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「フランスが燃えている」
先月末に始まった、フランスの移民(というよりも、移民2世、3世と思われる)の暴動は、今月に入ってフランス全土に波及、マスコミの中には「第二次世界大戦以来の出来事(注)」といった伝え方をするものもある。元はと言えば、変電施設で起きたアラブ系とアフリカ系の2人の少年の感電死事件だが、警察と政府の人種差別を感じさせる対応に、これまでに移民社会で溜まりに溜まっていた不満が一挙に噴出した形だ。また、万聖節休暇(10月24日から11月3日まで)も微妙に騒動の拡大に影響した。若者たちが集まりやすい状況を作ったし、その一方、役人たちは休暇明けまで出勤して来なかったという。そして、それは国外にも波及をして、ついに隣国ベルギーやドイツでも6日から7日にかけて、同様の暴動が報告されている。
フランスはご存知のように、かつてアラブやアフリカなど多くの地域を植民統治していた。戦後、それらの地域で民族独立運動が高まり、それに抗し切れずに、独立を認めた。ただ、それらの地域が独立した後も、フランスは、一部の国では支配層を巧みに導き、政治的な影響力や経済的な搾取構造を残すことに成功した。
そんな懐柔策には、移民の大量受け入れも含まれていた。フランスに行った方ならお分かりになろうが、肌の色の違う住民たちが予想以上に多い。統計上は、その数は国民全体(人口約6000万)の一割弱だが、実態としては、出生率の高いアラブ系住民だけで600万人以上いると言われる。都会にいると、有色人種の割合は2割以上に感じられる。
フランスは、イギリスやドイツ同様、移民を受け入れるといっても特別に優遇したわけではない。いや、むしろ冷遇したといってもいいだろう。移民受け入れは、人道的なものではなく、自らの「優雅な暮らし」の維持に必要な労働力として必要であったのだ。
「アメリカン・ドリーム」ならぬ「フレンチ・ドリーム」を求め心躍らせてフランスに来た移民は、結局はフランス人がやりたがらない仕事の“穴埋め”をする存在でしかなかった。当然のことながら白人に比べて生活程度は低く、移民2世、3世の高等教育を受ける機会も白人社会から比べると格段に少ない。そうなれば、若者たちの就職の機会も巡って来ない。移民社会全体の失業率は2割5分に達するとの統計もある。「貧困の連鎖」だ。
同様のことは、「同時地下鉄テロ」が起きたイギリスの他、ドイツやベルギーなどでも見られ、移民社会の在り方は大きな論議を呼んでいる。イギリスでは「白人社会の危機」と焦ったネオ・ナチなどの超右派の人種主義者たちが移民排斥の動きを見せる場面もある。
この問題は、我々日本人にとっても他人事ではない。ここ10年、日本でも外国籍住民は急増している。彼らは社会の底辺で「3K職場」の重要な担い手となり、我々日本人には都合のいい存在だ。だから、政府は、たとえ不法滞在をしていてもその実態に目をつぶる。そういった外国人労働者は使い捨てが基本で、雇用主は彼らの福利厚生に金をかけることはない。政府はそれも十二分に承知しているはずだ。
来日する前は、「たとえ月10万でも稼げれば」と“夢”を見ていた外国人労働者も、日本人労働者の給与や他の労働条件を聞き、その違いの大きさにびっくり、やがて不満を持つようになる。それが、子供たちの世代になれば、なおさら大きいものとなる。一方、日本人社会でも、子供たちは「3K職場」に多く見かける外国人たちを、「汚い存在」と蔑むようになってきた。それに加えて、世界各地で噴出する爆破事件への恐怖から、アラブ・アフリカ系の労働者を怖がる風潮も出てきている。
今のところ、日本では暴動にまで発展する情況は生まれていないように思えるが、現状が続けば、英仏で起きていることが近い将来起きる可能性がある。深刻な事態を招く前に、今フランスで起きていることを「他山の石」として、この問題に取り組まなければならない。
問題解決の策は2つ考えられる。一つは、外国人労働者の追放だ。でなければ、彼らを社会の一員として受け入れるという選択肢だ。前者は、石原慎太郎氏のような民族・国粋主義者が喜びそうな考え方だが、これだけ日本社会に浸透した労働力を全て排除するのは、大混乱を招くことになるだろう。もちろん、国際社会から袋叩きに遭う事も覚悟しなければならない。
だとすれば、今からでは遅きに失した感がないともいえないが、外国人を我々の「真の仲間」として受け入れる方策を考えるべきだ。方策の一つは、教育だ。日本語などの基本的な教育から高等専門的なものまでを習得する場を与えるのだ。そして、産業界の協力を得て、専門知識や技術を生かせる職場を紹介していくことが望まれる。間違っても、彼らを「3K職場」に閉じ込めてはならない。
そんな金はどこにもないと政府は言うだろう。だが、“悪名高き”政府開発援助(ODA)に使われている年間1兆円規模の支出のホンの一部を捻出し、産業界からカネを募れば、そんなに難しいことではない。かなり大胆な教育ができるはずだ。高等教育を受け、まっとうな仕事を与えられた外国人たちは、やがては日本の貴重な戦力として活躍を見せることになる。また、たとえ、途中で帰国したとしても、日本に対する感情は概して良好になるはずで、その中の一部が将来、国を背負って立つことになった時、彼らにかけた金が「捨て金」でなかったことが分かるはずだ。
このような大胆な考え方は、「純血」を好む大和民族の私たちには抵抗があるかもしれない。しかしながら、長期的視野に立てば、日本社会に「外からの血」を入れることは、間違いなく国全体の活力につながるものだ。それは、「移民の国・アメリカ」が実証している。小泉さん、あなたほどの“アメリカ通”だったらこの話、十分理解できるのでは?
注:「カルチェラタン」を忘れてはいけない。1968年、学生と労働者は「ヴェトナム戦争反対」「大学制度の改革」「人種差別の撤廃」などを訴え、パリの中心街である「カルチェラタン」を占拠して“解放区”として気勢を上げ、警官隊と衝突を繰り返した。現在、マスコミで働く世代には「カルチェラタン」を知らない人たちもいるようだ。
コメント
暴動の実態 (ピンチョス)
2005-11-09 12:02:38
浅井さんのコメントいつも楽しく読ませて頂いております。今回のフランスの都市郊外での暴動について気になった点がありますので投稿したいと思います。
日本のメディアは今回の騒動に関して、「実際に今、どこで、何が起きているのか」、この点についてきちんと事実を掌握しないで外国人排斥運動や大国の利害などのより大きな問題(つまり日本メディアはこれを暴動の原因とみなしている訳です)と絡めて論じている気がします。残念ながら、これではイデオロジックで具体性に欠ける論となってしまいますし、報道の客観性から遠い気がします。
実際、逮捕者が多く出ていますが、多くは未成年です。また事件が起きているのはバンリューとよばれる大都市の外部に広がる地域です。彼らはいわゆる「ミニギャング」的な性格を持っています(もちろん実態は様々ですが)。
私には、未成年の彼らが「社会制度の問題」(たとえば保険制度や就労問題)に抗議する目的で今回の暴動を働いたとは思えません。彼らはむしろフランスの経済利害が生み出した「結果」に過ぎませんし、また彼らが乱暴を働いたのは今回の事件が初めてではありません。むしろ暴力沙汰は恒常的に発生しています。私が住んでいるストラスブールは年末に多数の車が焼き討ちにあうことで既に有名です。
日本のメディアが「疎外された可哀想な移民」というイメージ取り上げるのとは対照的に、このイエローゾーンに住む人々は「無差別に人に危害を加える若者が一定数存在する」という認識を持っており、また悲しいことにそれが現実です。今回の暴動でも地域に住む61歳の男性が自宅前の火事をとめようとしていたところ若者に撲殺されました。
一部のフランスの中学・高校は荒れに荒れています。校舎に侵入してきた若者が銃やナイフで武装していたりといった有様で、教員の死亡例もあります。
今回の暴動はパリから地方へ飛び火していますが、そもそも、小規模の「暴動」は以前から各地域に存在したわけです。
果たしてこの「若者たちの危険なゲーム」の原因はどこにあるのでしょう?彼ら自身、家庭環境(親は完全に不在ですね?)、etc... 諸説あると思いますが、
1.ゲームを面白いと思う
2.実際そのゲームがあるor出来る
限り、程度の大小はあっても同じような問題は繰り返されると思います。これはゲームなのであって、イデオロギーのデリケートな問題を孕んだテロやイスラム教の問題とはまったくつながりが無いのだと私は考えます。むしろ、「スカーフ問題」の本質もここに見え隠れするような気もします。