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秘密収容所に絡め拉致捜査も本格化
ライス長官歴訪控え火種
【ロンドン＝稲田信司】
米中央情報局(ＣＩＡ）が東欧などにテロ容疑者の秘密収容所を設置し、拷問を容認していたとの疑惑をめぐり、欧州連合（ＥＵ）の国々で真相究明を求める声が高まっている。ドイツとイタリアでは、ＣＩＡ工作員による拉致事件の捜査が本格化しており、収容所疑惑との関係が指摘され始めた。週明け５日から予定されるライス米国務長官の欧州歴訪を前に新たな米欧間の論争の火種になりつつある。
収容所疑惑についてはＥＵのフラティニ副委員長が先月２８日、ＥＵとして問題解明に取り組む姿勢を示した。地中海のマジョルカ島などに着陸した記録が残るＣＩＡ機の捜査に乗り出したスペインでは、ＣＩＡ機が管制塔と無線交信で「ジェイル（刑務所）作戦」と説明していたことが報道されるなど、疑惑は深まっている。
さらに、収容所疑惑との関連があると目されているのが、イタリアで起きた拉致事件だ。
０３年２月、エジプト国籍のイスラム活動家がミラノの路上で拉致された。伊司法当局も監視していた人物だったが、米国当局からの連絡がないまま、男性はアビアノ基地からドイツの米軍基地経由でカイロに移送されたと見られる。伊司法当局は今年１月中旬までに、ＣＩＡ工作員とされる米国人計２２人を拉致罪で起訴。、身柄の引渡しを求めている。
ドイツ司法当局は別の拉致事件の捜査にも着手している。レバノン系ドイツ人が０３年１２月、観光で訪れたマケドニアで国際テロ組織アルカイダのメンバ―だと疑われ、２３日間拘束された。男性はＣＩＡによってアフガニスタンに移送されたとしており、その証言の裏付けを急いでいる。
こうした動きに押される形で、ＥＵ議長国の英国のストロ―外相は１１月末、ライス米国務長官に書簡を送り、東欧の収容所疑惑などに関する回答を求めた。
欧州での人権保護政策を推進する欧州評議会（本部・仏ストラスブ―ル）の議員会議も１１月下旬、「たとえ『テロとの戦い』のためでも、容疑者を非合法で、非人間的な手段で拘束、移送、収容することを認めるわけにはいかない」と、疑惑究明を求める意見書をまとめた。
同議員会議は、ポ―ランド北東部の軍訓練センタ―近くの空港とル―マニア南部の空軍基地などに秘密収容所があったとの情報をもとに衛星写真の画像を解析し、加盟国政府や米政府に圧力をかける構えをみせている。
米政権は、欧州側の要請に何らかの回答をする意向だ。ただ、ライス長官は先月末、「テロとの戦いの中で満たさなければならない要請がある」と米メディアに語っており、対テロ戦での欧米強調の必要性を指摘することで、欧州側の追及をかわすのではないかと見られている。
欧州に広がるＣＩＡ収容所疑惑
英国
ＣＩＡ機が０１年以降、約２１０回着陸。野党や人権団体が提訴の動きも。
ドイツ
ＣＩＡの欧州での活動拠点だったとの報道。ＣＩＡ機８５回着陸との情報も。
ポ―ランド
所在地の疑惑国として浮上。政府は存在を否定。
ポルトガル
リスボン近郊などに着陸したＣＩＡ機の調査結果を近く議会報告へ。
スペイン
ＣＩＡ機が０４年１月〜０５年１月、マジョルカ島とカナリア諸島に各１０回着陸。内相が捜査指示。
ル―マニア
疑惑浮上でＥＵ加盟延長論も。元国防相が１１月、ＣＩＡ機着陸の基地に「米特殊部隊のテントがあった」と発言。
コソボ自治州
キュ―バ・グアンタナモ米海軍基地のような収容所があったとの報道。駐留米軍は存在を否定。
（英紙などの報道から作成）
キ―ワ―ド
ＣＩＡ秘密収容所疑惑
米中央情報局が０１年９月の米同時多発テロを受け、国際テロ組織アルカイダ幹部らを取り調べるため、秘密収容所を設置したとされる。１１月２日付のワシントン・ポスト紙は、収容所がアフガニスタンや東欧諸国など計８カ国に置かれていたと報道。国際人権団体「ヒュ―マンライツ・ウォッチ」はＣＩＡ関係の航空機の飛行記録を分析し、給油地でないポ―ランドとル―マニアに秘密収容所があった可能性を指摘。両国政府は疑惑を否定した。
朝日新聞 ２００５ １２ ０４
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。