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[2006年02月09日付]
飽食の時代を象徴的に示していると言われるのが、ホテルなどで開かれる宴会での料理の食べ残しだ。宴会や外食だけでなく、家庭内も含めて全体の食べ残しや廃棄が、ここ30年ほどで、徐々に増えているのは問題だ。世界では飢えに苦しむ人が8億人もいるし、日本の飽食を支えているのが、世界中から買い集めた食料であることを考えても、食べ物を無駄にしない方策を急いで徹底することが重要だ。このままでは、子どもたちに食育を語ることなどはとてもできない。
少し前になるが、タイからの留学生と語る会に出席した。留学生の父親は、日本向けに輸出するエビを養殖していたが、自分の息子である留学生には「貴重品だ」と言って、目の前にあるエビを、ただの一度も食べさせてくれなかったそうだ。ところが、日本に来てパーティーの後、エビがたくさん食べ残され、捨てられるのを初めて見て「涙が止まらなかった」と、くやしそうに語っていた。
父親が、わが子にも食べさせず、大事に育てて出荷したエビだ。遠くタイから日本まで運ばれてきたエビを、日本人は食べ残し、無造作に捨てる。なんということだろう。食べ物についての印象は強烈だ。タイからの留学生が日本という国に、どんな印象を持ったかは容易に想像がつく。
首をかしげざるを得ない事例は、ほかにもある。例えばコンビニやスーパーなどで、賞味期限が切れた弁当や総菜などをはじめとした食品類を大量に廃棄する現場を見れば、たとえ期限切れと分かっていても、多くの人は、やりきれない思いがするだろう。
全国でどれくらいの食品が食べ残され、廃棄されているかを直接示す調査結果は見当たらない。農水省が調査した「食料需給表」から一人一日当たりの供給熱量を求め、厚生労働省の「国民栄養調査」からの摂取熱量と比べる方法がある。供給された食品の熱量と、実際に摂取された熱量の差が、廃棄されたか、食べ残しの食品ロスと考えられている。2つの調査は調査方法が異なるので厳密な比較はできないが、目安にはなる。
2003年の熱供給量は2587キロカロリー、摂取量は1920キロカロリーなので、その差は667キロカロリーだ。28年前の1975年は、差が329キロカロリーだったので倍以上に広がった。廃棄や食べ残しが増える傾向にあることは確かだ。667キロカロリーといえば、ほぼ1食分の熱量になる。毎日、だれもがみんな1食分を捨てるか、食べ残している状態は、どう考えても異常だ。
農水省が食堂やレストランなどの外食産業を調査した結果では、ご飯の量を客が選べるようにすると、食べ残しが少なかった。こうした仕組みにすることだ。それでも残ったものは、飼料や肥料に再利用する。食育の基本としてもきめ細かい取り組みをきちんと積み重ねていきたい。
http://www.nougyou-shimbun.ne.jp/column/0602/09.html