカ製「三種の神器」(余談だが、旧アメリカ製「三種の神器」は、マクドナルド、コカコーラ、そしてケンタッキー・フライドチキンだろう)メーカーを一挙に訪れるという、これまでとはちょっと違った発想は、国家主席の訪米を
盛り上げて明るい話題を仕立てるためのものだった。

 なのに、ホワイトハウスでのスピーチという、その中でもやはり最も華々しいパフォーマンス性に富んだ場で、それをぶち壊すかのような法輪功支援者のアジテーションがあったと知った瞬間、2002年のブッシュ現大統領の中国訪問を思い出した。

 あの時、ブッシュ氏は大統領として初めて中国を訪問し、中国のトップ大学である清華大学で講演し、中国において超エリートと見なされている学生たちを前に「民主とは」「自由とは」を何度も何度も繰り返した。
 それはテレビを通じてそれを見ていたわたしですら、「ちょっとくどすぎないか」と感じるほど相手を子供扱いした内容で、民主や自由について「言って聞かせ」続けた。

 その時のブッシュ氏に対する印象は、彼はもしかしたらかつての冷戦時代における対中感覚そのままに、中国を民主自由のアンチテーゼと見なし、彼らに対する民主アジテーションこそがアメリカ大統領の役目なのだと信じているではないかというものだった。


 「アメリカの政府関係者があの新聞が法輪功の看板紙であることを知っていたはずだ。
彼らはワン氏(当日のアジテーター:筆者注)が領事館でのピケ、記者会見での反共産主義的質問、受刑者の移植臓器提供や彼女のパスポートの取り消しに対する抗議活動を行ってきたことを知らないわけがない。
 胡氏の最も誇らしいその瞬間にヒステリックな叫び声を上げることが彼女にとってかけがえのないチャンスだということを、彼らはしっかりと理解していたはずなのだ。
 そして彼らはじっくりとそれを考慮した上で、彼女をそこに招き入れたのだ」
(ブログ「Hemlock’s Diary」・4月21日)

 これは香港在住者による英語ブログだが、『エポックタイムズ』紙記者として入場パスを渡されてワン・ウェンイー女史が会見の場に足を踏み入れたことに対して、わたしも同じ意見である。

 もしそうでないとしたら、中国並みに同調意見だけを求めることはしないとしても、テロ以来世界で最もセキュリティチェックに気を使っているアメリカにしては信じられないほどの間抜けな話ではないか。

 これを偶然と考えるか、
 故意と考えるか。

 
 2002年の首脳会談の際も、ブッシュ氏はトップ会談で民主や人権について触れたものの、清華大学でのスピーチのようにしつこく繰り返すことはなかった。
 そして今回ももとからして華々しい会談の成果は見込めないという前提において、大統領の口からではなく、スピーチ出席者のアジテーションという形でチクリとやりたかったのではないか。
 そしてブッシュ氏は「ハプニング」について謝罪したものの、アメリカという国に実際に存在する、または存在することのできる「民主を求めるアジテーション」を出席者にアピールし、それ自体への論評はしなかった。
 ……だとしたら、手ごわいぞ、アメリカ。でも面白いぞ、ブッシュ。

 中国ではこのハプニングについてまったくニュースメディアでも取り上げられていないようだ。
 ただ、その後国内の法輪功関連の話題がニュースサイトに流れたりするなど、「波及効果」はちらほらと見られる。
 報道されていないので「ハプニング」に対する中国政府の見解はまったく分からないが、これを本当に「ハプニング」としてとらえているのだろうか、それとも「陰謀」と見なしているだろうか。

 たぶん、その答はきっと次回のアメリカ首脳の訪中時に明らかになるだろう。中国って、いつだって「目には目を、歯には歯を」なのだから。

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ふるまいよしこ
フリーランスライター。北九州大学外国語学部中国学科卒。1987年から香港在住。

近年は香港と北京を往復しつつ、文化、芸術、庶民生活などの角度から浮かび上がる
中国社会の側面をリポートしている。著書に『香港玉手箱』(石風社)。

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