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2005/12/28
http://www.janjan.jp/special/0512/0512250859/1.php?PHPSESSID=cc85c774d8c0f0a3f71ced76daaec75f から転載。
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―さっそくですが、今日は、耐震偽装問題について先生のお話をお伺いしたいと思います。
先生は、「住宅貧乏物語」などを著し、以前から住の貧困を訴えられ、「日本住宅会議」を設立され、さまざまな運動もされてきました。阪神大震災の時は、住宅再建への個人補償を求める運動に東奔西走されました。常に、公的住宅政策の重要性を訴えられてきたものと思います。しかし、政府の住宅政策は、まったく逆の方向をたどり、公的住宅政策からどんどん撤退し、現在に至っています。そして、1998年に建築基準法を改定し、民間企業でも建築確認ができるようにした、そのことが今回の事件の背景にあると思うわけです。
先生は、今回の事件に怒り心頭ではないかと思いますが、そのへんのところからお話をお伺いしたいと思います。
早川和男さん
堤 和馬さん
●公的住宅政策からの撤退と規制緩和が背景
早川:今、堤さんが指摘されたように、二つの柱があると思います。公的住宅政策から撤退して市場原理にもとづく住宅取得に内在する問題。もうひとつは、中曽根内閣からはじまる新自由主義の政策の波のなかでの、建築確認の民営化。民営化・規制緩和の問題があると思います。
最初の公的住宅政策からの撤退の問題は、あまり指摘されないが私は重要だと思っています。今回の問題は、以前から起こっている欠陥住宅問題の一環だと思っています。
日本の公営住宅に住むには、相当高い倍率に当たらなければならない。しかも、所得制限がある。家賃も高い。公団住宅(都市再生機構)の家賃も高いですね。だから、持ち家・分譲マンションに向かわざるを得ない。安くなければ買えないし、売るほうも競争があるので安く造って売る。
以前からある欠陥住宅問題というのは、「床が傾いている」、「雨漏りする」、「雨戸が閉まらない」、「カビが生える」とか深刻な問題で、それが広がっている。
欠陥マンションも同じことだが、その間に強度計算や建築確認申請などの複雑な要素が入り込んでいる。だから別の特殊な問題のように思われている人もいるが、本質は同じことです。私は、この問題は、市場原理の住宅政策。自助努力の住宅政策の産物だと思っています。この点は、皆あまり言わないのが残念ですが。
もう一つは、民営化・規制緩和の流れです。政府は、都市計画の用途規制にしてもどんどんと規制緩和をやってきました。その一環として建築基準法を改定して、建築確認の民営化といいますか、民間企業でもできるようにしたわけです。小泉首相は、「民でできることは民で」といいますが、基本的に民にできないことを民に任せているというのが実態だと思います。
私たちは、これは問題だと言ってきました。しかも、今回の事件でわかったことは、監督官庁・自治体の職員が確認される側に天下っていることです。これでは、なれあいも起こるし、予想されたわけです。この二つの問題が重なり合い、起きていると考えています。
―そういう観点でのテレビ・新聞等の報道はほとんどないですね。
早川:だれも強調しない最初に言った公的住宅政策についてですが、そのことについて、もう少し言わせていただくと。
今回の事件の背景は、自助努力、市場原理の住宅政策の一環で建売住宅にあらわれている、欠陥住宅と本質的には同じことで、その現れ方が違うだけだと言いました。この問題を抜きに、建築確認の問題だけに絞ってしまうと建築確認を元にもどして、国や地方自治体にやらせば解決するのか、ということになります。そうすれば、値段が高いマンションしかできなくなります。
安くて良質な公的賃貸住宅がないから、民間の持ち家、マンションを買うことになり、高い家賃やローン地獄を生み出している。本質的に住宅問題を解決することにならないわけで、住宅政策と規制緩和の問題を両方指摘していくことが重要だと考えます。
―なるほど、公的住宅政策の問題について、論評するものはほとんどありませんよね。
映像配信も一緒にご覧ください:
耐震偽造問題をどう見るか 早川 和男(神戸大学名誉教授・長崎総合科学大学教授)氏に聞く
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●早川和男さんプロフィール
1931年奈良県生まれ。京都大学工学部建築学科卒。工学博士。旧建設省建築研究所を経て、神戸大学工学部教授。同名誉教授。現在、長崎総合科学大学教授。日本居住福祉学会会長。神戸市在住。
著書「住宅貧乏物語」、「居住福祉」、「居住福祉の論理」、「人は住むためにいかに闘ってきたか」、「学問に情けあり」など100冊以上。
1982年「住宅は人権」を掲げ、故大河内一男氏らと「日本住宅会議」を設立し、初代事務局長。行動する学者と呼ばれた。阪神大震災のとき、住宅再建への個人補償を求め、東奔西走。
●聞き手 堤 和馬(ジャーナリスト)
1954年生まれ。明治大学政経学部卒。国民金融公庫労組を経て、特殊法人労連事務局長。ゼネコン汚職事件当時から「官僚天下り問題研究シリーズ」(労組調査)や「天下りを禁止させるための提言」などを発表。2001年退職。現在、フリージャーナリスト。
著書「官僚天下り白書」、「巨大省庁天下り腐敗白書」、「特殊法人解体白書」など。
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耐震偽装を問う
特集「これはもう政治家・官僚による詐欺、収奪だ」