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2006年03月30日20時28分
http://www.asahi.com/national/update/0330/TKY200603300370.html
東京都国立市の「大学通り」沿いの14階建てマンション(高さ約44メートル)をめぐり、地元の住民が「景観が壊された」と建築主の「明和地所」(渋谷区)などを相手に、上層部の撤去などを求めた訴訟の上告審判決が30日、あった。最高裁第一小法廷(甲斐中辰夫裁判長)は、「良好な景観の恩恵を受ける利益(景観利益)は法的保護に値する」とする初めての判断を示した。だが、今回の場合は「利益への違法な侵害はない」として、住民側の上告を棄却。住民側の敗訴が確定した。
第一小法廷は都市の景観について「歴史的、文化的環境を形作り、豊かな生活を構成する場合には客観的な価値がある」と指摘。憲法の幸福追求権をベースに地域住民には「景観利益」があると認め、各地の景観被害をめぐって住民が裁判で回復を求める道を開いた。
一方で、利益が違法に侵害されたと言うためには、「侵害行為が法令や公序良俗に反したり、権利の乱用に当たるなど、社会的に認められた行為としての相当性を欠く程度のものでなければならない」と、実際の被害救済にはやや高いハードルを設ける内容となった。
舞台の「大学通り」については、整備された歴史的な経緯や、街路樹と建物の高さの調和などから「景観利益がある」と判断。だが市には当時、高さなどを規制する条例はなく、建物自体に法令違反もないため、「容積と高さを除けば、調和を乱すような点はない」として、景観利益の侵害はないと結論づけた。
原告住民の石原一子さん(81)は「撤去が認められず残念だ」とする一方、景観利益という考え方が認められたことは「7年間の努力が認められた」と喜んだ。
明和地所は「当方の主張が認められた。入居者に心配と迷惑をかけたが、今後は、安心して生活してもらえる」との談話を出した。
この訴訟では、一審・東京地裁判決が「地権者の景観利益を侵害する」として、通りに面した棟の20メートルを超える部分(7階以上)の撤去を命じたが、二審で覆された。二審は「景観利益」も認めなかった。