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防犯カメラ:警察提案で設置、管理住民任せ 東京・世田谷
東京都世田谷区で、個々の住民が自ら費用を負担し、管理する街頭防犯カメラの設置が進んでいる。空き巣やひったくりなどの犯罪を防ぎ、事件解決に結びつけようと、警察が協力を求めての導入だ。ただ、管理を住民に任せたり、住宅地でプライバシー性が高いことなどから懸念の声も上がる。凶悪犯罪が相次ぎ、地域社会に不安が広がる中、住宅地へのカメラ導入は論議を呼びそうだ。
設置を呼び掛けているのは警視庁成城署で、20日には、熊本哲之世田谷区長や各地区の自治会役員らが参加する「防犯カメラ活用促進のつどい」を開き、カメラ設置の意義をアピールする。
世田谷区内で昨年警察が把握した刑法犯は約1万4000件で、都内の区市では最も多い。空き巣やひったくりなどの犯罪が相次いでいる。また、同署の管内では、00年12月に会社員の宮沢みきおさん(当時44歳)の一家4人殺害事件も起きており、いまだ事件は未解決だ。
都内では、すでに新宿・歌舞伎町など4カ所の繁華街に10〜50台の街頭防犯カメラが設置されているが、いずれも警視庁が経費を負担、モニター監視もしている。同署は「住宅地への警察の監視カメラ導入は住民らの抵抗が強い」と考え、「住民への提案方式」で導入を図ることにした。
昨年秋から、民家や事業所に設置を呼び掛けたところ、これまでに55軒が同意した。カメラは家の壁などを利用して設置。購入すれば100万円近くかかるが、リースなら月額1万円程度で、設置した住民が負担する。画像は1週間から10日程度保存される。また、カメラ設置を地域外の人たちにも知らせるため、近くの駅や交差点など約500カ所に「防犯カメラ設置推進区域」と記したステッカーを張る。
事件が発生した場合、同署は現場近くや容疑者の逃走経路に設置されたカメラの画像の提出を住民に求める。同署は「捜査目的以外には使わない」としている。
住民らの反応はさまざまだ。30代の主婦は「治安を考えると設置してもいいと思う人もいるのでは。カメラのある場所に目印をつけてほしい」。男性会社員(62)は「カメラに見られるのは気分のいいものではない。通行人のいる道路まで映すのは変だと思う」と言う。自宅にカメラを設置した会社社長の男性は(61)は「犯罪への不安がますます強まっている。地域の安全に役立つと思い、設置に賛同した」と話す。
◇容疑者特定には一役
防犯カメラの地域への導入をめぐっては、これまでも犯罪防止につながる一方で、プライバシーなどの点で問題だとする見方もある。実際、02年に50台を導入した新宿・歌舞伎町では、路上で起きた刑法犯罪が設置前の01年に634件だったのに対し、05年は458件に減っている。
また、カメラがとらえた映像で事件の解決に結び付いた例もある。03年に起きた長崎市の男児誘拐殺害事件では、商店街が設置したカメラの画像から容疑者が浮上した。最近では、大阪府藤井寺市にある住宅地のように、一定区画にあらかじめカメラを設置したうえで住宅販売会社が売り出すケースも出ている。
一方、東京都杉並区が、画像の第三者提供について「法に基づいた照会」を条件とすることなどを盛り込んだ条例を04年に制定するなど、防犯カメラの設置に一定のルールを設けようという動きも出ている。
▽ 地域社会の安全対策に詳しい前田雅英・首都大学東京法科大学院教授(刑事法)の話 住民が費用を負担するというのは、それだけ犯罪の不安を肌で感じていることの証しだ。親にとっては、子供が通学路で犯罪に巻き込まれるのを防げるなら、プライバシーに関する問題は小さいだろう。今回の試みは一定の評価ができるが、個人所有の画像が悪用されない仕組みをどう作るかの議論は必要だ。
▽プライバシー問題に詳しい石村耕治・白鴎大教授(情報法)の話 個人が一般の通行人や他人の家に出入りする人を本人の承諾なく常時撮影することになれば、肖像権の侵害につながりかねない。また、警察に映像を提供したことが原因で、プライバシー問題が生じた場合、提供者が損害賠償の責任を負わされるリスクもある。こうした問題を、住民が十分理解して導入しているのか疑問だ。玄関などへのカメラの設置と同じように考えるべきではない。
毎日新聞 2006年2月19日 3時00分
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20060219k0000m040116000c.html