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アンマン同時テロ:世界の親米国が標的に
ヨルダンの首都アンマンで9日起きた同時自爆テロは、国際テロ組織アルカイダが活動範囲を広げ、アラブや世界の親米国が標的となっていることを改めて見せつけた。ロンドンやバリ島の事件が示すように、テロの脅威は世界に広がっているが、米ブッシュ政権は、拡大を続けるテロへの有効な対策を打ち出せていない。
◇アルカイダ、イラクから周辺国に
「なぜこれほど市民が殺されたのか。狙いが理解できない。やつらは人間じゃない。サタン(悪魔)だ」
アンマンで10日開かれたテロ非難の市民集会への参加者、ジェリ・サードさん(37)は、怒りに声を震わせた。
犯行声明を出した「イラクの聖戦アルカイダ組織」は、ヨルダン出身の過激派、ザルカウィ容疑者が率いる。同組織はこれまで、主にイラク国内で自爆テロや外国人の誘拐や殺害を繰り返してきた。これまで自爆テロを免れてきたヨルダンの警戒網を、初めて破ったのがザルカウィ一派らしいという驚きが、多数の市民の犠牲に対する悼みを増幅させている。
集会に参加した約400人は、被害を受けたホテル前の幹線道路を練り歩き、こぶしを突き上げた。アブドラ国王の写真やヨルダン国旗を掲げながら、「我々の血を国王にささげる」「ザルカウィのクソ野郎」と激しく連呼した。
「イラクの聖戦アルカイダ組織」による犯行声明は、その活動範囲がイラクから周辺へと拡大していることを示した。イラクでは最近、西部のシリア国境で米軍が徹底した過激派掃討作戦を続けている。こうした強硬姿勢に反発を強めた過激派が、親米傾向の強いヨルダンを攻撃することで、親米連合をたたく狙いがあった可能性がある。
イラク戦争後、アルカイダは「聖戦」の最前線をアフガニスタンからイラクに移したとされる。しかし、アラブ圏だけでも、03年から今年にかけて、モロッコのカサブランカ、サウジアラビアのリヤド、エジプトのシャルムエルシェイクなどでアルカイダ系の犯行とみられるテロが発生した。
かつてアラブ圏では、イスラム原理主義の動きを独裁指導者が強権で弾圧してきた。しかし、米国が中東諸国に民主化を求めて圧力を強めているほか、中東指導者の若返りも進み、各国政府は以前のような弾圧的な取り締まりは困難だ。アラブ諸国の多くは、若年人口の急増が失業率を押し上げ社会問題化している。過激派がこうした若者の不満を吸収する形でテロを拡大させれば中東の混乱はますます深まることになる。【アンマン樋口直樹】
◇テロ拡大に対処する有効な方法はなく、手詰まり感
ブッシュ政権は、アラブ圏屈指の親米国ヨルダンがテロの標的となったことに大きな衝撃を受けている。しかも、イラク復興に携わる米軍や企業関係者が頻繁に使うホテルが狙われており、アルカイダに関係するザルカウィ容疑者が中東の米権益を直接狙い始めたと見て警戒を強めている。だが、同盟国や親米国へのテロ拡大に対処する有効な方法はなく、手詰まり感が強い。
ブッシュ大統領は9日「罪のないヨルダン人に対する卑劣なテロ」と述べ、捜査などでヨルダン当局を最大限支援する方針を表明。ライス国務長官も「(テロ組織が)何の罪悪感もなく罪なき人々の命を奪っていることを再び示した」と強く非難する一方、「我々は極めて困難な戦いを行っている」と、対テロ戦の難しさを率直に認めた。
ブッシュ政権はイラクを「テロとの戦争」の主戦場と位置づけ、国民の支持確保に躍起だ。しかし、イラク戦争開戦以来の米兵の死者が2000人を突破。米中央情報局(CIA)工作員身元漏えい事件でイラク大量破壊兵器の情報操作が再び注目を浴び、大統領の支持率は8日発表のピュー・リサーチセンター調査で36%。就任後の最低記録を更新した。
一方で、今回の事件を含め、ロンドンやインドネシア・バリ島など同盟国、友好国でテロが多発していることで、「世界規模の対テロ戦争」の成果が目に見える形で上がっていない現実が明白となってきている。ブッシュ政権は長期的なテロ対策の一環として中東地域をはじめとする諸国の民主化を打ち出す一方、現存するテロ勢力に対しては「断固撃滅」の姿勢を貫いているが、今後、この戦略への疑念が強まる事態もありうる。【ワシントン吉田弘之】
■アルカイダによるとみられる世界の主なテロ事件■
01年9月 米同時多発テロ。約3000人が死亡。
02年10月 インドネシアのバリ島で爆弾テロ。死者200人以上。
11月 ケニアのモンバサで同時テロ。死者16人。
03年5月 サウジアラビア・リヤドで連続自爆テロ。死者34人。
5月 モロッコのカサブランカで連続爆弾テロ。死者45人。
8月 ジャカルタのホテルで爆弾テロ。死者13人。
8月 バグダッドの国連事務所で自爆テロ。20人以上死亡。
11月 トルコのイスタンブールで爆破テロ。死者50人以上。
04年3月 マドリードで列車同時爆破テロ。死者約200人。
5月 サウジアラビアの外国人居住施設など襲撃。死者22人。
9月 ジャカルタ・豪大使館前爆弾テロ。死者9人。
10月 エジプトの保養地タバで爆破テロ。死者30人以上。
12月 イラクのナジャフなどで爆弾テロ。死者62人以上。
05年2月 イラクのヒッラで自爆テロ。死者125人以上。
7月 ロンドンで2回の同時爆破テロ。50人以上死亡。
7月 エジプトの保養地シャルムエルシェイクで爆破テロ。80人以上死亡。
10月 バリ島で爆破テロ。死者20人以上。
11月 アンマンのホテルで爆破テロ。
毎日新聞 2005年11月11日 0時50分 (最終更新時間 11月11日 1時33分)