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ゴミの大量発生を前提とする  彩の国資源循環工場  【江東拓実】
http://www.asyura2.com/0510/social2/msg/774.html
投稿者 愚民党 日時 2006 年 4 月 13 日 06:26:23: ogcGl0q1DMbpk
 

ゴミの大量発生を前提とする

彩の国資源循環工場

http://www.bund.org/opinion/20060415-1.htm

江東拓実

ゴミを必要とする焼却炉

 雑木林の中に隠れるようにして立ち並ぶ産廃が、違法な野焼きをしていた所沢のくぬぎ山。90年代後半、ここからダイオキシン汚染の実態を明らかにし「焼却反対」の住民運動が起こった。あれから数年。くぬぎ山から焼却施設は姿を消したが、日本のゴミ処理問題はどうなっているのか。

 現在日本で1年間に発生するゴミは、一般廃棄物が5161万トン、産業廃棄物が4億トンにのぼる。これを処理するために、焼却炉、埋め立て処分場、リサイクルセンター、ガス化熔融炉、ごみ発電施設など、数え切れない施設が建設されている。ダイオキシン騒動をきっかけに、増え続けるゴミへの対処だけでなく、環境政策の一環としてゴミ問題に取り組む必要が増えた。こうした中で、ゴミを資源として再利用しようとする風潮が当たり前のことになってきている。

 そうしたなかで埼玉県寄居市に建設された「彩の国資源循環工場」は、県が県有地に誘致した9つの民間企業と、最終処分場を持つ、日本でもここだけにしかない壮大な実験的施設だ。1日2400トンにのぼる廃棄物の100%資源化を目指し、最終処分場の負担をゼロにするという。サーマルリサイクル施設でゴミ発電を行い、工場廃水は工場内で循環させるクローズド・システムなど、あらゆる技術が集められている。さらに「全国初のダイオキシン0・01ナノ以下」といったように、全国の基準値よりキビシイ数値をもうけ、それがクリアできていないと県からの指導がくるという施設だ。全国からの視察見学が殺到している。

 大半の工場が稼動し始めたばかりで、この施設の汚染の状態や安全性などは、これから調査していく必要があると思うが、見学して現時点で私が何より気になったのは、ここまで大きな施設を作る必要があるのかということである。

 埼玉県の「循環工場」のパンフレットには「工業品出荷額全国第5位。年間1千万トンの産廃を抱える埼玉県」と書いてある。これだけ大量にゴミが出ているのだから、大型化は避けられないといいたいみたいだ。同じような産廃処理施設の大型民営化計画は、大都市に目立つ。東京都の「スーパーエコタウン事業」、大阪府の「大阪エコエリア構想」などの計画がある。

 ところが、これらの大都市では一般ゴミの量は減っているという。それに対し大型化してしまった以上、大量のゴミを集めないと採算が合わなくなってしまうという問題をこれら施設はかかえる。

 95年から2000年の間に国から補助金をうけて建設された、一般廃棄物を燃やす焼却施設のうち、じつに70%が建て替え時に炉を大きくしている。規模を小さくした自治体は11%だ。どうせ建て替えるなら、とりあえず大きくするのに越したことはないと思うかもしれない。しかし、大きくした焼却炉は焼却能力は格段に上がるが、これに見合うだけのゴミを確保するのに苦心している。

 燃やす量が8割を割ると、熱量が少なくなり、不完全燃焼を起こしてしまうからだ。稼働率を上げるために、ゴミをたくさん集めたり、不完全燃焼をふせぐために灯油や都市ガスを注入しなければならなくなる等、かえってコストがかかるという本末転倒なことが起こっているのである。

「ダイオキシン対策」の下に

 97年のダイオキシン問題は、江戸時代から始まる日本のゴミ行政の歴史の中に大きな転換点を作り出した。何よりも一般市民の間にも「焼却はよくない」という意識が広がった。小中学校での焼却炉がいっせいに撤去され、ゴミを燃やすことが中止されたのもこの頃だ。

 では全国的に焼却率は下がったのか。現実には一般廃棄物の焼却率は年々上がっている。ゴミ処理の方法としては、直接焼却が78・4%ともっとも多く、資源化などの中間処理が12・8%、直接資源化が4・5%、直接最終処分(埋め立て)が4・3%という割合になっている。ダイオキシンが問題にされても尚、行政・民間あわせ日本の焼却炉の数は2002年で1490箇所あり、ダントツ世界一の焼却大国なのだ。

 ドイツをはじめとするヨーロッパでは、ダイオキシン対策として焼却をやめる方向に動いたのだが、日本では「高温で燃やせばダイオキシンは出ない」と考えることによって、逆に焼却施設の大型化が導入されたのである。

 この政策の下、「ダイオキシン特需」ともいえるような状況が作られている。自治体の計画作りや機種の選定に関わるコンサルタント会社やプラントメーカー、地域の有力者、自治体職員、有力国会議員もたれあいの構造が、焼却施設建設で生み出されているのだ。

 国は、1日100トン以上の処理能力のある焼却施設に限定して補助金を出す。1日100トン燃やせる焼却炉は、30億から50億円という非常に高額のものだが、国からの補助がでるから自治体の負担は軽くてすむ。本来そこまで大規模化する必要の無い市町村でも、そのため将来の人口やごみの量を多く見積もって申請する「縄伸び」といったインチキが発生している。

 02年暮れからダイオキシン規制強化に対応するよう、国は自治体の尻をたたく一方で、補助率のアップというアメとムチの政策をとっている。全国各地に新しい焼却炉が立ち並ぶわけである。

 中には「将来はゴミを減らしていく」という真っ当な目標をたてて、より小さな規模の焼却炉にした自治体もある。しかし大方の自治体は国の補助金制度によって、財政面だけでなく政策面においても、大量のゴミ処理にうつつをぬかしているのである。地方自治を優先するという三位一体改革が言われている割には、地域の身の丈にあった処分方法はやりにくい構造になっているのだ。「彩の国資源循環工場」のような巨大な施設が登場したのは、こうした国による大型化広域化政策と決して無縁ではない。

 2400トンの処理能力をもつということは、それだけの量の廃棄物をたえず必要とするということなのである。コンスタントにある程度の量が集まらないと、ダイオキシンを出さない焼却温度を維持することもできない。

 今後起こりうることは、自治体や企業の間でのゴミの取り合いである。入り口のところでゴミを少なくする政策をこの国は採らず、ゴミの大量生産・大量消費にむかっているのである。

「完全循環経済」が理想なのだが

 しかも国は、大型化広域化を奨励する一方で、それと相反する法律を次々と作っている。2001年の「循環型社会形成推進基本法(=略して「循環法」)」である。ここでいわれている循環社会とは、大量リサイクル社会のことではない。「製品がゴミになることを抑制し、出たゴミは出来る限り資源として適正に使用する。さらに残ったゴミは適正に処分することによって天然資源の消費を抑制し、環境への負荷が低減される社会」のことだ。

 そこでは廃棄物行政の優先順位を、1)発生抑制(リデュース)を行い、2)再利用(リユース)、3)マテリアル・リサイクル(再使用、再資源化)、4)サーマル・リサイクル(熱回収)としている。廃棄物を循環させる前提条件として環境負荷をなるべく少なくするという観点から採用された優先順位だ。

 しかし、実情ではリサイクルは盛んに行われているものの、リデュースやリユースはほとんど実施されていない。そこでさらに「資源有効利用促進法」という法律も作られ、パルプ製造、化学、製鋼、銅精製、自動車の5業種を特定省資源業種として、副産物の発生抑制のための計画を国に提出させることを義務づけている。しかし目標が達成されなくても行政処分が実施された例はない。循環法は獲得目標みたいなものになっているのである。

 ゴミの発生抑制のためにはどうしたらいいのか。「拡大生産者責任(EPR=extended producer responsibility)」という考え方がある。従来の「生産者責任」は、製品の欠陥に対して責任をおうというものだが、拡大生産者責任は「製品に対する生産者責任を、製品のライフサイクルの使用後段階まで拡大すること」である。生産者が廃棄物となった自社製品の回収と再利用化の責任を負うことになれば、生産者は廃棄物となった時に再利用しやすいように、製品設計せざるをえなくなる。生産者は製品コンセプトを変更することで、廃棄にかかるコストの低い製品を作ろうとする。生産者は廃棄にかかる費用、損害を最安価で回避しようとするのである。部品のリサイクルに対するドイツBMWの取り組みなどその例だ。

 ゴミの発生を抑えたいと思っても、消費者にはどうすることもできないこともある。複合素材が平気で生産されている今の現状では、素材ごとに分けてリサイクルするというのはおよそ不可能に近いのだ。だから「何でも一緒くたにして溶かします」というガス化熔融炉のような技術が、手っ取り早い解決策になってしまう。

 今の日本は、誰かが作ったものの処分を、別の誰かが引き受けるという意味で「補完型循環経済」なのだと加藤尚武はいう(『新・環境倫理学のすすめ』丸善ライブラリー)。動脈産業(生産―供給―流通)と静脈産業(回収―再利用化―廃棄)が、別々の企業体から成る巨大な分業体制になっている。補完的循環経済を支える法律には、容器包装リサイクル法、家電リサイクル法、建設資材リサイクル法、食品リサイクル法などがある。

 しかしそれらの法律にあるのは、他の会社にお金を払って、何らかの形でリサイクルしてもらうことが義務付けられているということだ。「拡大生産者責任」の概念はないのだ。高い費用を払って別の業者に「リサイクル」をお任せするのと、できる限り自分の会社の中で製品を循環させる「完全循環経済」では、どちらが環境にいいのかといえば後者に決まっている。完全循環経済では、あらゆる製品が製造元に帰って来るのだから、再利用しやすいものを作るというだけでなく、生産者はその循環の量を予測しなければならない。見込み生産=大量生産はだめだと、生産者自らが判断していく以外なくなるのである。基本的にEUなどで採用されているのはそうした方向である。それがこの国ではアメリカ型の大量生産・大量消費が、ゴミの処理にまで前提とされているのだ。

「彩の国資源循環工場」の可能性

 作った製品を資源化する、そのインセンティブを企業が高める為にはどうしたらよいのか。まず、従来の「一般ごみの処理は自治体で」というあり方だけでなく、民間の力を積極的に活用していくことだ。税金がいくら投入されても「ゴミは自分たちが出しているものだから仕方ない」「無駄な公共事業よりマシ」と、市民は納得してしまいやすい。そこにつけこんで、必要のない規模の処理施設が市町村に作られてしまう。一言で「資源化」といっても分別収集には費用がかかり、市町村にとっては財政負担が大きい。「リサイクルで節約した資源エネルギーよりも、リサイクルに投下した資源エネルギーの方がはるかに多い」(植田和弘)中で、「リサイクル貧乏」になっている自治体も少なくないのだ。

 「彩の国資源循環工場」は、資源循環を自治体がやるのではなく、県が誘致した民間企業にやらせる。「公共の負担の軽減、民間の事業機会の創出」がうたわれている。資源リサイクルを税金を使ってやるというよりも、「より安く、より環境負荷の低いやり方で循環する力」を企業に模索してもらおうという考えだ。この点については注目に値すると思う。循環工場の中の9社は、処理能力の規模もやり方も様々だが、最終的に持続可能な企業が生き残っていくだろう。

 RDF、RPFやガス化熔融炉など、人体へのリスクや環境への影響、事故の可能性など問題の多い技術もある。サーマルリサイクル施設によるごみ発電の効率も、どれほどいいものかわからないし、固形燃料化されたプラスチックにもさほど燃料としての需要があるわけではない。結局燃やされたり埋め立てにまわされたりしているという話も聞く。

 資金をかけ巨大な施設を作り、2000度近い高温であらゆるものを溶かしてガスにするというのも、「ダイオキシンを出さない」ための一つのやり方ではある。しかし植田和弘氏は次のようにいう。

 「先進国での技術開発は、人件費削減とむすびついてしまい、大量の失業者をうむ」「人を節約する技術は、資源やエネルギーを大量に使う傾向にある」(『理戦81』植田和弘「廃棄物が減っては困るリサイクル事業」実践社)

 まさに、巨大な設備を作りコンピュータで管理――というのは、エネルギーもそれを動かすための資源(ゴミ)も大量に必要となる以外ないのである。環境問題に取り組むことは生活の質の充実がはかられることであり、そのための新しいしごとがふえることであるべきだ。リサイクルを生業とする会社は、あらゆる廃棄物に対応できる「総合的」なものである必要はない。「限定的」なものに細分化されていく方がよいと私は思う。

 「循環工場」の中には「蛍光管だけをリサイクルして、ガラスをつくる」とか、「生ゴミを自然発酵させて堆肥にする」、あるいは「プラスチックの中でも発泡スチロールだけしか扱えません」というように、限定的に取り組んでいる会社もある。

 これらの企業は「いい堆肥をつくるためにも、生ゴミを分別してほしいし、化学肥料漬けの農業を見直して欲しい」とか、「自治体はプラスチックゴミを一緒くたにしないで、発泡スチロールを別にして欲しい」という。

 つまり、リサイクル会社の側から自治体や生産者に要求するということが始まっているのだが、こうした姿勢は大いに共感できる。産廃vsNGOというのでなく、産廃とNGOが連携して自治体や生産者を動かしたり、市民のインセンティブを高めたりする時代がきているのだ。

(グリーンアクションさいたま)


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(2006年4月15日発行 『SENKI』 1209号4面から)

http://www.bund.org/opinion/20060415-1.htm

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