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派遣社員の長男の事故死 両親が賠償を求めて提訴
2005年11月10日00時41分
派遣社員の長男が派遣先の工場で作業中に死亡したのは、工場側が安全対策を怠ったためだとして、両親が9日、工場と人材派遣会社に1億4200万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。派遣社員が事故に遭った場合、派遣元や派遣先はどう責任を負うべきなのか――。派遣社員となる若者が増える中、安全への取り組みが遅れている実態が浮かび上がっている。
訴えたのは山梨県に住む飯窪慎三さん(56)と可代美さん(53)。
長男の修平さんは神奈川県相模原市の人材派遣会社に雇用され、03年7月29日から同市内の製缶工場に派遣された。脚立の上に立ち、ベルトコンベヤーで流れてくる缶をチェックする仕事だった。
4日後の8月2日正午過ぎ、作業中に脚立から落ち、機械に頭を打って倒れた。22歳の誕生日の翌日だった。病院に運ばれたが意識は戻らず、11月8日に亡くなった。
「なぜ息子は死ななければならなかったのか」
両親は工場に、じかに説明を求めた。だが、話し合いの窓口になったのは雇用関係のある派遣会社。工場の業務に詳しくなく、納得のいく説明は得られなかった。
今年3月、派遣社員の労災自殺をめぐる訴訟で、派遣先の責任を認める判決が東京地裁で出た。両親はこの裁判を知り、原告側代理人だった川人博弁護士に相談。提訴を決断した。
慎三さんは「息子は前日の電話で『落ちそうで怖い』と話していた。同じような事故が起きないよう、派遣先がしっかりと安全管理に取り組むよう訴えたい」と話す。 工場は「訴状を見ていないのでコメントできない」。人材派遣会社は「事故は残念だが、できることはやってきたつもりだ。弁護士と相談して対応する」としている。
◇ ◇
厚生労働省によると、派遣労働者の数は94年からの10年間で約58万人から約236万人と4倍以上に増えている。安全面などから禁止されていた製造業への派遣も昨春、解禁され、ますます増える見通しだ。経費削減のため業務の外部委託(アウトソーシング)を図る会社は増え、人材派遣業界は急成長している。
一方で、労働環境の整備は十分とは言えないようだ。今回の事故について、相模原労働基準監督署は労災と認め、「脚立を使わない」などの安全指導をしたが、指導先は工場ではなく、派遣会社だった。派遣会社は両親に示談を申し入れたが、工場は賠償に応じる構えは見せていない。
厚労省の検討会は04年にまとめた報告書で、「就業形態の多様化、雇用の流動化により、安全配慮義務を負うべき範囲があいまいになっている」と指摘した。同省労働基準局は、派遣社員の労働環境の実態を調べる準備を進めている。
http://www.asahi.com/national/update/1109/TKY200511090424.html