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縦並び社会・格差の現場から:株に乗り遅れるな
午前8時50分
東京都日野市の主婦、福岡陽子さん(40)は2階の書斎でパソコンを立ち上げた。寄り付き前、取引している16銘柄が表示される。会社員の夫(44)を送り出し、幼稚園に通う3男(4歳)を送迎バスに乗せてひと息ついたところだ。
9時4分
値動きするごとに数値が点滅する。前日はみずほ証券による誤発注が起きた。銀行株も急落し、取引しているみずほ信託株が気になる。「ほら、上がってきた」。画面は405円〜406円の攻防。パスワードを入れ、1000株の買い注文を出す。3分後、証券会社から携帯に売買成立を知らせるメールが届く。
株を始めたのは昨年4月。カリスマ主婦トレーダー、山本有花さんの著書を読んだのがきっかけだ。資金はパートで貯めた300万円。2年前に建てた自宅のローンを繰り上げ返済したいし、子供3人の教育費にも充てたい。
薬剤師の資格があるが、子供が小さいうちは勤めに出られない。今は確定収支でマイナス20万円。含み損も20〜30万円ある。「値動きがだんだん分かってきたんです」。いつか挽回できると信じている。
9時13分
「日経平均も上がってきましたね。(ドラッグストアの)サンドラッグ株は取引量が少ない分値幅が出るんですよ」。6180円で100株注文。10分後、予想通り300円以上値を上げた。
小学4年の長男(10)にはそろそろ株を教えようと考えている。「これからは株取引できる人とできない人の差がどんどん開いていく」。息子たちがサッカー選手や起業家になるのは難しいだろうが、「ニートやフリーターにだけはなってほしくない」と思う。
ネットトレーダーが急増している。取引口座数は昨年9月末時点で約790万。1年間で約200万増えた。売買代金総額の3割を占める。
だが、ある証券会社幹部は言う。「市場には村上ファンドのようなプロもいる。同じ土俵で戦うのは、免許取り立てでF1レースに出るようなもの。もうけ続けられるのは2割に満たない」
■ ■
12月15日、東京・有楽町の東京国際フォーラム。日興コーディアル証券のセミナーは、補助席が出るほどの盛況になった。退職前後のシニア約150人が「日興SMA」の説明にペンを走らせる。
SMAは70年代以降、米国で改良が重ねられた資産運用だ。顧客に運用を一任された証券会社は株式やヘッジファンドを組み合わせ、顧客が希望する利回りを目指す。日本では04年春に日興が初めてサービスを開始し、大和、新光、野村も参入した。ただし、契約は一番低額の日興でも1000万円から。野村に至っては3億円からだ。
日興では年12%の利回りを得ている顧客が最も多い。相応のリスクと引き換えに年4割超ももうけた人もいる。約6500口座のうち開設間もないケースを除き、元本割れの口座は一つもない。
一見公平な株の世界でも富裕層は優遇される。別の証券会社の担当者は「見知らぬ国に行く時ネット取引が一人旅としたらSMAはガイド付き」と例える。
ネット取引の急増は市場にも大きな変化をもたらしている。株取引は売り手と買い手がいて初めて成り立つ。プロなら扱わない株に素人が手を出すことが増え、プロは狙い通りに売買しやすくなったという。このため海外の投資家も呼び込み、株価を押し上げる。中堅証券のトレーダーは「ありがたい話」と歓迎する。
乗り遅れたくない人たちの心理が空前の株ブームに拍車をかける。
午前10時
福岡さんは週1回のアルバイトに出かける。自転車で1時間ほどかけて近所のマンションや団地にフリーペーパーを配達する。収入は月に1万円にもならない。
「株は毎日どきどきしますね。場がない土日はほっとするんです」
この日、東証1部の売買代金は史上初の4兆円台に乗せる大商いになった。
◇所得格差が今後拡大と考える人は約7割…毎日新聞世論調査
所得格差が今後拡大すると考える人は約7割に達することが、毎日新聞が昨年12月に実施した世論調査で分かった。親の所得など家庭環境によって、子供の将来の職業や所得が左右される「格差社会」になりつつあると思う人は6割を超えている。収入低下で生活が困難になると予測する人が2割以上もおり、格差拡大への不安が広がっている現状が浮かんだ。
今後の所得格差の予想を尋ねたところ、71%が「拡大する」と答えた。「変わらない」は18%、「縮小する」は6%にとどまった。
日本が格差社会になりつつあると思う人は64%を占め、思わない人(30%)の倍以上に達する。74%が格差拡大を問題と考えており、「問題でない」(21%)を大きく上回った。
今後の収入については66%が「生活に困らない程度の収入は得られる」と答えたが、「生活に困るようになる」も24%に上った。「高い収入を得られるようになる」は4%しかなかった。
社会全体を「上」「中の上」「中の下」「下の上」「下の下」の五つに分けたとき、自分の生活程度がどこに入るかを尋ねたところ、「中の下」が48%で最も多かった。「中の上」が26%、「下の上」が15%で続き、この三つでほぼ9割を占めている。
同じ質問をした1968年以降の計21回の調査と、ほぼ同様の結果となっている。生活程度の実感からは、以前と同じ「総中流」が続いていることになる。
しかし、世帯年収1000万円以上の人の39%が「中の下」と回答。300万円未満の人でも12%が「中の上」と答えるなど、客観的な所得水準と生活程度の認識が必ずしも一致しているとはいえない部分もある。
毎日新聞 2006年1月5日 17時04分 (最終更新時間 1月5日 18時00分)
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/tatenarabi/news/20060106k0000m040001000c.html