顔面を剥がしたような列車がゆるゆるとホームに入っただろう。
剥き出しの前照灯、だが真っ暗だったな。電気を落とし、
運転手と作業員が先頭車輛前面に顔を覗かせて、それ自体あぶなっかしく映る。
ホームに駅員たちが駆け寄っただろう。「怖かった」「怖かった」と交わすのが、
この駅の駅員の挨拶か。乗客が不安になる言葉も慎めないほど、興奮して余裕が無いのか。
この車輛の運行はダイヤに無いだろうが、
だからとて口で指示するのは誰か直々のお達しかもしれないではないか。
そこにくるまでは何も伝えず、初めてその列車の使い途を告げられたとしても、
むろん駅員がその意図を察知することなど、到底出来ないはずなのである。
警告する駅として浮かぶのがＡ駅とＢ駅だ。今回は、その２駅との関係が半減したような
Ａ駅に近い現場だったが、事故車輛は当然のごとくＢ駅まで運ばれたであろう。
かつてＢ駅付近ではヘリが舞い、初回は直近を旋回、２度目は真上に到達したとして、ならば
連続送信される限り、あの装備で、いまやケーブルの被覆の外からでも、信号の逆探知が出来るのかもしれない。
前回は事故の翌日、運転再開を決め、時速１５キロ以下なら、安全確保を可能としたか。
そして脱線したわけだな。無事というパターンに馴れていいのか。
ポイントが原因である可能性が高い？　再開する場合はポイントの切り替えを行わない？
今回も早々に再開を匂わせているようだが、誰の命令か。
ポイントだという保証でも有るのか。
もし違っていたら、回送に続く無傷の乗客、次は何が起きる？　起こせる？
少し忘れた頃、公にさせずして速度を戻したとして、
次回の怪我人については隠すか、いま既に隠しているのか。
死人は隠せなくても、血染めの警告に過ぎないのだろうな。
車両は或る駅を出され、線路上の或る地点に留められたはずだが、その駅が前と同じであるのみならず、
しかも、そこにその家がある、といえるのだな。
線路への最短距離の地点が、即ち無惨な事故車輛を敢えて晒しているその場所だろう。
先頭車両のみ客室の電灯が消されているとして、それは合図が維持されているということなのかもしれない。
事故で消えたとしているのか、巧妙な事故で消したか。
家の近くで、中途半端な線路上に、幽霊船のような損壊列車を、急いで工場屋根の下に隠し込むでなく、
置き続けている図。先頭以外は明明と電気を灯して？

関西には３つの鉄道があるな。運命の鉄道、警告の鉄道、霊感の鉄道、盲目の心臓。
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