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10月1日―メディアを創る
大阪高裁の靖国参拝違憲判決に思う
今日のテーマはこれにつきる。大阪高裁の大谷正治裁判長は、9月30日、靖国訴訟の判決文において、小泉首相の靖国参拝は総理大臣の職務行為と認めるのが相当であるとしたうえで、靖国参拝は違憲であるという判断を示した。
小泉首相の靖国参拝を「違憲」としたのは昨年4月の福岡地裁の例がある。あの時も裁判長は首相や保守政治家、評論家から随分批判された。辞表を懐に入れての判決だったと報じられた。しかし今回の判決はもっとすごい。私人か公人かをはっきりさせないままに参拝を続けてきた小泉首相に対し、「・・・あいまいな言動に終始する場合は公的行為と認定されても止むを得ない・・・」と指弾したのである。しかも「・・・国内外の強い批判にもかかわらず(参拝を)実行し、継続しており、参拝の意図は強固だった・・・」と断言して、これを違憲判断のよりどころの一つとした。勇気ある判決である。
しかも総選挙で圧勝し浮かれる首相を前に、誰も文句を言えなくなっている現状にあって、「法の支配」のみが権力者の不正を裁けるといわんばかりの痛烈な違憲判決である。さぞかし小泉首相は頭にきたことだろう。
もとより、この判決は数ある靖国訴訟の判決の一つである。裁判官の判断も割れている。前日29日の東京高裁の判決は「私的」、「個人的」という正反対の判決であった。他方小泉首相は、「私の靖国参拝が憲法違反だとは思っていない」(30日衆議院予算委)と相変わらず強弁を繰り返し、政府、自民党からは「大変遺憾だ」という発言が相次いでいる。1日の読売、産経の社説も「きわめて疑問の多い違憲判断」、「ねじれ判決に拘束力なし」などと大阪高裁の判決をこき下ろしている。
しかしこの違憲判決が小泉首相に与える影響は限りなく大き、重い。靖国問題は郵政民営化問題とは異なる。国内問題で小泉首相が強弁、詭弁を繰り返しても、従順な国民がそれを黙ってやり過ごすのであれば問題とならない。しかし国際問題はそうはいかない。間違った対応をとり続けるのであれば、国際問題に発展し世界がこれを注視することになる。国民の生活を脅かすような悪影響がでてくることにもなる。
みずから撒いたとはいえ、靖国問題は間違いなく小泉首相の今後の大きな課題としてクローズアップされていくであろう。果たして小泉首相は靖国に参拝できるのか。その結果日中、日韓関係はどうなるのか。米国のヒル国務次官補は29日の米上院外交委員会で、「良好な日中、日韓関係が東アジアの安定と繁栄に不可欠であり、それが米国の利益にかなう」との見方を示している(9月30日東京新聞)
願わくば、もう一つの違憲訴訟である自衛隊のイラク派遣違憲訴訟についても大谷裁判長のような勇気ある裁判官が現れないものだろうかと願う。自衛隊のイラク派遣のほうがより明白な憲法違反であるからである。
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