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縦並び社会:第2部・読者の声を追って/5止 人育てられぬ企業
◇技術や経験を持った人だけではなく、ゼロからその会社にふさわしい社員に育てていく考えも必要だと思う。フリーターの多くは正社員として働きたいと思っているはず
希望を持てない若者の姿を描いた記事には山梨県のフリーター男性(25)から意見が届いた。専門学校時代、採用試験が6次まである会社一本に絞って就職活動をした。4次面接で落とされた時には、他の会社はほぼ採用を終えていた。
今は正社員を目指して、精密機器をこん包するアルバイトをしながらハローワークに通っている。「パソコンを使った簡単な事務。未経験可能」とうたったメーカーの面接で「LANぐらい組んでくれないと」。別の会社では、「卒業後はアルバイトしていた」と話すと「仕事を探そうとしなかったのか」と落とされた。
男性は「内定なしで卒業した人はダメな人という考えの人が多い。仕事を探しても見つからないからアルバイトをしているのに」と訴える。
経済産業省産業人材参事官室の松山泰浩・参事官補佐は「フリーターの増加には、企業の研修費カットが大きく影響している。企業は即戦力重視で、人を育てなくなった」と指摘する。
松山補佐自身、ある大企業の人事部長から「人を育てるのは大事だが、企業は苦しくてどうしようもない」と聞かされた。厚生労働省の調査では88年〜02年、全国約5300社で約1000億円も研修費が削減された。
OECD(経済協力開発機構)によると、日本の職業訓練や社員教育への支出は先進国でも最低水準にとどまる。ようやく対策を本格化させる国は06年度、約761億円をニート、フリーター対策にあてる方針だ。
◇記事を読んで、「行き着くところ、悩みはみんな同じなんだ」と共感したら心が軽くなりました。自分だけが悩み、不安なんだと思い込んでいる人って案外多いと思う
長崎県大村市に住む、もろいしかずやさん(31)は昨年、フリーターとして過ごした3年余りの思いをつづった「あのころのぼくは」(PHP研究所)を出版した。
大学では社会福祉を学び、介護の仕事を目指したが、病気で長期入院した。再発の不安が残るため介護の仕事はあきらめ、ハンバーガーショップや清掃会社でアルバイトをしながら、やりたいことを探した。「このままでいいのかな」と考えたが、何を求めればいいのか分からなかった。
20代後半。勤めた会社をリストラされたのを機に、作家になる夢を追うことにした。「1、2、3」と声を出して受話器を取り、出版社に次々と電話をかけて企画を売り込んだ。分かってくれる編集者に巡り合えた。
本は母校の授業で使われ、高校生から共感の声が届いた。「夢ばかり追いかけて」と言われるのが嫌で、人と会うのを避けていたが、今では本屋への飛び込み営業も苦にならない。
「職業訓練などの支援は、自ら一歩を踏み出せた人にとっては有効だ。しかし、踏み出せない人も多く、自分一人じゃないと知ることができる交流の場をつくるような支援が必要なのではないでしょうか」【小松雄介】=おわり
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毎日新聞 2006年3月3日 東京朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/tatenarabi/news/20060303ddm002040107000c.html