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社説(2005年11月17日朝刊)
[日米首脳会談]
沖縄を捨て石にするな
基地負担軽減の欺瞞
「過剰な対米配慮」といわなくて、どう表現するというのか。小泉純一郎首相とブッシュ米大統領の日米首脳会談で、在日米軍の抑止力を維持するために一定の基地負担はやむを得ない、との認識で一致した。
首相は在日米軍再編の中間報告に対し「平和と安全の恩恵を受けるためには、しかるべき負担と代価が必要だ」と述べている。
合意した中間報告の中身に大幅な変更がないことを示し、またしても沖縄が日米軍事同盟の“捨て石”にされる可能性が強くなった。発言は「普天間」代替施設は名護市辺野古のキャンプ・シュワブ沿岸部への移設案以外検討しない、と言っているのに等しい。
稲嶺恵一知事が「絶対に容認できない」としているのを、国の力で強引に建設しようとすれば、県民の反発は火を見るより明らかだ。
県民の要求は、普天間飛行場の即時閉鎖・返還と危険性の排除、基地負担の軽減である。それは米軍がいう「抑止力の維持」「機能強化」とは明らかに異なる。
米軍施設を再編統合、自衛隊に管理権を与えて日米で共用する構想も県民感情を全く無視している。これこそ政府が県民に約束した負担軽減策が欺瞞だったことを如実に示していよう。
日米の良好な関係は確かに必要だ。それについて異論はない。緊密な関係は、政治だけでなく経済問題にもいい影響を与えると思われるからだ。
私たちが問題にしているのは、日米同盟強化の機軸となる米軍基地を国土の0・6%しかない沖縄になぜ75%、四分の三も押し付け、負担を強いるのか―ということだ。
自民党が打ち出した憲法改正草案は、自衛隊を「軍」と明記している。これは米軍との集団的自衛権行使に道を開くものだ。それによって在沖米軍基地を日米共同の前線基地にし、補給・訓練基地として恒久化する動きは絶対に容認するわけにはいかない。
首相はまた「日米関係が緊密であればあるほど日中、日韓関係も良好になる」と話した。だが靖国神社参拝などで近隣諸国との関係を危ういものにしながら、日米同盟強化がアジア諸国との関係改善につながるという発想には危うさを覚える。
札束で頬をたたくな
大城常夫琉大教授は沖縄タイムス紙上で「県政、県民の問題は、日米政府に対する交渉力の力不足である。力の源泉は、県民世論の政治意思の結集以外にない」と述べている。
一九九五年に開かれた「10・21県民総決起大会」で、私たちは基地あるがゆえの人権侵害と危険との決別、日米地位協定の見直しを求めた。
同時に訴えてきた基地の整理・縮小、稲嶺知事が強調する「目に見える形での基地負担の軽減」は今日に至ってもうやむやにされ、今回の日米合意で反故にされたと言わざるを得ない。
政府はすでに打開策として振興策を打ち出す構えを見せている。「アメ」による介入策である。
私たちはいま一度「金で心は買えない」ことを、毅然とした姿勢で政府に突きつける必要がある。
経済的支援は、沖縄が追求し続けている経済の「自立」と「自律」に不可欠なのは言うまでもない。だが「基地の引き受け」を財政支援とリンクさせる手法は、平和で豊かな島を築こうと願う県民の心を踏みにじる。
札束で頬をたたく手法は県民を愚弄するやり方と言うしかない。
新たな基地は認めない
普天間飛行場の移設について県民の72%はキャンプ・シュワブ沿岸部案に反対し、「84%がハワイやグアムなど米国への移設」を望んでいる。
県民はまた、橋本龍太郎元首相が九六年の日米特別行動委員会(SACO)最終報告を伝える際、基地問題について「地元の頭越しにはしない」と述べたことも忘れてはいない。
見過ごせないのは、元首相の発言と県民との約束を捨て去る手法が県民に対する背信行為だということだ。
首脳会談でうたった同盟強化は、沖縄にとって基地被害がさらに広がる恐れを浮き彫りにしている。
私たちはいま一度立ち止まり、沖縄の現実を直視して、将来を見据えた平和な沖縄県づくりをじっくりと検討すべきではないか。
新たな基地は造らせず、北部への基地機能の統合も許してはならない。そのためにも、県民一人一人の意思と行動力が試されていることを自覚したい。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20051117.html#no_1