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2005/12/01の紙面より
http://www.nnn.co.jp/rondan/tisin/051201.html
世界の石油生産がピークに達し、ゆっくりと生産量が減退していくことによって、これまでのように安くて豊富なエネルギー資源が手に入らなくなるという「石油ピーク」論を知ったのはおととしのことである。それ以来、私なりにさまざまなデータや著書を精査し、機会があれば文書や口頭で人々に問題提起を行ってきた。
爆発的な人口増加
過去二百年間に達成されたことがいかに人類にとって先例のないことだったかは、この間の人口増加を見れば分かる。一八〇〇年に約十億人だった地球の人口は、一九〇〇年には十六・五億人、そして現在は約六十五億人にも膨れ上がった。技術の進歩によって寿命が伸び、爆発的な人口増加を可能にしたのは豊富な石油エネルギーによるものであり、しかしそれとほぼ同じペースで地球には温暖化をはじめさまざまな問題も発生した。気候変動がもたらす洪水などで、今後数十年以内に人類の文明は危機にさらされるという予測すらある。
英語圏においてはかなり広く知られている石油ピーク問題だが、日本ではまだインターネットで検索しても関連記事は数少なく、エネルギーの専門家からも少数意見として真剣に受け止められてはいない。しかしここにきて大手ビジネス誌がジョン・グレイ氏の石油ピークに言及した寄稿を掲載するなど、ようやく無視することのできない話題となってきたようである。
エネルギー争奪戦
ジョン・グレイ氏はグローバリズムなどに関する著書もある英国の経済学者だ。
グレイ氏は、エネルギー投資会社の経営者でブッシュ大統領のアドバイザーでもあるマシュー・シモンズ氏が、世界最大の産油国であるサウジアラビアの石油生産がピークを迎えたことを言及していることを例示して、現代はエネルギー争奪戦が国際政治を左右していると述べる。これは今の米国の軍事外交、特に産油地帯中東での行動をみれば納得がいく。
グローバリゼーションを可能にしたのは安くて豊富な石油エネルギーである。自由市場経済は自由化プロセスを先導するという形で始まったグローバリゼーションは先進国だけでなく第三世界も含めて世界中を巻き込んだ。
世界銀行、WTOといった機関はグローバリゼーションがもたらす不安定さを隠そうとしているが、もはやそれが金持ちをより富ませ、貧しい人をより貧困に追いやるシステムだということはあえて私が現状を述べる必要もないだろう。そして、先進国はますますグローバリゼーションと石油依存が強まっていった。先進国に住むわれわれの行動や生活様式、あらゆるものを支えているのが石油である。
しかしその石油は最も楽観的な予測でもあと四十年程度しか残っていない。そしてもっと現実的なことは、世界最大のサウジアラビアの油田がピークを迎えたということは、四十年を待たずにかつての石油ショックとは根本的に異なる「石油減耗」という問題にわれわれは直面しているということだ。
世界第二の石油消費国である中国も増大する石油消費を見込んでサウジアラビアやロシアとの関係強化、またカナダのオイルサンドや石油開発にも触手を伸ばしている。最後の一滴まで石油を手にしたい国々の間で行われるエネルギー争奪戦が国際政治を左右することは疑いの余地はない。
地球は有限自覚を
石油減耗を前に、大量のエネルギーを消費して戦争をするほどばかげたことはない。私が強く言いたいのは、世界のすべての国で戦争の道具の製造を禁止することだ。
兵器だけでなく戦争に関連するビジネスをすべて国家が禁じればよい。それを国民に説得することは難しくないだろうし、知恵ある生き物である人間ならばそれを進んでサポートするはずだ。兵器の製造をやめれば生産者だけでなく戦場となる国にも平和と生活水準の改善がもたらされる。
また日本は先進国の中でも異常に食料自給率が低く、また国内農業生産のあらゆる側面で石油に依存している。グローバル化の終えんはエネルギーや食料を大量に輸入し、工業製品を作り海外に輸出するというこれまでの政策の終わりを意味する。
日本は有機農業を基本とした新しい分散型社会への転換が必要だ。地球が有限であることを自覚して、グローバルから再び江戸時代のような考え方に戻ればよいのだが、何も鎖国をしようというのではないし、その必要もない。過剰な消費、過度の効率化、高速化が必ずしも人間の幸福につながらず、むしろ退行すらもたらしたことに気付けばよい。
冷戦時代にもその前にも地球の危機は幾度となくあった。石油ピークもおそらく同じように対処していくに違いない。そのためにも減耗するエネルギーを戦争に使うのがいかに愚かなことか、知恵ある人間なら分かるはずだ。(アシスト代表取締役)