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今月3日、福岡市博多区の特定郵便局に包丁を持った女が押し入り、現金約100万円を奪って逃走する事件が起きた。福岡県警本部に近い官庁街で、白昼堂々の女の単独犯行に捜査関係者に衝撃が走った。が、女強盗が全国で急増中であることは意外に知られていない。警察庁によると、最近10年間で3倍近くに増え、とりわけ福岡県は4.5倍と、全国でも突出しているのだ。【松本光央】
■慌てず手際よく
「金をつめろ!」。3日午後3時40分ごろ、博多区千代の博多栄町郵便局で、駆け込むように入ってきたサングラスの女が一気にカウンターを乗り越えた。窓口の女性職員にタオルで包んだ包丁をちらつかせ、「早くしろよ」と執ようにせかす。職員が現金入りの茶封筒を差し出すと奪い取り、慌てる様子もなく、手際よく裏口から立ち去ったという。
30歳前後の長髪で身長約160センチ。ジーンズ姿で帽子をかぶっていた。近所の女性が裏口から出てきた女とすれ違ったが、「強盗とは全く気付かなかった」と言うほど堂に入っていたという。
福岡県内では7月にも女の郵便局強盗が起きている。直方市溝堀の特定郵便局に押し入ったのは近くの会社勤務の女(59)。窓口の女性職員に包丁を突きつけ「お金をください」と迫ったが、居合わせた男性(57)に取り押さえられ、直方署に突き出された。洋服を買いあさるなどの浪費癖があり、消費者金融の返済に困ってのことだった。
■全体でも2倍に
相次ぐ女強盗の出没に、県警幹部は「たった一人で郵便局を狙うなんて……。最近の女はすごい」と絶句する。しかし、「犯罪白書」などによると、強盗容疑で逮捕された女は84年が116人だった。10年後の94年は109人と大した変化はなかったが、02年になると279人、03年は304人で2.5〜2.8倍に増えた。
強盗容疑の全体の逮捕者は、94年の2372人から03年は4698人と約2倍に増加。女の容疑者も連動して増え続けているが、その比率は94年の4.6%から03年は6.5%と上がっている。ここ10年間の推移を見ると、決して珍しくなくなっているのだ。九州全体では11人(94年)から31人(03年)とやはり3倍。中でも福岡県は4人から18人の4.5倍と突出している。
この傾向について福岡県警の捜査幹部は「福岡の街に、女性の犯罪心理をかきたてるものがあるのかもしれない。しかし、それが何なのか皆目分からない」と首をひねる。
■「心すさむ時代」
犯罪心理に詳しい福島章・上智大名誉教授も「暴力的な犯罪は男性が圧倒的に多く、女性による金融機関強盗などは非常に珍しい」と指摘。そのうえで、多発の背景を「近年、女性の社会進出で性差がなくなったうえ、ギャンブルや買い物依存症に陥り、消費者金融を抵抗なく利用する女性も増えてきた。返済に追われるなど生活が立ち行かなくなり、荒っぽい犯罪に手を染めているのではないか」と分析する。
一方「殺伐とした今の世の中ではあり得る」と話すのは、受刑者の同人誌「獄同塾通信」を編集する大場知子さん。女性犯罪にも詳しい大場さんは「女性の間では家庭や子どものことでつい競い合い、揚げ句の果てに人間不信に陥り、さらに買い物依存症の症状を訴えだす傾向がある。心がすさんでいる時代を背景に女性犯罪は今後も増えるのでは」と言う。
毎日新聞 2005年10月25日 15時11分 (最終更新時間 10月25日 17時24分)
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20051025k0000e040082000c.html