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縦並び社会:第2部・読者の声を追って/3 のしかかる保険料
◇会社を退職後、国民健康保険になった。月収20万円余りなのに、保険料は年間30万円超。こんな苦しみを、国や自治体は知ろうとしているでしょうか
奈良県桜井市の警備員の男性(54)は全国展開するスーパーの営業部長だった。社会保険のため保険料の半分を会社が負担し、納付額は年に24万円程度で済んだ。一方、01年に自己都合で退職して国民健康保険に加入すると、収入は下がったのに保険料はアップした。今年度の保険料は、昨年度の所得240万円の1割を超える。
大学生と高校生の子供3人の授業料だけで年100万円は下らない。マンションを売って古い賃貸住宅に移り、妻(45)はパートを始めた。
保険料の負担を減らせないか市に相談すると「できない」と言われた。厚生労働省の03年度調査によると、男性のように所得200万〜250万円の170万世帯で軽減措置を受けられるのは特に家族が多い場合に限られ、2%に満たない。
市からは年8回の納付を月1回にして1回あたりの額を下げる分割納付を勧められ、昨年9月に誓約書にサインした。だが、そのひと月後から支払いは滞った。
苦境には別の原因もある。同じ会社の警備員でも、公共職業安定所経由で勤めた人は社会保険に加入でき、保険料の半額は会社が負担。直接就職した男性は、業務委託された形の「自営業扱い」で、自分で国保に加入するしかない。「会社は社会保険の負担を節約したいんでしょう」と言う。
◇保険証を取り上げられ、重い病気になってやっと病院に行った人のことが記事に載っていましたが、実際に亡くなった人もいます
横浜市の医療関係者から取材班に情報が寄せられた。
昨年12月30日、56歳の女性患者が横浜市内の救急病院に意識不明で搬送され、間もなく息を引き取った。無職でほとんど収入がなかった。国民健康保険料を滞納して保険証を取り上げられ、窓口で医療費10割負担を求められる「資格証明書」を交付されていた。
女性は3年前に脳内出血で倒れたことがあるため、かかりつけの病院の医師が何度も精密検査を勧めたが、「お金がかかる」と拒んだ。
資格証明書でも自治体に申請すれば、自己負担分を除く7割が戻る仕組みはある。だが、複数の自治体担当者は「戻さずに滞納分の支払いに回す」と口をそろえる。
女性の滞納額は5万〜6万円。一方、かかりつけの病院で支払った10割負担の医療費は10万円になる。「7割分を返してもらいたいけど(市職員に)責められるから行きづらい」。倒れる前日、この病院でそう話した。
年明けに病院職員(59)と市役所へ行き、滞納分を分割で支払う相談をするはずだった。職員は「もっと早く手を打っていれば」と悔やむ。
女性には17歳の娘がいる。母の被扶養者だから同じく資格証明書だ。脳に髄液がたまる水頭症で、髄液を抜く管は成長に合わせて入れ替えが必要なのに、幼児期からずっと交換されていなかったという。
手術の予定は今も決まっていない。【夫彰子】=つづく
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〒100−8051毎日新聞社会部「縦並び社会」係。ファクス(03・3212・0635)。Eメールt.shakaibu@mbx.mainichi.co.jp
毎日新聞 2006年3月1日 東京朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/tatenarabi/news/20060301ddm002040026000c.html