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天木直人・メディアを創る ( 11/02) 今頃になって「イラク戦争に反対」だと
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投稿者 天木ファン 日時 2005 年 11 月 02 日 12:54:48: 2nLReFHhGZ7P6
 

11月2日―メディアを創る

 今頃になって「イラク戦争に反対」だと

 無理に憲法案を作らせてもイラクが安定する兆しなどまったく見えてこない。米国が押し付けた民主化のシナリオは12月の総選挙で終わりとなる。これでイラク人の手による民主国家ができると米国は言い続けている。そのとおりだ。イラク人が自らの手で国をつくるのであるからもう米国が関与する口実は無くなる。
しかしその後のイラクこそ混乱にまみれたイラクになる。アフガニスタンがそうであるように。それを誰もがわかっているからもう誰もイラクの現状を報じなくなった。自爆攻撃や米軍の掃討作戦が断片的に小さく報じられるだけだ。事態は日を追って深刻になり、無辜の民が虫けらのように連日殺され続けているというのにである。
 そんな中で、イタリアのベルルスコーニ首相が10月31日のテレビインタビューで、「・・・武力介入を避けたほうが良かった・・・イラク戦争前に武力行使に反対したがブッシュ大統領は聞き入れなかった・・・」などと暴露した。これをロイター通信などが報じ、日本の各紙が遅ればせながら小さく報じている。
 何をいまさらの感がするが、誤りを認めないよりもましだ。英国のブレア首相が必死になってブッシュ大統領に武力行使を思いとどまらせようとしたが聞いてもらえなかったことは、ダウニング街レポートなどの内部資料の暴露によって既に世界中に知れ渡っている。今回ベルルスコーニ首相も「自分も反対していた」と白状した事によって、米国に最も協力的な英、イタリアの首脳が、実はあの戦争に反対していたこと、しかしブッシュ大統領を説得できなかったこと、が明らかになったのだ。
 そこでわが小泉首相である。彼は世界の誰よりも強くブッシュ大統領を支持した。「ブッシュ大統領は正しい、ブッシュ大統領を信じている、彼は善意の人だ」と国会答弁で日本国民に、そして世界に叫び続けた。
本当のところはどうだったのか。彼もまた、ブレア首相やベルルスコーニ首相と同じくブッシュ大統領に「武力行使には反対だ」と言ったけれど聞いてもらえなかったのか、それとも世界でただ一人本気になってブッシュ大統領を支持したのか。
野党は国会でこれを追及すべきだ。小泉首相は説明責任を果たすべきだ。もし反対したのに受け入れられなかったらそれを今からでも明らかにすべきだ。もし本気でブッシュ大統領を支持したのであれば、あの戦争の正当性を国民の前で、そして世界の国民に向かって、堂々と明すべきだ。
卑怯な小泉首相は例によって「適切に判断した」とごまかすであろう。そして小泉首相に心優しい国民の大半はそんな小泉首相を許すのだろう。それが今の日本だ。

米国牛輸入再開の動きに思う

 このコラムでもたびたび書いてきたが、米国牛輸入再開に至る迷走ほど日米追従外交を象徴したものはない。報道によれば専門調査会が「日米牛肉リスク差は非常に小さい」とする答申を出したらしい。そしてこれを根拠に日本は年内にも輸入再開を決定するという。
 これは一体どういうことか。よく考えて欲しい。この一年余り米国は輸入再開の圧力をかけるだけでわが専門家が要求する対応策を何一つ取っていない。それどころか専門家の判断基準になる統計などの資料をまったく提出していない。輸入再開の是非を検討する目新しい材料はまったくないままに専門委員会なるものが何度も開かれてきた。そして今回の答申である。
何を議論してきたのか。要するに日本政府が輸入再開の決定をしやすくするアリバイづくりにすべてのエネルギーを注いできたのだ。どのような表現を使って報告書を書けばよいのかという文章作りに終始してきたのだ。専門家であるはずの彼らが政治的文章作りに奔走してきたのだ。
輸入再開を認めてもらう立場にある米国が何もせずに、本来は「安全な牛肉をつくってもってこい」と言うべき立場の日本が、米国の不合理な怒りの前にひざまずき、国民をごまかして「米国牛は安全だ」と思い込ませる方向にその「専門的知見」を利用しようとしてきたのだ。
それはあたかも普天間基地の移転問題とそっくりだ。本来は米軍基地など日本住民には不要であり縮小、撤退させるべきであるのに、米国に恫喝されて、どこの場所に移転させれば米国が了承するのか、住民の反対が一番少なくて住むのかという本末転倒な事に、防衛官僚と外務官僚が意地を張り合って検討してきた。そして米国の了承を得た後で、国民に「説明」という形で「押し付け」たのだ。
米国産牛肉再開問題については、さらにオチがある。専門家の報告書自体が巧妙に書かれた曲者であるという。責任を取らされてはかなわないという専門家の意地があるのであろう。それよりも専門家の中にも数少ない良心的な専門家もいるらしく、あからさまな安全宣言をしようとしてもさすがに報告書がまとまらないのである。かくして報告書自体が曖昧な表現に終始してしまった。
この点について11月8日の週間スパにコラムニスト勝谷誠彦が次のように書いている。
「・・・私の手元には発表される(報告書案の)結論のたたき台があるが、そこにははっきりと『輸出プログラム条件が遵守されない場合はこの評価結果は成立しない』とある。食品安全委員会は決して輸入容認ではないのだ。しかし読売新聞は社説で『専門委員会が日米の牛肉リスク差は非常に小さいとする答申原案を示した』と書いた。上記の前提を書かずにこの部分だけを抜書きするのは嘘とは言わずとも詐術である。権力に擦り寄るためには詐欺の片棒も担ぐメディアとはなんなのか・・・」
そうなのだ。我々は真実を正確に知らされることなく、専門家は安全だといっていると思い込まされようとしているのだ。
責任回避のために複雑な書き方に終始する食品安全委員会、安全だと言う答申案が出てきたので輸入再開が近く行われるという書き方をして国民をミスリードするメディア、ブッシュ訪日を成功させる為に見切り発車で米国に輸入再開を通報してしまった政府。
国民はどこまで真剣に考えているのか。現実に米国産牛肉が市場に出回ったときどういう反応を示すのか。
勝谷は上記のコラムの中で、「田舎芝居は今回は通用せず。国民はそこまで馬鹿ではない」と締めくくっている。しかし私はこの結論には懐疑的だ。何があっても国民は小泉さんを批判しないだろう。うまいうまいと危険な牛肉でも喜んで食べると思う。

内閣改造後の小泉支持率アップをどう考えればよいのか

 今度の内閣改造についてメディアの評価は賛否まちまちである。しかし私に言わせれば「こんな人物しか集められなかったのか」である。いや彼は集めようとしなかったのだ。
言いなりになる連中ばかりをそろえたのだ。「偉大なイエスマン」武部を留任させ、これに感涙した武部に命がけで忠誠を尽くさせる、その一方で自分のまいた困難な仕事を、後継者と囃したてられてその気になっている谷垣や麻生に刈り取らせる、そしてうまくいかなければ彼らの責任に転嫁しようとする、なんとも卑しい小泉首相の組閣人事である。
ところがこの組閣後に小泉内閣の支持率がさらに上昇したという信じられない世論調査の結果が11月2日の新聞紙上を賑わせた。本当だろうか。各社の調査が軒並みに支持率上昇を伝えているのであるから、間違った数字ではないのだろう。とすると国民の大半は本気でこの内閣を評価しているという事だ。
これをどう解釈すればいいのか。だんだん日本という国がわからなくなってきた。

小泉改造内閣を評価した前原民主党党首

共産党や社民党が厳しい評価をした第3次小泉内閣について、前原民主党代表は党首は「期待を込めてエールを送りたい」とテレビの前で語った。これを翌日11月1日の各紙が「野党第一党の党首としては極めて異例のエールを送った」と報じた。しかし同時に民主党の多くの幹部は小泉内閣に厳しい評価をしていた。民主党はどうなっているのだ。
そう思っていたら11月2日の朝日新聞に、前原代表が1日の常任理事会で「昨日エールを送ったが、さまざまな問題がある。衆院選で勝った数のおごりが表れている」と前日の発言を事実上軌道修正したという記事が出た。「エール」発言には他の幹部から批判の声がでたからだという。消費税を07年に上げると言った谷垣財務相や靖国神社を参拝すると言い続ける安倍官房長官との対決姿勢を強調したと言う。
しかしその記事の末尾には、11月1日、野田佳彦国対委員長が「いろいろなところに目配りしたバランスのとれた人事だ」と述べたと書かれている。本当に民主党はどいうなってしまったのか。支離滅裂としか言いようが無い。

A戦犯合祀を知らなかった当時の政府

 10月31日の東京新聞夕刊版に大スクープが載っていた。それはA級戦犯の合祀を当時の厚生省幹部が知らされていなかったという事実である。
このことに関連しA級戦犯の合祀を靖国神社が1978年秋の秋季例大祭前に踏み切った経緯を整理しておきたい。
すなわち1953年の衆議院本会議で「戦争犯罪による受刑者の赦免に関する決議」が全会一致で採択され、それに基づいて戦犯の遺族にも遺族年金や弔慰金が支給されるようになる。それをよりどころに靖国神社は戦犯合祀を開始し厚生省は戦没者の名簿(祭神名票)を神社に送り協力した。66年にはA級戦犯の名簿を神社側に送った。神社総代会は70年に合祀を決めたが、合祀時期については「宮預かり」とされた。そして78年7月に就任した松平永芳宮司がはやくも10月に合祀に踏み切った。神社側は合祀の事実を公表しなかったが翌年4月の報道で表面化し論議が始まった。これがおおよその経緯だ。
10月31日の東京新聞夕刊版のスクープは、牛丸義留元厚生事務次官の証言に基づいて、66年に厚生省援護局が靖国神社側にA級戦犯の名簿を神社側に送った際、軍出身者の厚生省の課長補佐レベルの職員が、事務次官などの幹部の了承なく代理決済して渡していたという驚くべき事実を明らかにした。軍出身者の職員は、「悪くないのに東京裁判で戦犯にされたのだから合祀すべきだ、文官系の幹部に相談したらうるさくなるから」と援護局内の一部の軍出身者の職員の手によって行われたというのだ。
約40年もたって初めて明かされた戦後史の超弩級のスクープを、その後新聞は誰もフォローアップしようとしない。11月2日の東京新聞はさらに、合祀を決行した松平宮司の選任である故筑波藤麿宮司は「戦争の犠牲者の合祀が終了してからあらためて考えたい」として東条氏らの合祀に消極的であったと報じている。
小泉総理の靖国神社参拝が外交の大きな問題になっている折から小泉参拝の是非が国論を二分している。だからこそ歴史的経緯のすべてが明らかにされるべきである。正しい論争がなされるべきである。東京新聞の健筆をたたえ、他紙の奮闘を期待する。


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