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縦並び社会:第2部・読者の声を追って/2 「派遣」、冷たい法律
◇不正行為は日常茶飯事なのに、行政は黙認している。やったもん勝ちなんです
横浜市に住む派遣社員の男性(33)から、派遣労働の記事に意見が寄せられた。
高校卒業後、コンピューターの管理技術を身につけ、いくつかの職場を経験した。父親がリストラされ、自分が家族を支える立場になる。
02年夏、人材派遣会社を通じ、都内の大手電機メーカーのグループ会社に派遣された。グループ会社の担当者には「派遣の身分は明かすな」と口止めされたうえ、同社の「正社員」として神奈川県にあるメーカー本体の工場に「出向」させられた。
職業安定法で禁止される多重派遣。ピンハネが横行し、管理責任も不明確になる。
仕事は業務用パソコンのクレーム処理。利用者の苦情や問い合わせをまとめ、修理・交換作業を手配する。メール100本、電話30本を処理した日もある。
朝は7時から「サービス早出」し、夜は10時ごろまで残業。疲れ切って帰宅した後も、顧客に謝り続ける自分の姿を夢に見た。
現場の上司に「1人ではとても無理」と訴えると、「頑張ってくれ。あなたは人件費が月90万円の課長級の待遇で来てもらっているから」と初めて聞かされた。
派遣会社から支払われる給与は手取りで月20万円を切る。グループ会社と派遣会社から法外な額をピンハネされていることが分かった。それでも解雇を恐れ、身分を伏せて働き続けた。
出向契約は、仕事が一段落した04年夏に切れた。公共職業安定所で、派遣社員は会社の都合による退職でも失業保険の給付条件が厳しいことを知った。求人内容とかけ離れた仕事の実態を相談した時も「1年も働いていれば同意したとみなされる」と言われた。
「このままの状態を続けたらまともな人生は送れない」。正社員を目指して簿記検定試験に挑戦するつもりだ。
◇解雇の通知が送られてきた。どうしたらいいのでしょうか
連載で「偽装請負」の問題を取り上げた自動車部品製造「光洋シーリングテクノ」(徳島県藍住町)の工場従業員、黒坂和也さん(25)は戸惑っていた。昨年末、登録している派遣・請負会社から届いたその書類には「(光洋との)契約の継続は困難」とあった。
実際には工場側の指示を受ける派遣労働なのに、労災などの責任があいまいになる「偽装請負」が長年続いた。労働者派遣法では、一定の就業期間を経過した場合、派遣先は従業員が直接雇用を希望するかどうか確認する義務を負う。このため、黒坂さんら非正社員30人は、光洋側が義務を守るよう徳島労働局に指導を要請した。
その3週間後の解雇通知。「法令を順守できない契約(偽装請負)は解消する」というのが理由だが、しわ寄せを被るのは自分たちだ。
解雇期限目前の1月末、労働局が介入した。別の派遣・請負会社への移籍を認められて、工場の仕事を失わずに済んだ。だが、正社員への道が開けたというわけではない。厚生労働省によると、法的に適正な派遣でない限り、派遣法の適用は難しい。
同僚の矢部浩史さん(40)は訴える。「労働者の実態に目を向けないで、何のための法律なのか」【井上卓弥】=つづく
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毎日新聞 2006年2月28日 東京朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/tatenarabi/news/20060228ddm002040032000c.html