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迫る総選挙 広がる矛盾「イラク」―「東京新聞」特報
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投稿者 天木ファン 日時 2005 年 12 月 11 日 19:51:00: 2nLReFHhGZ7P6
 

迫る総選挙 広がる矛盾「イラク」


 イラクの総選挙が十五日に迫った。「民主化の総仕上げ」という米国の位置づけはむなしく、現実には「出口なき戦争」が続いている。その影響はイラク一国にとどまらない。イラクで訓練されたイスラム武闘派は国境を越え始めた。イラク民衆の惨劇に心を痛める一般の信徒は武闘派との距離を縮めている。「イラク戦争はアルカイダへの贈り物」。英国の研究者はそう言い切った。 (田原拓治)

 先月三十日、ブッシュ米大統領が「イラクでの勝利のための国家戦略」を演説した半日後、イラク中部ラマディでは数百人の武装抵抗勢力が米軍基地を攻撃。検問所まで設け、街を制圧下に置いた。十、十一月の米兵の死者は百八十人。繰り返される米国の「平定」宣言とは裏腹に、抵抗勢力の力は弱まっていない。

 国内では宗派対立があらわになっている。先月中旬には、内務省管轄下にある秘密拷問施設の存在が暴露された。同省はシーア派のイラク・イスラム革命最高評議会(SCIRI)の影響下にあり、施設に拘束されていた百七十三人の大半はスンニ派住民だった。

 「人権侵害はフセイン元大統領時代よりひどい」(アラウィ前首相)。これが「民主化」の現実だ。米国が掲げた大量破壊兵器廃棄と民主化の錦の御旗は破れ、今回の総選挙も「宗派対立を一段とあおるだけ」といった見方がもっぱらだ。

■国境越え始めるスンニ派義勇兵

 むしろ、懸念は三十四カ月続く戦闘が世界に危険の種をばらまいている点にある。抵抗勢力の一部、スンニ派の義勇兵集団は国境を越え始めた。英オックスフォード大調査センターは先月「アフガニスタンの反政府勢力が使った時限装置や爆薬にイラクで訓練されたとみられる高度な技術が見つかった」と報告した。

 サウジアラビアの亡命活動家サアド・ファキーフ氏も四月、「(サウジの)三千人以上の反政府活動家がイラクをシェルターにしており、一段と過激な性格を帯びている」と語った。

 こんな「聖戦の逆輸入」と並び、深刻なのは精神的な共感現象の広がりだ。その好例が、ことし七月のロンドン同時テロ事件だった。

 犯人らはいずれもパキスタン系など英国生まれの移民の若者たち。その一人ムハンマド・サディーク・ハーン容疑者は犯行前に撮ったビデオで「(西側国民である)あなたたちによって民主的に選ばれた政府が全世界の私たち(イスラム教徒)に圧政を続けている。その爆撃や拷問が終わるまで、私たちは闘い続ける」と宣言していた。同容疑者がイラク戦争に触発されたことは想像に難くない。

 英国には国際組織「イスラム解放党」系などアラブ諸国で弾圧を受けた著名なイスラム「過激派」の亡命者たちがいる。四十から五十代のそうした旧世代は戦略を重んじてきた。一部は政府の人権フォーラム委員を務めるなど英国内では穏健にすごし、内外の同胞たちには教義を柱に信徒としての「覚醒(かくせい)」をうながす宣伝活動を続けてきた。

 しかし、事件を起こした移民系の若者たちは「二級市民」扱いへの不満を土台に旧世代の説教ではなく、イラクの現実によって過激主義に目覚めた。彼らは戦略とは縁遠く、心情的に暴力へと突き進んだ。

 イラク戦争がイスラム世界に与えた地殻変動について、エジプトの研究者ファワズ・ガーゲス氏は近著「ザ・ファー・エネミー(遠い敵)」で「世界のイスラム教徒を区分していた境界線がイラク戦争によって崩された」と指摘する。

 同氏はイスラム教徒を(1)一般の信徒(2)日常生活では戒律に敬虔(けいけん)だが、非暴力的な信徒(3)自国政府を背教者集団(近い敵)とみて、反政府活動に乗り出す聖戦主義者(エジプトのジハード団など)(4)欧米が引いた国境を無視し、米国とその同盟者(遠い敵)を主敵とする聖戦集団(アルカイダ系)の四つに区分する。

■米軍撤退後『数百の集団 中東全域に』

 急進性を基準に区分した形だが、ガーゲス氏は最後のアルカイダ系について「イスラム世界の中で孤立させることが最も有効な対処法なのに、米国の対テロ戦争はその逆を突き進んでいる」と警鐘を鳴らす。

 実際、体制的なスンニ派最高学府アズハル(エジプト)のタンタウィ総長までもが、聖典に従い「米国のイラク侵略に対する聖戦」をうながした。聖戦集団と一般信徒の隔たりは、イラクでの悲惨をかけ橋に縮まる一方なのが現実だ。

 欧米ではアルカイダについて、左翼組織を念頭にして「中枢と支部」の構成でとらえがちだが、実体は日本の「勝手連」に近い。イスラムでは信徒の忠誠は神に対してのみで、思想に共鳴すればアルカイダを名乗る。

 イラク戦争前、武闘派は世界の同胞に闘いへの「覚醒」を声高に訴えたが、実際には孤立していた。しかし、米国民の66%すら「誤り」(ことし六月の米ABCテレビ調査)とみなすイラク戦争が信徒たちに覚醒をもたらした。オックスフォード大調査センターのポール・ロジャース教授(平和学)は「イラク戦争はアルカイダへの最大の贈り物だ」と皮肉っている。

 最近では十月にインドネシア・バリ島のテロ(二十二人死亡)、ヨルダンの首都アンマンでの三ホテル同時テロ(五十七人死亡)が起きた。インターネットを開けば「聖戦士支援」といったサイトに爆弾製造法が載っている。「目覚めた」若者たちはいまや、イラクやアフガニスタンに渡らずとも武器を調達できる。

 ブッシュ政権は「自由の欠如がイスラム過激主義の台頭を許した」と現在も主張する。でも、これでは自由な英国でのテロは説明できない。現実は米国が主導するイラクやパレスチナでの同胞への不公正や迫害への憤りが、過激な暴力思想へと誘っている。

 一方、三十日の演説でブッシュ大統領は「イラク軍の訓練が進展すれば米国の役割を縮小できる」とも述べた。しかし、それには「あと五年以上かかる」と英国の国際戦略研究所(IISS)は報告している。

 前出のロジャース教授は「イラク戦争はまだ、初期段階で米英両軍は今後、数十年の紛争に引きずり込まれる」と分析。米陸軍が評価する軍事史の専門家、イスラエル・ヘブライ大学のマーチン・クレベルト教授も米誌「フォワード」へ「米軍の撤退には数カ月の時間とかなりの人員の犠牲を伴う。何より数百のミニ・ザルカウィグループ(アルカイダ系集団)が中東全域に拡散するだろう」と厳しい観測を寄せている。

■米国の追随者と理解される日本

 そんな中、小泉政権は八日、自衛隊のイラクへの派遣期間を一年間延長する基本計画の変更を閣議決定した。イスラム世界では、自衛隊は「米軍の同盟軍」で日本は米国の追随者という理解が常識になった。

 「国際社会での責任」を説く小泉首相だが、イスラム世界で高まる米国と同盟国への敵意をどれだけ認識しているのか。イスラム人口は五年後にはキリスト教徒を超える十六億人に達するといわれている。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20051211/mng_____tokuho__000.shtml

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