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縦並び社会:第2部・読者の声を追って/1 バス運転手の過酷
◇読者のみなさんはバスの実態を知ったら乗りたくなくなるかもしれません
大手私鉄の路線バスを運転する横浜市の男性(41)は、トラック運転手の過酷な勤務を取り上げた記事を読み、取材班にこんなメールを寄せた。
その2週間後。職場に向かう途中、急にめまいがして立っていられなくなった。病院で「過労による自律神経失調症」と診断され、自宅療養を続けている。
妻と3人の子どもがいる。毎朝4時半には起き、6時すぎからハンドルを握る。横浜市郊外の住宅地とターミナル駅を結び、終点に着くと数分で折り返す。「少しでも遅れると乗客から苦情を言われる。いつでも緊張状態なんです」
午後には3〜4時間の休憩があるが、人の出入りが多い営業所の休憩所ではなかなか眠れない。夕方から運転を再開すると、深夜までほとんど走りっぱなしだ。トイレの時間も取れないため、万一を考え、成人用のおむつを着けて運転する。
帰宅が未明になることも多く、睡眠時間は3〜4時間。休日は月に2、3日しかない。海上自衛隊の勤務経験もあるが「訓練よりもずっときつい」と言う。
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背景には、バス業界の徹底した合理化がある。大企業の強い要望で、90年代後半から商法改正が繰り返され、子会社設立や会社分割が容易になった。私鉄各社は収益性が低いバス部門を軒並み分社化し、運転手の多くは新バス会社へ出向させられた。
出向社員は給与水準が維持されたが、新規採用では大幅にカットされた。同じ仕事内容でも「出向組」と「新規組」で格差がつけられた。
意見を寄せた男性は関西のバス会社で3年の運転経験があるが、昨年6月に「新規組」として入社。年収は400万円に届きそうにない。50歳代の出向組が年収800万円と聞き、がく然とした。
妻(37)も「会社は働くだけ働かせてあとは関係ないという感じ。主人は捨て駒なんでしょうか」と嘆く。
日本私鉄労働組合総連合会によると、バスを運行する加盟約200社のうち7〜8割が既に分社化。新会社の運転手の大半は収入が2〜3割下がる一方、人員削減で労働時間は増えた。00年以降、バス業界への参入規制の緩和で競争に拍車がかかる。大都市を結ぶ高速路線では運転手の賃金を極限まで削り、東京−大阪間の料金が4000円を割るバスも登場した。
小池泰博・私鉄総連交通政策局長は「規制緩和をすべて否定する気はないが、公共交通機関の安全確保には一定のコストが不可欠だ。大事故が起きる前に、競争にも一定の歯止めが必要だ」と指摘する。
国土交通省によると、運転手の体調悪化でバスが運行を続けられなくなった例は、01年には4件だったが04年には27件に達した。症状の多くは心筋梗塞(こうそく)や脳血栓などで、死亡例もある。
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男性と同期で入社した「新規組」は20人いたが、半数以上が去った。自身も職場復帰に自信が持てず、精神安定剤が今も手放せない。「疲れきった体で運転してもし事故を起こしたら、と考えると怖くなる」【鵜塚健】
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格差が広がりつつある現状を紹介した連載「縦並び社会 第1部」には、多数の反響が寄せられた。第2部では読者の声を基に、現場から再び報告する。=つづく
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〒100−8051 毎日新聞社会部「縦並び社会」係。ファクス(03・3212・0635)。Eメールt.shakaibu@mbx.mainichi.co.jp
毎日新聞 2006年2月27日 東京朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/tatenarabi/news/20060227ddm002040023000c.html