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「しんぶん赤旗」11月11日(金)3面
【どうみる仏暴動】
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フランスで全土に広がった暴動。政府は八日、これを抑えこむために戦時にも匹敵する非常事態法の適用を決定しました。住民の間でも暴カ反対デモが行われ、夜の警護団も組織されました。同国が負った傷はあまりにも深いものがあります。(パリ=浅田信幸)
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暴動は先月二十七日、パリ郊外で警宮に追われたとされる青年二人が変電所で感電死したことをきっかけに発生。八日までに三百都市に広がり、燃やされた車は六千台、拘束された若者は全国で千五百五十人にのぼりました。そのほとんどが十五歳から二十五歳までの青少年たち。すでに実刑判決(投獄、施設への収監など)の言い渡しを受けた二百七十三人のうち、五十六人が十八歳未満の未成年です。
■小騒乱は日常
「彼らの圧倒的多数はフランス生まれで、フランス国籍を持っている。彼らは生きている社会が不正で差別的なものだとして怒りを募らせている」「フランスに生まれた世代が初めて、外地から来た親たちよりも社会的疎外を感じ、親たち以上に社会から異邦人だと見られる振る舞いをするようになった」―著名な社会学者であるアラン・デュアメル氏は仏紙リベラシオンでこう述べています。
「荒廃する郊外」育ちであるだけで差別を受け、貧困の中で学業についていけず退学し、非行に走る若者たち―。絶望にかられた彼らが、暴動を機にうっ積した不満を社会に向けて爆発させたというのが一致した見方です。
今回の暴動は突発的に生じたとの印象を受けますが、実は小規模な騒乱は日常茶飯事に生じています。
内務省の資料によると、暴動が始まる以前に、今年の初めから全国で二万八千台の車が燃やされています。一日平均百台の勘定です。投石などによるパトカーの損傷も九千台、一日当たり三十台にのぼります。
■市長を先頭に
当初、荒れ狂う暴力に息をひそめていた住民たちも「暴カ反対」の声をあげ始め、独自に公共施設の警護を買って出る地域も生まれています。
暴動発生の地となったパリ近郊セーヌサンドニ県では五日にオルニー市で、七日にはクルヌーブ市で、「ストップ暴力」「暴カに反対し、尊重と尊厳のために」などの横断幕などを掲げて、市長を先頭に、イスラム系の若者たちも加わり、数百人から千人規模のデモがおこなわれました。
セーヌサンドニ県に隣接するパルドマルヌ県のビルジュイフ市でも八日に同様のデモがおこなわれました。
パリ南方エソンヌ県グリニ市では共産党員市長の呼びかけで「公共施設を守る」住民のポランティア組織がつくられ、学校、保育所、市の体育館などを夜通し交代で警護している様子がルモンド紙に大きく報じられました。
ある幼稚園に駆けつけた女性は「私たちは辛抱強くなるわよ。必要なだけ続けるつもり。子どもが第一の犠牲者になるんだもの、園をまもらなければ」と述べ、園長は「明日以後も、交代してくれる人がいっぱいいます」と語っています。
暴動は、歴史的遺産に満ち文化の香り高いフランスというイメージからは程遠いフランス社会の現実の一面を全世界に見せつけました。暴動で傷つけられたというより、社会が抱えていた傷が化のうし、うみを出したのが今回の暴動だといえます。
傷跡を残さない治療法を見いだせるか―世界中が注目しています。
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【欧州 飛び火に警戒】
フランスの「移民社会の反乱」とも称される暴動は、欧州全体で千五百万人とも二千万人とも推定されるイスラム系移民を抱えた欧州諸国にも衝撃を与えています。
英フィナンシャル・タイムズ欧州版は社説で、フランスの「移民の社会への統合」が欧州諸国からモデルとみられていたが、「移民の若者と警察との衝突は、理想的なモデルであるという幻想を打ち砕いた」と指摘。
スペインの保守系紙ABCは、フランスは「非宗教的で平等主義的な文化の価値に入り込めない人々に貧困と孤立を押しつけている」と詰問調の書き方です。
ドイツのフランクフルター・アルゲマイネ紙は、同国に在留する十五歳以下のトルコ人の四人に一人しかドイツ語を使いこなせない事実を指摘し、「いつの日か外国人の集中する地区でフランスと同じことが起こるだろう」と暗い予想を述べています。
イタリアの中道左派連合の指導者プローディ氏は「イタリアは欧州で最悪の郊外を抱えている」とし、「パリとは違うと考えるべきではない」と語っています。
(パリ=浅田信幸)