★阿修羅♪ > 社会問題2 > 693.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
社説:視点 格差社会考/1 日本社会活性化には格差拡大は…=論説委員長・菊池哲郎
◇日本社会活性化には格差拡大は不可欠か
民主党の偽メール騒ぎで政策の中心課題から当面消えそうな問題に、日本社会で目立ってきた格差拡大がある。少々短絡的だが、ライブドアのホリエモンを生み出した社会風潮とそれを促した小泉政権の政策が、裏側で弱者や負け組への配慮に欠け、その結果うまくいった連中とそうでない人たちの所得や資産の格差を拡大したとみなすことができた。堀江貴文前社長の逮捕劇は、格好の目に見える格差社会攻撃の材料だった。
そこを突破口に、小泉改革の全体像を問い直し、格差拡大が日本にとってまだ必要やむをえない対応策なのか、そろそろ修正を必要としているのか、そこが与野党間で論戦となる。そして、現実の政策として合意点を見いだしていくことができたら、まれに見る立派な政策論争として、日本の将来を決める一大イベントになるはずだったのだ。
多くの国民もそんなふうな国会を期待していた。それを台無しにしたのだから、民主党と永田寿康議員が謝るべき内容は、偽メールでした、ごめんなさいではない。功名をあせってこんな重要な議論をできなくしてしまったことを謝らなければいけないのである。
貧富の差を測る手法の一つとして貧困率というのがある。その国の平均所得の半分以下の所得の人が何%いるかの数値で、世界の裕福な国とされる経済協力開発機構(OECD)加盟国の比較で、日本は15・3%で多いほうから5番目だ。1番はメキシコの20・3%、アメリカが2番で17・1%。格差感は相対的なものだから、自動車がなくてハリケーンから逃れられない人たちがあれほどたくさんいたアメリカの格差状況と、日本は実は大差ない数字が出ている。一番小さいのがデンマークで4・3%だ。
これをどこまで由々しきことと感じるか。
格差はこうした個人の所得や資産だけではない。学力低下も詳しく見ると、成績がいいほうは昔と変わらず世界でも優秀なランクを保持している。しかし点数を出せない層が驚くほど低下して平均を下げている。
都道府県や市町村の財政力や将来展望の格差も、介護保険の浸透や三位一体改革の進行でさらに拡大しそうだ。高齢化やグローバリゼーションによる産業の世界規模での再配置が地方の劣化に拍車をかける。それは同時に同じ産業の中での企業格差に結びつく。
巨大政党と弱小政党の規模と実力も、同じ政治家の存在感や存在意義の格差も、官と民の待遇格差も、若者たちの生きがいまで含む個人格差も、毎年3万人以上必ずいる自殺予備軍とそうでない人たちとの格差というより断絶も、ある意味で小泉政権時代に顕著になった。この際あらゆる側面から日本社会で目立ってきた格差の是非をシリーズで考えてみる。
毎日新聞 2006年3月20日 東京朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/shasetsu/news/20060320ddm005070022000c.html