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毎日新聞からhttp://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20060110k0000e040086000c.htmlより引用
人権講座:上野教授の講師を拒否 都教育庁が思い過ごし
東京都国分寺市が、都の委託で計画していた人権学習の講座で、上野千鶴子・東大大学院教授(社会学)を講師に招こうとしたところ、都教育庁が「ジェンダー・フリーに対する都の見解に合わない」と委託を拒否していたことが分かった。都は一昨年8月、「ジェンダー・フリー」の用語や概念を使わない方針を打ち出したが、上野教授は「私はむしろジェンダー・フリーの用語を使うことは避けている。都の委託拒否は見識不足だ」と批判している。
講座は文部科学省が昨年度から始めた「人権教育推進のための調査研究事業」の一環。同省の委託を受けた都道府県教委が、区市町村教委に再委託している。
国分寺市は昨年3月、都に概要の内諾を得たうえで、市民を交えた準備会をつくり、高齢者福祉や子育てなどを題材に計12回の連続講座を企画した。上野教授には、人権意識をテーマに初回の基調講演を依頼しようと同7月、市が都に講師料の相談をした。しかし都が難色を示し、事実上、講師の変更を迫られたという。
このため同市は同8月、委託の申請を取り下げ、講座そのものも中止となった。
都教育庁生涯学習スポーツ部は「上野さんは女性学の権威。講演で『ジェンダー・フリー』の言葉や概念に触れる可能性があり、都の委託事業に認められない」と説明する。また、一昨年8月、都教委は「(ジェンダー・フリーは)男らしさや女らしさをすべて否定する意味で用いられていることがある」として、「男女平等教育を推進する上で使用しないこと」との見解をまとめていた。
一方、女性学とは社会や学問のあり方を女性の視点でとらえ直す研究分野だ。上野教授は「学問的な見地から、私は『ジェンダー・フリー』という言葉の使用は避けている。また『女性学の権威だから』という理由だとすれば、女性学を『偏った学問』と判定したことになり許せない」と憤る。
同市や開催準備に加わってきた市民らは「講演のテーマはジェンダー・フリーではなく、人権問題だった。人権を学ぶ機会なのに都の意に沿う内容しか認められないのはおかしい」と反発している。【五味香織】
◇ジェンダー・フリー◇
社会的・文化的な性差「ジェンダー」をなくす意味で用いられる和製英語。90年代半ば以降、「男らしさ、女らしさ」を押しつけないジェンダー・フリーの考えが広まり、自治体などが男女共同参画に取り組む際に使われてきた。特に決まった定義がないため、体育の着替えを男女同室で行うなど、行き過ぎた男女の同一化の動きにもつながっている。猪口邦子・男女共同参画担当相は、混乱や誤解が生じているとの判断で今年度中に定義を明確にする方針。
毎日新聞 2006年1月10日 15時00分