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レルネット主幹…
…北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)が、わが国、三陸沖海域に弾道ミサイル「テポドン」の威嚇発射(決して発射実験ではない)を行った。8月21日付の拙エッセイ「正義という不正義」で、ミサイル攻撃について論じたばかりであり、読者からの反応も多かったので、続編を書こかと思っていたところだった。
私は、ここで、日本政府の危機管理能力のなさを論じるつもりはない。なぜなら、それは、論ずるまでもない「自明の理」だからである。輸入血液製剤によるHIV感染しかり、阪神淡路大震災しかり、ペルーの大使館人質事件しかり、昨今の金融危機しかり…。数え挙げればきりがない。この国の政府は、独立主権国家の最も基本的な責任が「国民の生命の安全・財産の保全」であることに呆れるほど無頓着である。
…総務大臣って、会社の総務部長じゃあるまいし、恥ずかしくないのだろうか? それとも、会社の総務部長のように裏で「総会屋(野党・外国?)」に金を渡すのが仕事だろうか? 漢の高祖劉邦が紀元前202年に秦を滅ぼした時に最初にしたのは、秦の法律をすべて廃しし、有名な「法三章のみ」と宣言して民衆の喝采を浴びた故事をなんと心得る…。 「国民の生命・財産を守る」ためだけなら、中央政府は、外交・国家安全保障を担当する外務省と国防省、国内の治安維持担当の司法省、それに自然・生活環境を守るための環境省の4省で十分だ。その他の仕事は、地方もしくは民間ですればよい。あとは、個人や会社の能力と才能を自由に発揮すればよい。それを、必要のないことばかり規制して、肝心のことが抜けているのが実態である。
…対応如何によって国際的に日本政府の「鼎の軽重」が問われていることを、マスコミや国民も自覚すべきである。10日前、私は、アメリカによる「テロ支援国家(米国によると、アフガニスタンやスーダンの他にイラン・リビア等)への攻撃」の正当性を否定したが、今回のミサイル事件はさらに悪質である。アメリカは、その2週間前の「ケニアとタンザニアの同国大使館への爆弾テロ事件への報復攻撃」という、一応、もっともらしい(正しくないが)理由を付けたが、今回の北朝鮮の日本への威嚇攻撃に、北朝鮮はどのような理由をつけて自己を正当化するつもりなのであろうか? 「食料援助へのお礼」とでも言うのであろうか? 第一、北朝鮮は「テロ支援国家」ではなく、国家そのものが「テロ集団」である。日本人拉致疑惑や韓国への度重なる潜水艇潜入事件、外交特権のある大使館員による組織的な密輸、それに国家による「偽米ドル札偽造事件(いわゆる「スーパーK」)」など、数え挙げたらきりがない。
こういう事件が起きると必ずテレビに登場する軍事評論家・危機管理アナリストの小川和久氏は、大学(同志社大学神学部)の先輩であり、年に2〜3度は手紙のやりとりをする仲である。また、当時(約20年前)、ドイツ人のK・シュペネマン教授から「キリスト教倫理学」と称して、「正戦論(自国の軍事行動に宗教的理由をつけて正当化する技術)」や「核抑止力理論(当時の米ソ軍事バランスについて、具体的なミサイルの性能まで挙げて説明)」などについて習った。「神学」といえば「聖書」や「教会の歴史」のことを学ぶのか? と思っていた学生時代の私は、欧米人の自己正当化への執念に感心した記憶がハッキリと残っている。その点、日本の平和教育は「観念論」に過ぎるところがある。
アメリカにいた時に、現地のハイスクールの授業を見学して驚いたのは、核爆発のケーススタディだった。あらましは、「太平洋の島で核実験が行われることになったのであるが、連絡ミスで島に10人の人が取り残された。しかも、無線は故障している。1時間後に核実験が行われるのであるが、最寄りの島まで、飛行機で片道30分かかるが、あいにく、その島に残された小型機にはパイロット以外に5人しか乗れない。取り残された10人の内訳は、臨月の妊婦(近々2つの命になる)・小学校の教師・ノーベル賞受賞者の世界的学者であるが年齢が75歳(あまり長く生きられない)・牧師・大会社のオーナー社長・前科3犯の元服役囚等々あるが、これを子供たちに自由に討議させて『あなたなら誰と誰を助ける(誰と誰を見殺しにするか)? その理由は何故か?』という答えを出させる教育」をしていた。もちろん、「正解」はない。思考力を身につけ、しかも、他者をいかに納得させるかの技術力を養う者だ。
日本だと観念論で「人ひとりのいのちは地球より重い」(そんなことは決してない。毎日、地球上で数十万人の人が死んでいる)と、思考を停止したり、実際に学校でこんな授業をしようものなら、「差別的だ!」と教育委員会やPTAから糾弾されること請け合いである。しかし、ここまで極端でなくても、人生のいろいろな場面で、苦しい二者択一(つまり、残りの一方は「切り捨て」られる)に迫られるのが現実だ。こういった訓練によってこそ、危機に直面した時に、「なんとかその状況を克服しよう」という意志が湧いてくる。今年、日本で封切られた映画『ディープ・インパクト』の中でも、数ヶ月後に迫り来る彗星の地球への激突による人類滅亡の危機から合衆国市民を守るために、急遽、建設された現代版「ノアの方舟」ともいえる地下都市への入場制限(約2億人の合衆国市民の内、0.5%の100万人のみが選出される)というシーンがあったはずだ。ユダヤ・キリスト教文明には必ず「選び」という思想が背景にある。あの選出方法を思い出していただきたい。まず、国家再建に必要と思われる人材を20万人選び、残りの80万人は50歳以下の市民で社会保障番号名簿からコンピュータで無作為に抽出。日本では、あのような方法は考えられないであろう。個人は利己主義でなんとかしようとするが、政府は多分、「死なばもろとも」、「1億総懺悔」の無策であろう。
ここで、北朝鮮のミサイル威嚇に話を戻したい。真の狙いは何であったのか? マスコミでは、「NYで開催中の米朝交渉を有利にするためのカード」、「ミサイルが欲しい中東の産油国への売り込みデモ」等々と報じられているが、私の「読み」はこうだ。日本の周辺国が、日本が当該国へ(核)軍縮を請求したときには、必ず「日本はアメリカの核(抑止力)の傘の中にいながら…」というであろう。そう、日本列島に、あたかもミトコンドリアが細胞内に共生しているかのごとく、別の遺伝子(政府からの命令)を持った在日米軍がターゲットのひとつなのである。直接、アメリカ本土までミサイルが飛ばなくても、「日本国内の米軍基地が狙える」となれば、アメリカに対するひとつのカードとなりうる。
ずばり、北朝鮮の狙いは青森県の三沢基地(Misawa Air Base)である。これは、私の友人(米国人)で軍事情報に詳しい人とも同意見である。着弾地点は、「三陸沖」ではなく「三沢沖」とするのがプロの診断だ。三沢基地は、かつての冷戦時代、北方領土に展開するソ連軍に対抗して、米空軍の主力部隊が置かれたところである。真っ先に上陸が予想される北海道には(日本の弱い)自衛隊しかいなくて、青森に最強の米軍がいるということは、日米両国政府とも、「いざとなったら北海道は捨てて(北海道を戦場にして)、本州には絶対に敵を入れない」という、「津軽海峡防衛ライン作戦」である。そのための軍事物資輸送用に巨額の資本を投入して青函トンネルを掘ったのだ。北朝鮮は、この米軍基地を射程距離に入れたのだ。つまり、「人質を取った」のだ。
さらに恐ろしいことは、青森県六ヶ所村の「核燃料貯蔵再処理施設」である。実は、日本は実に巧妙な戦略で「原爆500発分のプルトニウムを既に確保していた」のである。原爆などは、造る気にさえなれば誰でも簡単にできることは先のインド・パキスタンの「核武装宣言」で、判ったであろう。問題は、いかにIAEA(国際原子力機関)や米国の目(軍事衛星やスパイ)をごまかして、一定量のプルトニウムを貯蔵するかにかかっている。もうひとつは、核弾頭の「運搬手段」の確保である。本件(日本の核戦略)については、いずれ稿を改めて紹介しよう。