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〔PC遠隔操作事件〕報じられてきた「決定的証拠」はなかった
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投稿者 gataro 日時 2013 年 7 月 11 日 08:39:20: KbIx4LOvH6Ccw

【PC遠隔操作事件】報じられてきた「決定的証拠」はなかった 
http://bylines.news.yahoo.co.jp/egawashoko/20130711-00026343/


江川 紹子 | ジャーナリスト
2013年7月11日 1時9分

検察が、片山祐輔氏の犯人性についての主張を明らかにするとしていた7月10日午後5時過ぎ、主張を書いた書面が提出され、弁護人に請求証拠が開示された。それを受けて記者会見した弁護人は、「片山さんと犯行を直接結びつける物的証拠は全くなかった」と強調した。これまで、片山氏が猫に首輪をつける場面のビデオ映像があるとか、片山氏が以前使っていたスマートフォンから犯人が送りつけたのと同じ猫の写真が復元されたなど、決め手となる物証があるという報道が何度もなされてきたが、開示された証拠の中には、そうしたものはなかった、という。


会見する佐藤博史弁護士


ただ、検察側は、片山氏が犯人とみて矛盾しない、あるいは片山氏が疑わしく思えるような間接証拠をいくつも出している模様だ。そうした証拠を積み重ねることで、有罪の心証を形成しようという作戦なのだろう。


江ノ島の猫に首輪は誰が…

たとえば、江ノ島については、1月3日午後2:54〜3:16の監視カメラ映像が開示された。検察側は、観光客が撮った写真から、この間に猫に首輪が付けられたと時間を特定。弁護人が見たところ、この間に5,6人が猫に接触していた、という。その1人が片山氏と見られるが、監視カメラの位置が遠く、何をしているかは映像からははっきり分からない、とのこと。


犯人が送りつけた猫の写真


検察は、警察の行った再現実験から、片山氏がいる位置から猫を撮影すると、犯人が送りつけたのと同じ角度の写真となると主張している。ただ、猫につけた首輪を買った場所や日時、2度にわたる神奈川新聞の入手については、特に主張はなされていない、という。

今年1月1日に犯人が送りつけてきたメールには、雲取山の山頂でUSBメモリを埋めたとして、その場所を「このへん」と書いた写真が添付されていた。捜査の結果、これは犯人が撮ったのではなく、インターネットのサイトに掲載されていた写真を使ったものと検察は断定。元日に警察が山に上った時には、凍っていたうえ、斜めに掘ったので見つからなかったが、5月16日に再度上って発見した。ただ、なぜ元日には斜めに掘ったのか、なぜ5月に再び探しに行ったのかなどは、明らかにされていない。


言葉の検索はメール作成の証拠になるか

検察は、犯人から送られたメールは片山氏が書いたと主張。その根拠として、そこに使われた言葉を彼が検索していることを挙げている。たとえば、昨年11月13日には、彼の携帯を使って「警察 作文」「調書 作文」という言葉が、1月2日にも携帯から「江ノ島」「猫、首輪」という言葉の検索履歴がある、という。さらに、昨年10月には、脅迫メールを送られた幼稚園のサイトや、やはり脅迫の対象となったコミケ関連の掲示板を閲覧した履歴がある、という。

こうした履歴は、いかにも怪しげに見えるが、果たしてそれがメール作成の根拠たりえるのだろうか…。詳細は、公判廷での検察の立証をじっくり聞いてみないとよく分からない。しかも、問題のメール自体が片山氏の使っていたPCから見つかったり、その痕跡が検出されたわけではないのだから、なおさらだ。


職場で仕事の片手間にウイルス作成?

問題のウイルスについて、検察側は、片山氏の派遣先のPCを使って開発された、と主張している、という。その根拠として1)C#言語によるプログラミングに使うVisual Studio2010が派遣先PCにインストールされていた痕跡がある 2)片山氏がC#でプログラミングをしているのを見たことがあるという派遣先社員の検面調書が1通ある 3)このPCで開発されたことを示す文字列が多数検出されたーーなどを挙げている、とのことだ。

ただ、2)の調書は、なぜか捜査が終わる直前の6月15日に作成されたもの。しかも、彼のプログラミング能力を一番よく知って、その能力に見合う仕事場に派遣しているはずの、所属会社の人の調書は一切出されていない、という。また、検察側は、ソースコードに記載されたPCのメーカー名や著作権を示す値が、派遣先PCと矛盾しないと主張しているが、それは書き換えることが可能なものだ、と弁護側は反論。弁護人は、今後、検察官の主張を精査し、証拠を詳細に分析することにしている。

詳細な反論はそれからになるだろうが、ウイルスが派遣先PCで作られたという主張については、佐藤博史弁護士はすでに強い疑問を呈している。

「片山さんが、派遣先で仕事とは別のプログラミングをやるとしたら、一日細切れにせいぜい1時間程度しか作業はできない。しかも、他の人にも見られる環境だ。彼の勤務はカレンダー通りで、土日は丸々休みだ。犯人であれば、土日に自宅でじっくり作業するのが普通ではないか。検察側の主張は、あまりに不自然だ」

こういう主張になったのも、片山氏の自宅PCからはウィルス作成の痕跡すら見つからなかったからだろう。その結果、彼はたっぷり時間のある土日に自宅では何もせず、平日の昼間に勤務先で、仕事の片手間に、多くの人から見られうる環境で、1からウイルスを作成した、との主張せざるを得なくなったようだ。

なお、派遣先のPCは片山氏が使っていたが、新品をあてがわれたわけではないようで、社員たちもパスワードを知っていた、とのこと。そうなると、PCから見つかった痕跡を直ちに片山氏と結びつけるのは難しいのではないか。

また、捜査段階にかなり報じられた、米国のサーバーに派遣先PCでアクセスした”痕跡”をFBIが突き止めた、とされる情報についても、検察側の主張や証拠では何ら明らかにされておらず、「英語の証拠は一切なかった」とのことだ。

佐藤弁護士は、事件と片山氏を結びつける決定的物証があるかのような報道がされたことについて、「報道機関は、よく手を胸に当てて考えてもらいたい」と訴えた。

また、佐藤弁護士は3回目の公判前整理手続きを公開でやって欲しいと裁判所に申し入れを行っていることを明らかにした。


裁判所には公判前整理手続きを公開してもらいたい



早稲田大学政治経済学部卒。神奈川新聞社会部記者を経てフリーランス。司法、災害、教育、カルト、音楽など関心分野は様々。著書『人を助ける仕事』(小学館文庫)、『勇気ってなんだろう』(岩波ジュニア新書)など。

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