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縦並び社会:第2部・読者の声を追って/4 「現地採用」、夢は幻
◇世界有数の経済発展を遂げているので、中国に来れば何とかなるのでは、という気持ちは理解できますが、現実は甘いものではないです
中国では今、日系企業に「現地採用」されて働く日本人が増え、数千人以上ともいわれる。かつて同じ立場だった男性(33)は、こんな意見をメールで寄せた。連載で取り上げた大連のコールセンターで、時給288円で働く日本人も雇用形態は同じだ。
日本の大学を卒業してメーカーで営業をしていたが、不況で先が見えない中、上海に渡り5年前、日系企業に現地採用された。
月給は約8000元(約11万円)。友人と2人で借りたアパートで暮らした。会社は年金や健康保険の保険料は負担しない。健康保険は自分で民間の海外傷害保険に加入した。国民年金は自費で払っていたが、生活が苦しくて途中でやめた。
一方、日本で入社した同世代の駐在員は月給50万〜60万円。外国人用の高級マンションまで会社の車で送迎される。もちろん社会保障もある。「駐在員以外の日本人は企業にとって都合のいい人たち。ずっと雇うわけでもないし、いくらでも代わりはいる」
男性は1年足らずで退職し、商社に正規入社して上海の駐在員になった。今度は自分が現地採用の日本人を迎えた。最近、その一人から「国民年金を払いたい」と相談された。上司と相談し、年金保険料を負担した。
メールは強い疑問で結ばれている。
「日本では景気回復が話題だが、人件費を抑えることで得られた結果が本来の景気回復なのだろうか」
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中国で働く日本人が増えているのは、中国がキャリアアップの場として考えられるようになったためだ。求人も多く、日本人留学生向けの就職説明会も盛んに開かれている。
しかし、大連に拠点を持つ人材派遣会社、パソナテックの小平達也・中国事業部長は「中国に渡ってから待遇などに不満を感じ、転職情報やアドバイスを求めて来る人が多い。まるで駆け込み寺だ」と言う。
学生が不本意な就職をしないよう教育を始める大学もある。亜細亜大は04年度から「アジア夢カレッジ」を開講した。4年間で中国語や中国のビジネス習慣を学ぶ。半年間は大連の大学に留学し、日系企業でインターンシップとして働く。小木曽雅光・担当課長は「日本では情報が少ない。現地で初めて格差を目の当たりにしないよう、現実を教えたい」と語る。
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◇北京の日本人社会では、日本社会での貧富の格差が何倍にも何十倍にも増幅されて再現されている
北京に住み、中国のマスコミで翻訳者として働く女性(30)も疑問を感じる。
この女性の給料は日系企業の現地採用とほぼ同じ。「駐在組が一食100元(1439円)のランチを食べている一方で、1杯3元(43円)のラーメンをすする」という。
それでも、勤め先の中国企業は国民年金保険料も負担してくれる。「私は会社から大事な戦力として優遇してもらっている。なぜ日系企業の方が日本人に冷たいのか」【小松雄介】=つづく
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〒100−8051 毎日新聞社会部「縦並び社会」係。ファクス(03・3212・0635)。Eメールt.shakaibu@mbx.mainichi.co.jp
毎日新聞 2006年3月2日 東京朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/tatenarabi/news/20060302ddm002040009000c.html