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□共感呼ぶメードをテーマの実録映画 スリランカからレバノンへ出稼ぎ|アルジャジーラ
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共感呼ぶメードをテーマの実録映画 スリランカからレバノンへ出稼ぎ
【アルジャジーラ特約22日】レバノンで働くスリランカ人メードたちを取り上げた「レバノンのメード」と題するドキュメンタリー映画(上映時間26分)が今、レバノンとスリランカで話題を呼んでいる。
この映画は、レバノン女性のキャロル・マンスールさんが撮影を担当、祖国の家族を養うため、より高い収入を求めてレバノンにやって来て、メードとして働くスリランカ人女性たちを「主人公」に、休みなく働く姿や、雇い主から虐待を受け、命まで落としてしまった悲惨な例などを描き出している。
初めに登場するのは、レバノンへ出稼ぎに向かおうとするスレイカさんという16歳の少女。レバノンでこれから受け取る月額収入100ドル(約1万1700円)を、家族の生活費、自らの結婚持参金(ダウリ)そして妹の学費に当てることになる。
スレイカさんのようにレバノンで働くスリランカ人女性は8万人にも上り、彼女は出発を前にエイズ、B型肝炎、結核の各検査、さらに妊娠の有無の検査を受ける。
これらに加え、スレイカさんは12日間の英語、アラビア語教育、調理法、電気掃除機やミキサーといった家電製品の取り扱いなどの講習も受ける。スレイカさんが住む村にはまだ電気が通じていないのだ。
そして画面には「いったんメードとしての契約を結ぶと、私たちは雇い主の所有物となり、3年間、1日の休みもなく働くことになります」と話す声が流れる。
マンスールさんはアルジャジーラネットに対し、「撮影中に多くの虐待例を知りました。メードの中には働き始めてから3カ月間、給与を払われない者がいました。雇い主がエージェントに払った手数料の元を取ろうとしたからです。働いている間、メードたちはパスポートを取り上げられるのです」と話す。
スレイカさんも別のメード、クマリさんと同じ運命をたどるかもしれない。クマリさんの場合、最初の雇い主は彼女を食べ物なしで数時間もかぎの掛かった部屋に閉じ込めたという。
20歳代というクマリさんは、レバノン人のエージェントに職業あっせん手数料として2000ドルを払い旅券を返してもらうため、1年以上にもわたって「ただ働き」を余儀なくされたという。
リラさんも子どもを祖国に残してレバノンで働き、給料は酒飲みの夫ではなく、妹に送金している。マンスールさんがスリランカで暮らすリラさんの娘を写した場面を見せると、リラさんは泣き出した。
「スリランカの家族は彼女が稼いで送る100ドルの給与に頼り切っているのです」とマンスールさん。
スリランカのメードたちの中にも、ニロシャさんのような「成功例」もある。夫はスリランカで、ニロシャさんさんはレバノンでそれぞれ懸命に働き、将来、自分たちの家を建てるのを楽しみにしている。ニロシャさんの雇い主は「収入を得るため、何でも働いてくれるから助かる」と話す。ニロシャさんは他のメードと違い、この記録映画の中で姿を出し、登場している。
マンスールさんは「メードへのインタビューさえ拒否する雇い主もいました。やましい気持ちがあるからでしょう。カメラの回っていないところで、『メードを鍵のかかる部屋に入れている』と認める雇い主もいました」と、撮影時の苦労を話し、さらに「メードの虐待例をより深く取材しようとすれば、それだけ困難が伴いました」と続ける。
映画の中では虐待例も出てくる。撮影中に分かったのは、メードたちが寝室を持っていないことだった。長いすを寝台代わりにしたり、窓のない所で寝ているのだ。
マンスールさんによると、雇い主が金持ちほど、メードを虐待しているという。「メードを人間とは見ていないからでしょう」と彼女は言う。
スンダニさんというメードは、雇い主の息子から虐待を受けた。匿名を希望したもう一人のメードは10代の息子に繰り返しレイプされたという。
名前を名乗らない代わりに撮影に応じたもう1人のメードは、雇い主にベランダから放り投げると脅されたほか、男の手錠を掛けられて暴行されたり、髪の毛を引っ張られるなどしたという。
ベイルートにあるアメリカン大学のレイ・ジュレイディ教授(社会学)は同映画中のインタビューで、「家庭で働くメードたちの虐待例や死亡例を報じる場合、検閲がありそうだ」との意見を寄せている。
マンスールさんの作品はベイルートで2回上映され、昨年11月の上映の際、彼女は知人にメードを連れて来て、鑑賞してくれるよう頼んだ。観客の中には同映画に当惑した者がいたという。
マンスールさんは「映画に出てくるスリランカの美しさをほめるが、雇っているメードたちには関心が薄い」と話す。
このドキュメンタリー映画はレバノンのカリタス移民センター、欧州連合、カリタス・スウェーデン、国際労働機関(ILO)などの協力で、昨年9月に完成し、現在、レバノン内の学校や世界の子どもたちを対象に上映され、祖国を離れ海外で働く労働者たちの問題を理解してもらっている。
ILOがこのほど発表した声明によると、レバノン政府の労働相は労働法見直しと共通の雇用契約づくりに向けた委員会を設置した。委員会はメード向けに「権利と責任」と題する小冊子を今年5月までに作成する予定。
マンスールさんは今回の映画のほかに、児童労働を取り上げた作品も制作している。この中ではカイロのストリートチルドレンをめぐる話を描き、各国で賞を受けた。
マンスールさんは最近、「見えない子どもたち」と題する作品を完成された。ここで取り上げられているのはレバノンでの児童労働だ。また、彼女は昨年秋、「レバノンのメード」の監督と共にスリランカを再訪、他のスリランカ女性たちの話を取材、記録した。
マンスールさんは新たに取材した部分を加え、「レバノンのメード」を52分間の作品にするための資金を求めている。(翻訳・ベリタ通信=志岐隆司)
2006年04月23日03時09分