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http://www.sankei.co.jp/news/060104/morning/04na1001.htm
耐震偽装 悪習「丸投げ」 消費者にしわ寄せ
ゼネコン施工のはずが…実は木村建設
耐震強度偽装事件で、偽装マンション、ホテル施工主のゼネコンが工事を木村建設(熊本、破産)に「丸投げ」していたケースが少なくとも二十件あることが分かり、問題化している。居住者らからは「大手ゼネコンが施工主だから信用したのに」との批判が強まるが、民間工事では丸投げは禁止されておらず、利益を分け合う「業界の慣習」がまかり通ってきた。丸投げが偽装を拡散し、責任の所在をあいまいにしている実情に加え、消費者に正確な施工情報が伝わっていないことを問題視した国土交通省は、実際の施工者の明示を義務付けるなど制度改正の検討に入った。
≪2割超も≫
国交省の調べでは、姉歯秀次元建築士(48)による偽装物件八十九件のうち約半数を木村建設が施工していた。名義上は別のゼネコンでも、木村建設に丸投げされていたケースが少なくともマンション十三件、ホテル七件の計二十件あった。偽装の二割超が“丸投げ物件”だったわけだ。
「中間搾取を招く」とされる丸投げは、公共工事では入札契約適正化法などで禁じられている。公費の割高支出を招くからだ。しかし民間では、建設業法で発注者(建築主)が書面で承諾すれば可能と規定。元請け業者は施工監理に立ち会うだけでいい。労せずして工事実績と中間マージンを得られるわけだ。
丸投げ二十件の実態をみると、いずれもゼネコンは元請け金額の3%前後を差し引いたうえで、木村建設に一括下請けさせていた。
≪「魔法」≫
JR西日本の関連会社が建築主となり、業界大手の大林組(東京)が施工者となった大阪市内のホテルの場合、元請け額は約十六億九千七百万円。丸投げされた木村建設の下請け額は約十六億五千八百万円で、差額の約三千九百万円がマージンとして大林組に流れたことになる。
「丸投げほど楽でもうかる仕事はない。業界にとっては八方が丸く収まる魔法のようなもの」。ゼネコン関係者はそう言い切る。
ゼネコンの看板は建築主にとってもメリットが大きい。大手の信用度によって顧客を集められるからだ。
偽装物件のうち、デベロッパーのヒューザー(東京)が建築主となったのは、判明分だけで分譲マンション七件(前身会社分も含む)。いずれも準大手ゼネコンが名目上の施工者になりながら、実際は木村建設が工事を行っていた。
下請けはゼネコンからの丸投げで、大型物件を受注できるようになる。木村建設は時代に即した「経済性」を謳(うた)い文句に丸投げを受け、業績を伸ばしてきた。ヒューザーなどデベロッパーは「持ちつ持たれつ」で丸投げを容認してきたとみられている。
≪法改正へ≫
問題は消費者が丸投げの実態を知らされないまま、マンション購入の判断を強いられることだ。
建築主や施工者の看板・ネームバリューは、マンション選択の大きな物差しになりやすい。にもかかわらず、丸投げの有無はおろか、実際の施工業者の情報が消費者に示されることがない現状は、消費者の側が「だまされた」と感じても致し方ないものだ。「一生に一度の買い物」ながら、重要な情報を隠されたまま判断を強いられることになる。
偽装事件は、限られた情報の中で選択を強いられた消費者に、負担のしわ寄せが行っているマンション売買の実態を浮かび上がらせることになった。
国交省は、丸投げが消費者不在を招いている現状や、責任の所在があいまいになることを問題視。実際に施工した業者名を表示する仕組みのほか、建築主を含めた責任のあり方などについて再検討し、必要に応じて法令改正に踏み切る方針を固めた。