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世界の戦場を駆け回る綿井健陽さんが、Blog「綿井健陽のチクチクPRESS」でサマワの自衛隊について、次のように述べています。
綿井健陽のチクチクPRESS
【サマワの人たちに今後の自衛隊をどう説明すべきか?】
http://blog.so-net.ne.jp/watai/2005-10-03
映画上映に関わる催しで訪れたある街で、50〜60人程度集まる「上映前夜祭イベント」があったので、そこの来場者にアンケートを取ってみた。主に映画上映に関わる実行委員会のメンバーたちを中心に、ほかにも会社員から大学生、主婦の方まで幅広くいたと思う。
僕がたまに原稿を書いたりする雑誌を、どれくらいの人が読んでいるのかということを聞いてみた。
「週刊金曜日」を毎週読んでいる人→3、4人ぐらい
「DAYS JAPAN」を毎月読んでいる人→5、6人ぐらい
「世界」を毎月読んでいる人→1人
「世界」の場合は毎月ではなく、「たまに読む」という女性だった。「金曜日」よりも、「DAYS」の方が多いというのは意外。それを「DAYS」編集部の人たちに話したら、やはり同じく驚いて、喜んでいた。
ならば、先月僕が「世界」10月号に書いた原稿「サマワ現地報告」を読んでいる人は全国で相当少ないということだな。http://www.iwanami.co.jp/sekai/2005/10/directory.html 来週あたりには来月(11月)号が書店に並ぶから、今週中であればまだ本屋にあるはずなので、読んでください。
さて、先週あたりからようやく新聞各紙が、サマワ自衛隊派遣に関わる記事を掲載している。
http://www2.asahi.com/special/iraq/TKY200509290320.html
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20050929it02.htm
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051003-00000006-san-pol
それらによると、どうやらサマワの自衛隊は「派遣延長、来年前半で撤収」という動きで進められているようだ。こうして何の論議・議論・検証もされずに「自然に」自衛隊の動きが決められていく。
議論を呼び起こしたくても、メディアの側にその情報・材料がないのが致命的だ。僕らのようなフリーランスがたまにサマワを取材したぐらいでは、世の中に流通する情報の「絶対量」として絶対に足りない。防衛庁のHPだけを見ていると、自衛隊がイラクで「大活躍」して、地元の人たちからも「評価」されているように見えるものなあ。http://www.jda.go.jp/jgsdf/iraq/iraq_index.html
僕が7月に取材したサマワでは、実際のところ、自衛隊が現地で置かれている立場というのは微妙なものだ。東京新聞(9月7日付掲載)から受けたインタビューで僕は最後にこう答えた。「このまま駐留を続けても『何をしてるんだ』と言われるし、引き揚げたら引き揚げたで「何もせずに帰っていった自衛隊』と言われるでしょう。『去るも地獄、残るも地獄』かもしれません」
昨年12月の時点でも、僕のHPに以下のような記事を書いた。
http://www1.odn.ne.jp/watai/041216.htm
去年までと、今年の7月では、サマワの人たちの自衛隊への捉え方もかなり変化があり、そうした変化を現場の自衛隊はもちろん、防衛庁や首相官邸サイドがどれだけちゃんと認識しているのかが、非常に心配だ。何せこれまで「サマワの子どもたちが自衛隊員に手を振ってくれること」が、自衛隊への「評価基準」なのだから、これは非常に恐ろしい「シビリアン・コントロール」だ。http://www.jda.go.jp/j/kisha/2004/12/07.pdf
一言で言うと、いまのサマワだけでなく、イラクに外国の「軍隊組織」が駐留し続けて、何らかの活動を行うのはもはや「限界」だと思う。最初の派遣そのものから無理があったが、その無理が積み重なって今日に至っている。で、そろそろサマワの人たちにもちゃんと「自衛隊がやること」ではなくて、「自衛隊ができないこと」の説明をしなければならないと思うのですが。たとえば…
「サマワの皆さん、我々自衛隊は今回は駐留を延長する方向ですが、来年のどこかで撤退する予定です。さらに言いますと、現時点では皆さんがずっと期待してきた『日本の企業』がここに来る予定はありません。いまのイラクの治安情勢を見れば恐らく無理だと思います。電気の発電所は07年完成予定で新しいものを作る予定ですが、これも工事をちゃんと進められるかどうか未定です。我々自衛隊員が直接建設することはできません。そもそもこの自衛隊派遣は日本の憲法に照らし合わせて無理がありました。また、これ以上英国・豪軍も含め、『軍隊組織』がサマワに駐留すると余計に皆さんの町の治安を乱す恐れがあります。皆さんの期待のすべてに応えることができなくて申し訳ありませんが、でもこれからも何とか日本はサマワやイラクの皆さんにできることをします。実際、いくつかの日本のNGOはいまもイラクに医療支援を続けています。ですから、今後の支援の中心は、まずイラクの周辺国を拠点にした民間レベル、NGOの人たちの力によるものになります。非軍事に限った日本らしい支援を続けるつもりです。何とかご理解下さい」
早めにこうした説明をしとかないと、日本での「自衛隊撤収計画」報道がサマワにも当然届いて、また変な噂やデマが街に広まる恐れがある。
それから、サマワでの自衛隊の活動に対して、「自衛隊は相変わらず引きこもっているんですか?」
と言う人が僕の周りでも結構いるが、その言い方は事実と異なる。「引きこもり」という言葉をサマワの自衛隊に対して使うべきではない。
ただし、僕は今年7月に取材したときにはこういう表現は原稿などで使った。「実質的に宿営地以外での活動はほとんどしていない」「宿営地外にはたまに一部の隊員が指導・監督目的で『外出』はしますけど、それが自衛隊の『人道復興支援活動』とは言いがたい」「実際数でいちばん多い『外出』は、宿営地から車で15分ほどの距離にある英国・豪軍キャンプに行くことです」
自衛隊から送られる活動報告を集計してみると、今年8月は一ヶ月間で「建物・道路補修の指導・監督で12日」外に出た。だから3日に一回ぐらいのペースで宿営地外には出ている。先月9月も同じ12日だった。指導・監督というのは「補修作業がちゃんと行われているのかの確認をする」ということで、それを一日にかろうじて一、二箇所回るだけだ(9月には一度だけ、一日五箇所を回った日がある)。ほかに同じくたまに「医療指導」というのもしているが、それらをするために600人もの隊員が宿営地を維持して駐留するという現状。
給水ももう終了したわけだし、サマワで、もはや自衛隊でなければ出来ない活動はないに等しい。だんだんとサマワに「自衛隊が駐留すること」が手段ではなく、そこにいることが目的となってきた。
いずれにせよ、「引き際」「去り方」「地元への説明」をしくじると、今後日本がイラクに関わる本当の「人道復興支援」さえも難しい状況に追い込まれ、取り返しがつかなくなる。それは自衛隊隊員の問題ではなく、彼らを送り込む政治の側、シビリアンの判断・決断・説明の問題だ。
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綿井健陽 WATAI Takeharu
Homepage [綿井健陽 Web Journal]
http://www1.odn.ne.jp/watai
映画「Little Birds〜イラク戦火の家族たち」
公式HP http://www.littlebirds.net/
全国ロードショー上映中
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