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社説:視点 格差社会考/2 ライブドアとニートが生んだ錯覚=論説委員・北村龍行
所得格差の拡大が、小泉政権の市場原理の導入と関連しているかのように議論されている。格差はずっと前から拡大していた。それがなぜ今? ライブドア事件とニート問題が重なる中で格差が注目され、小泉政権と結びつけられたように見える。格差拡大の本当の経緯を振り返りたい。
97年に三洋証券、北海道拓殖銀行、山一証券が破たんした。もはや金融危機は誰の目にも明らかになった。金融機関が破たんすれば、多くの取引先企業も破たんする。従業員は解雇され、貧困に直面する。こうして、貧困層が増える形で格差は拡大し始めた。
97年の企業倒産件数は前年の1万4800件から一挙に1万6500件に増えた。以降、03年まで7年間、1万5000件以上の高水準が続く。98年以降、失業率も4%の大台にのせた。
雇用、債務、設備の過剰が言われ、企業は本格的にリストラに取り組み始める。人件費の非固定費化が言われ、正社員を減らして派遣社員やアルバイトを多用するようになる。銀行は不良債権の増加を恐れて「貸し渋り」「貸しはがし」に走る。大蔵省(現財務省・金融庁)が「貸し渋り」対策を発表したのは97年12月だった。この「貸し渋り」でも、多くの企業が行き詰まった。
企業はリストラと同時に、新規採用も抑え始めた。高卒の求人数は94年の80万人から、98年には42万人、00年には17万人に激減する。アルバイトやフリーターが急増し、正社員は高根の花になる。
この間、大卒の求人数は94年の50万人から98年は67万人にむしろ増加し、00年42万人と一定の水準を保った。大卒の就職氷河期といわれたが、実は高卒の方がはるかに深刻な就職難に直面していた。
参院選挙に敗れて橋本龍太郎首相が辞任し、小渕内閣が発足したのが98年7月、森内閣の発足が00年4月。その間、高水準の企業倒産と失業率、高卒の就職難は続き、若者を含めた所得格差は拡大し続けた。貧富の格差を示すジニ係数が目に見えて上昇(格差拡大)し始めたのも97年からだ。
格差拡大は最近のことではない。ただ、若者の貧富の差を印象付ける現象が続いて、最近の現象のように見えている。
小泉内閣の発足は01年4月。01年の企業倒産は1万9100件、失業率は5%だったが、04年になると企業倒産は1万3600件に減少し、失業率も4・7%に低下した。今春には多くの企業が正社員採用を表明した。失業率の低下、正社員の増加は格差を縮小させる。ベクトルは反転し始めた。
東京大学大学院教授の佐藤俊樹氏は「不平等社会日本」で、管理職や専門職の子弟が管理職や専門職に就く、階層の固定化が団塊の世代から本格化したと指摘する。階層の固定化を防ぎ、機会の平等を確保する議論こそ必要だ。
毎日新聞 2006年3月21日 東京朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/shasetsu/news/20060321ddm005070123000c.html