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「しんぶん赤旗」の「学問・文化」欄にジャーナリスト・綿井健陽さんの、イラク派遣自衛隊の現状についての報告が掲載されています。報告によると、駐留自衛隊員のほとんどが駐留地から出ることもなく無為に過ごし、活動もサマワの住民が目にするようなものもほとんどなく、綿井さんが駐留地を取材で訪れると、受付の隊員が「いまサマワの街はどうなっているのか」と聞く始末で、こうした無用な自衛隊の駐留に敵意を持つ人が出てきています。
綿井健陽さんのプロフィール
わたい たけはる・ジャーナリスト=1971年生まれ。
アジアプレス所属。ドキュメンタリー映画「リトルバーズ イラク戦火の家族たち」、著書『リトルバーズ 戦火のバグダッドから』で日本ジャーナリスト会議大賞受賞。
ホームページ【綿井 健陽 Web Journal】http://www1.odn.ne.jp/watai/index.htm
「しんぶん赤旗」掲載のイラクレポート・「ジャーナリスト綿井健陽さんにきく」(10/20)は次のとおり。
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【イラクに自衛隊はいらない】
民間の活動を奪う軍隊
ジャーナリストの綿井健陽さんは、この七月、イラクのサマワを取材で訪れました。ドキュメンタリー映画「リトルバーズイラク戦火の家族たち」を製作して以来、一年ぶりのことです。綿井さんは、サマワの現実を踏まえて、自衛隊の派遣は必要ないと言います。
(ここから記事の本文)
イラクに駐留する自衛隊の派遣期限は十二月十四日です。政府はその派遣の延長を狙っていますが、日本の自衛隊がサマワに駐留する理由と意義はもはやありません。
七月下旬の一週間、イラクのサマワを訪れました。前回イラクを訪ねたのは、主権移譲のあった二〇〇四年七〜八月。ちょうど一年ぶりのことです。
● 不満が自衛隊に
サマワの市民は、「電気」と「水」と「仕事」、この三つを、自衛隊の派遣前から訴えてきています。
電気の問題は深刻です。お金のある人は、商店街でゼネレーター(発電機)を買ってしのぎますが、ほとんど解消されていません。以前よりもむしろひどくなっている。
水については、自衛隊はいままで郊外で給水しているだけでそれ以上のことはしていません。上下水道が整備されているわけではないし、電気が止まると水も止まる所が多くて、ポンプで水をくみ上げたりしても、団地などでは、上まで届かなかったりする。サマワは干ばつがおきているわけではない。単に水を配るシステムが整備されていないのです。
仕事については、自衛隊は、今でも一日五百人から千人ぐらいを雇用し、道路や建物補修をやっていますが、それもサマワの人たちから見ると一部に過ぎない。失業の問題がなかなか解消されなくて、その不満やいろんな不満が自衛隊のほうに向けられている。州政府に要求をしてきたグループが、自衛隊にもそういう要求を向けはじめている。
● 知られない実態
自衛隊が駐留しているのは誰でも知っていますが、宿営地の外での活動の絶対的な回数、場所、内容があまりに少なく、活動の実態そのものをサマワの人たちが実感できる機会が少ない。日本でも各地で「自衛隊の人たちはいまサマワで何をやっているのか」とよく尋ねられますが、サマワに行っても同じ質問がサマワ市民から出ます。自衛隊の宿営地に行くと、サマワの自衛隊のゲートにいる受付の隊員が、今度は「いまサマワの街はどうなっているのか」ときいてきました。
サマワの自衛隊員は、六百人ぐらいいますけど、外に出て活動する隊員は、本当に少ない。正確な数は絶対に教えてくれませんが、六百人のうちの十分の一もいないでしょう。道路補修、建物補修の指導・監督で、三日に一回の割合、八月〜九月のデータでみると、外に出て活動するのは、どちらも一カ月のうち十二日間ぐらい。やるのは、道路・建物補修の指導・監督と、病院での超音波診療の指導などで、直接の医療行為はしない。だから、どうしてもサマワに住んでいる人たちが、自衛隊の活動を直接見る機会というのは、本当に少ない。
実は、去年の七月までは、サマワで自衛隊の駐留に反対する人には、私自身は会ったことがありませんでした。地元紙などがよく世論調査をやりますが、それによると、七割から八割ぐらいの人は、去年まで駐留そのものには賛成でした。その数字はある種信用できる数字だと思います。
しかし、「今の状態のままの駐留なら、自衛隊は必塞ない」という人が増えているでしよう。
● 敵意をもつ人たちも
サマワに入った七月二十四日に、「日本友好協会」の元会長が経営する宝石店が爆破されました。昨年七月に彼を訪ねたとき、私に“自衛隊の活動に満足している”と語り、彼の店の前には、“日本の友人の皆様にイラク人を代表し親愛のメッセージを送ります”と、日本語とアラビア語で書かれた大きな横断幕が掲げられていました。
自衛隊との友好を象徴する店が狙われたのは、偶然のこととは思えません。
自衛隊の派遣から一年半たって、自分たちが望む活動と、自衛隊の活動との開きがどんどん大きくなって、それが徐々に不満としてたまっている。自衛隊に敵意を持つ人さえいます。
● 医療支援に効果
日本の支援ということで効果的に力を発揮できるのは、医療支援です。医薬品を、中央の保健省から各病院に届けるシステムがなかなか機能していませんから、病院の医薬品や抗がん剤、抗生物質がなかなか手に入らない。それをNGOが何とか今まで供給してきましたが、イラク南部バスラでは、外国のNGOはゼロ。唯一、日本のNGO「JIM−NET」が国外から薬を供給しています。
基本的にいまのイラクのなかで軍隊組織が何かできることというのは、無いにひとしい。自衛隊が、電気、水、仕事の部分でこれから活動を拡大させるというのは不可能です。発電所はODA(政府開発援助)で作ろうとしていますし、道路補修もイラク人だけでもやってますし、自衛隊が活動を拡大させることは、難しい。宿営地外での活動を拡大させたら拡大させたで、それだけ狙われる要素も高まるだけです。
自衛隊という軍隊組織がいる周りで民間の活動を拡大することは不可能です。サマワで今でもフランスのNGOが活動していますが、あそこに、もしフランス軍がいたらNGOは活動できないでしょう。軍隊の「周辺」も攻撃の対象になるからです。まず自衛隊を撤退させてからでないと民間の活動、NGOのイラクでの活動はそもそも拡大させるのは無理なのです。
映画「リトルバーズ」を各地で上映していますが、これまでのイラク戦争への日本のかかわり方が、いかにイラクの人々の信頼を損ねているか、考える一助にしていただければ幸いです。(聞き手・児玉由紀恵)
◇映画「リトルバーズ イラク戦火の家族たち」上映の問い合わせは、 03(5389)6605