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縦並び社会・格差の現場から:中間集計から
毎日新聞朝刊で掲載している連載「縦並び社会」のアンケートには、連日多数の回答が寄せられている。格差を巡る問題への関心の高さをうかがわせるとともに、今後議論していくうえでの手がかりも示す。中間集計結果(6日午後4時現在)を報告する。
アンケートにはインターネット、ファクス、郵便で計1万8071件の回答があった。最も多かったのは、年金不安から海外に移住する人々を取り上げた「年金移民」に関する質問。老後になって生活費が不足した場合の対応について4032件の回答があり、「物価の安い国に移住する」が58%で、「生活を切り詰めて国内で暮らす」を上回った。
次いで関心が高かったのが、派遣労働に関する問題。正社員と非正社員の給与格差についての問いには4024件の回答があり、7割以上の人が給与を同額とするよう求めた。
国民健康保険料が支払えないため、保険証を取り上げられた「無保険者」の問題も関心が高かった。無保険者の増加にどう対応するかの問いに、3215件の回答が寄せられ、7割の人がもっと予算を投入するよう求めた。診療報酬引き下げや高齢者の窓口負担引き上げなど、医療費は抑制の動きが強まっている。結果は、セーフティネット機能まで損なうことがないよう望む声が強いことを示した形だ。
結果に大きな差がついたのは、トラック運転手の過酷な勤務に関する問題と、中国・大連のコールセンターで時給288円で働く日本人を取り上げた質問。運送業界の過当競争是正や、「288円では働きたくない」という人がそれぞれ9割を占めた。運送業界の問題では、便利さを返上してでも是正することを求める声もあった。
起業の意思を問う質問では、答えがほぼきっ抗した。若者を中心に起業への関心が高まっている現状を裏付けた。
◇アンケートの中間集計結果(6日午後4時現在、カッコ内は件数)
<質問> あなたは起業してみたいですか。
起業してみたい 43%(1022)
起業は考えていない 57%(1328)
<質問> 同じ内容の仕事でも、正社員と非正社員の給与に格差があることをどう思いますか。
仕事の内容が同じなら、給与も同じにすべきだ 76%(3054)
正社員と非正社員の給与格差は仕方がない 24%(970)
<質問> 規制緩和による競争でトラックの運賃は下がり、消費者の利便性も向上しました。しかし、運転手の勤務は過酷で事故や過労死も招いています。どう考えますか。
自由な競争の結果だから仕方ない 10%(276)
過当な競争の結果で是正が必要だ 90%(2539)
<質問> 老後になって生活費が足らず、生活水準が大きく下がる場合どうしますか。
生活を切り詰めて国内で暮らす 42%(1688)
物価の安い国に移住する 58%(2344)
<質問> 無保険者が30万世帯に達し、病院に行けない人も出ています。どう考えますか。
保険料を支払っていないのだから仕方ない 28%(905)
予算をもっと投入し、保険料免除などの対策を拡大すべきだ 72%(2310)
<質問> 中国・大連のコールセンターで、中国語を学びながら時給288円で働く日本人がいます。そこで働きたいと思いますか。
働きたい 10%(103)
働きたくない 90%(901)
◇浮かび上がる「強い不安」 中間集計結果
「希望格差社会」の著者で東京学芸大の山田昌弘教授(家族社会学)
アンケート結果は、格差の拡大に対する国民の強い不安をうかがわせており興味深い。
無保険者に関する設問で、「予算をもっと投入し、保険料免除などの対策を拡大すべきだ」が多数を占めたのは予想通りで、国民皆保険制度からこぼれ落ちる人が増えることへの不安感を象徴する結果になった。
この問題は、(親と同居している)パラサイトのフリーターが増える中、将来にはもっと深刻化するのではないかと考えている。親が亡くなると、パラサイト世代の生活が破たんし、保険料を払えなくなるのは目に見えている。
起業に関する設問では、「起業してみたい」が「起業は考えていない」とほぼきっ抗している。従来のようにコツコツ働くことが美徳とされた社会が変容していることをうかがわせる。
私はたくさんのフリーターに聞き取り調査してきた。正社員になって徐々に昇進するよりも、「ロックスターやセレブとなって一発逆転を目指し、それがかなわなければ今の生活を楽しく暮らす」ことを志向する若者が増えていることを痛感している。
また、「中国・大連のコールセンターで時給288円で働きたいか」という設問をすれば、「働きたくない」と答えるのが普通だと思っていたので、1割も「働きたい」という回答があったのは意外だ。国内より海外にチャンスがあると考える人が増えつつあるのだろう。
一方で、「正社員と非正社員との給与を同じにすべきだ」との答えが多かったが、格差を解消すれば必然的に正社員の給与が下がる現実もある。他の質問にも共通するが、格差拡大を是正するには、税金を上げたり、生活の不便さを受け入れることも必要になる。それを受け入れる覚悟があるのか、政府や政党、国民それぞれが考える必要があると思う。
毎日新聞 2006年1月6日 22時05分 (最終更新時間 1月7日 2時24分)
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/tatenarabi/news/20060107k0000m040120000c.html