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中国新聞2005年11月27日 解説記事
米艦載機岩国移転での騒音問題
NLPの定義まず把握を
夜間・LSO配置で通告義務 住民意識とズレも
米海軍厚木基地(神奈川県)から米海兵隊岩国基地(岩国市)への空母艦載機部隊の移転をめぐり、夜問離着陸訓練(NLP)の行方が焦点になっている。米軍再編「中間報告」によると、ジェット機のNLPは従来通り、原則として硫黄島(東京都)で行うとしている。しかし、ジェット機によるNLPがなければ、岩国基地で大きな騒音問題は発生しないのだろうか。NLPとはどんな飛行訓練なのか、その定義を厳密にとらえておく必要がある。(編集委員・山本浩司、写真も)
艦載機の空母着艦は、飛行甲板に張ったワイヤに、機体後部のフックを引っかけて行う。捕らえ損ねた場合は、そのまま飛び立って着艦に再びトライする。
米軍はパイロットにこの着艦技術を維持させるため、昼夜を問わず陸上で行うタッチ・アンド・ゴーなどの訓練をFCLP(フィールド・キャリア・ランディング・プラクティス)と呼んできた。NLP(ナイト・ランディング・ブラクティス)という言葉が使われ出したのは、夜間の着艦訓練による騒音が問題になり、昼間のFCLPと区別する必要が生じたためこ考えられる。
空母の出航前に
パイロットは空母出航日の七日前以内に、四十五分(タッチ・アンド・ゴー八-十二回)のNLPを最低四回、終えておくよう求められている。この条件を満たすため、空母の出航が近づくとNLPが頻繁に行われる。
通常、日没後から午後十時ごろまで行われるNLPでは、艦載機パイロットから選ばれた着艦信号士宮(LSO)と呼ばれる担当者が滑走路横に立ち、それぞれのパイロットの技量を判定する。
滑走路の照明を消して飛行甲板と同じ大きさの範囲を別の照明で浮かび上がらせ、二-四機が一定の間隔を保ちながら旋回、進入。滑走路に車輪が接地した直後にエンジンのパワーを上げて上昇するタッチ・アンド・ゴーを繰り返す。周辺にはすさまじい騒音が響き渡るため、米軍は事前に訓練の実施を地元に通告することになっている。
このように夜間にLSOを置いた訓練を、事前通告義務を伴うNLPとして、日本政府と在日米軍が定義づけていることに注意する必要がある。原則として硫黄島で行うNLPとは、これらの条件を備えた訓練に限られるのだ。
昼は「通常訓練」
では、全く同じ内容の訓練でも、昼間に実施さ、れる場合はどうなのか。また夜間でもLSOのいないタッチ・アンド・ゴーは、岩国で実施されないのか。
LSOを配置した着艦訓練でも、昼間に実施される場合はNLPと区別.され、通常の訓練として扱われる。LSOのいない夜間訓練も「通常訓練」である。つまり、いずれも今後、岩国基地で実施されても文句を言うことはできない。事前通告も、米軍の善意によって行われるだけだ。
一定レベルの技量に達しないと空母に乗り込む資格を失うパイロットは、その資格を取得するためのNLPが近づくと、他の訓練を終えて基地に着陸する際、何回もタッチ・アンド・ゴーを繰り返してカンを取り戻そうとする。機体の動きも騒音も着艦訓練そのものだが、それに歯止めを掛けることはできない。
岩国基地では過去にNLPが行われてきた。空母ミッドウェーが横須賀を母港にした一九七三年から、NLPはまず米軍の三沢(青森県)、岩国の両基地で始まった。その後、八二年から厚木基地でも行われるようになり、硫黄島にNLP施設が完成した九五年までは厚木が訓練のメーン施設であった。岩国では二〇〇〇年九月以降、通告を伴うNLPは実施されていない。
しかし〇二年三月七、八の両日、夕方から夜にかけて厚木から飛来した艦載のプロペラ輸送機、C2Aが突然、岩国基地でタッチ・アンド・ゴーを繰り返したことがある。「通告なしのNLPだと周辺住民は反発したが、基地側は「訓練時に」LSOはおらず、事前通告の必要のない通常訓練だLと回答。市は抗議しなかった。厚木で苦情続出同じようなことは当然、厚木基地でも起きている。米同時多発テロ発生麿後の〇一年九月十五日、空母キティホーク艦載機が着艦訓練と見て取れる訓練を前触れもなく昼夜にわたって始めた。十八日まで連日行われ、周辺住民からの苦情は延べ千件にも達した。しかし、地元自治体の公式記録には、十五日から十八日までNLPが実施されたという記述はない。
岩国基地への艦載機部隊は、沖合滑走路が完成する〇八年以降となる。滑走路は、現在より一キロ沖台へ移転。市街地への騒音の広がりがどうなるかは未知数だ。しかし、空母艦載機と一緒に、これらの「通常訓練」が岩国にやってくることは間違いない。
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米軍再編と岩国基地厚木基地から移転するのは、米海軍横須賀基地(神奈川県)を事実上の母港とする空母キティホークの艦載機約70機のうちFA18ホーネット戦闘攻撃機、EA6Bプラウラー電子戦機、E2C早期警戒機合わせて57機。これに伴い厚木からは米軍兵士1600人が移駐する。プロペラ機であるE2C機4機の夜間離着陸訓練(NLP)は一岩国で実施される。日米共同使用の岩国基地からは、海上自衛隊のEP3電子戦データ収集機、OP3画像データ収集機、UP3D・U36Aの両訓練支援機計17機と隊員約600人が厚木に移る。また、地元が要望していた岩国基地の軍民共用化で、1日4便の民間機就航が決まった。
写真 厚木基地で白昼、突然タッチ・アンド・ゴーを始めたキティホーク艦載のE2C早期警戒機。岩国への移転後、NLPを岩国で実施することが明らかになった機種だ(5月18日、午後1時半すぎ)