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特集WORLD:政界、05年回顧と06年の読み方−−山崎氏・平野氏、紙上対談
◇憲法改正のためには連立も−−山崎氏/代表選出馬は小沢さんの責任−−平野氏
郵政民営化に揺れ、総選挙・小泉劇場に踊った05年の政界。小泉純一郎首相の盟友、山崎拓・自民党前副総裁と、小沢一郎・民主党前副代表の知恵袋、平野貞夫・前参院議員は、この1年をどう振り返り、06年をどう読むのか。松田喬和・専門編集委員を聞き手に、紙上で対談してもらった。【構成・太田阿利佐】
−−政界の今年最大の出来事といえば?
山崎 やはり選挙でしょう。自民党の勝因は、争点を郵政民営化というシングル・イッシューに絞り切ったことだろう。小泉劇場と言われますが、改革の是非を問う選挙にしたことが、はるかに核心部分でしょう。
平野 私は、今年は日本の議会政治が崩壊した年だと思う。参院の機能は衆院の行き過ぎをチェックし、不足部分を補完すること。だから郵政民営化法案の参院での否決を理由に、衆院を即解散したことは2院制の独立を侵した。
議会制民主主義では、衆院解散は国政全般について国民に信を問うべきだが、小泉首相は郵政解散を郵政民営化法案に対する国民投票と位置付けたことも問題だ。
−−自公で衆院の3分の2を超えて「05年体制」とも呼ばれます。
山崎 これは一時的な出来事であって、長続きしません。シングル・イッシューで勝ったんですから、次とは言わないが、いずれシングル・イッシューで負ける。これは小選挙区制度の一つの法則。小選挙区制では劇的な政権交代さえありえる。
平野 自民党の勝因は「小泉改革、ええじゃないか」という一時的な集団異常心理現象だった。一方、民主党の敗因は、根本的には党の構造的な問題です。
今の執行部は、自民党や官僚と同じレベルで話をすることが政権交代への道と考え、対案路線を進んでいる。本来はしっかりした国家観、理念を持ち、必要に応じて対案を出し、時には徹底抗戦すべきなんです。国家観がないままに対案路線を進むから、小泉ペースに入ってしまう。
−−小泉さんの「改革路線」に対抗するには?
平野 構造改革は、現代の状況をどう見るかという歴史観と、どういう社会を目指すかという哲学の問題。小泉さんは竹中(平蔵総務相)さんの操り人形で、米国の市場万能主義を構造改革と称しているだけだ。小泉さんには、国家像や基本理念という鉄筋がない。いわば欠陥マンションです。
厳しい情報社会で、市場万能主義の競争で勝ち組、負け組を作っていたらこの世は地獄です。だから、官と民の境はどこにあるべきなのかという「鉄筋」がいる。小泉政治には、それが見えないことをしっかり追及する必要がある。
■自・民大連立
−−しかし、現在は「大連立」の話まで急浮上しています。実現可能性は?
山崎 私の言う大連立は、憲法改正に必要だからだ。改憲のための政策部分連合でもいい。政権に入らない部分連合でいいなら、これは自民党にも結構なこと。俗な言い方をしても、大臣の席を割譲しなくて済む。
平野 大連立は、秋まで小泉政権を維持し、国民に話題を提供するという小泉さんの戦略でしょう。大連立は、国がつぶれるような国難に対応するために限定して行うもの。与野党が互いに対立する理念を持ち、政権を競うのが政治の常識です。大連立なんてふざけるな、と民主党は怒らないといけない。ただ民主党には、明言はしないが小泉さん、竹中さんの発想に共通するものを持つ人たちもいて、彼らは一種の再編を期待しているのでしょう。でも、そう真正面からは言えないから「大連立」と言うのだ。小泉さんはそれを分かっていて、冷やかしているのではないでしょうか。
−−防衛・安全保障の政策面では、最近の前原誠司・民主党代表の発言が、自民党より右寄りだとも言われます。
山崎 中国の軍事力を「現実的脅威」と発言しましたね。冷戦時代、日本は極東ソ連軍を「潜在的脅威」と呼びました。脅威となりうる実態はあるが、侵略の意図が不明だったからです。これが政府の公式見解。「現実的脅威」であれば、公式見解としては中国に侵略の意図があり、日本も対処が必要となる。中国の軍事力は極東ソ連軍とはスケールも違う。中国が反発するわけです。
日本では一部で中国への反感が高まっているが、ナショナリズムの方向に国民を誘導するのは、たとえ野党の党首でも許されません。「とにかく言うべきことを言ったから素晴らしい」と称賛するのは間違いです。むしろ、国民の怒りや不満というものが諸外国と衝突を起こさないように調整するのが政治ですから。
平野 「現実的脅威」は、満州事変直前に使われたような言葉です。彼は防衛・外交の専門家。言葉を知らないで使っているとは思えない。党首なのだから「言葉足らずだった」では通用しません。
■靖国問題
−−小泉首相の靖国参拝問題も近隣諸国との緊張を高めています。山崎さんは、超党派の議員連盟「国立追悼施設を考える会」の会長ですが、この会は政界再編の土台になるんでしょうか。
山崎 まあ、結果として国立追悼施設の建設問題も含め、憲法改正、近隣外交のあり方、これは靖国問題も惹起(じゃっき)していますが、そういった問題が、少なくとも次の自民党総裁選の争点になり、新政権後のテーマにもなると思います。その後は超党派的な問題点にもなるでしょう。
10月の小泉首相の靖国参拝で、日中首脳の相互訪問だけではなく海外での日中首脳会談もダメになり、公明党が突出して国立追悼施設建設の調査費を求めるようになった。そこで公明党に「わが党の半分、民主党も半分ぐらいくれば一大勢力になるんじゃないですか」と。冬柴(鉄三・公明党幹事長)さんと鳩山(由紀夫・民主党幹事長)さんと3人で「超党派の方が良い」となった。
国民世論的に見ますと、靖国神社への参拝を是とする者と、非とする者はだいたい半々で、国論の分裂を招くような話になってしまう。靖国に祀(まつ)ってあるのは、太平洋戦争の戦没者まで。その後、PKO活動やイラクでの外交活動など国事のために亡くなった方は祀っていない。そういう方への追悼の場はない。ですから国立追悼施設の建設は、内政上の課題として厳然としてある。
■総裁選と代表選
−−来年秋には自民党総裁選がある。どうされますか。
山崎 私は全く白紙です。年が明けるまでは思考停止でやって、来年6月までには対応を決断します。
外交、内政万般にわたる政治の安定が求められるようなら、成熟した政治家が良い。選挙に勝つために国民受けのいい人を顔に選ぼうとすれば、若い世代の代表が好まれる。それが時勢でしょう。
次の総裁には、靖国参拝問題で大きなプレッシャーがかかるでしょう。「小泉さんが行ったのに」というのと、その逆もさらに強い。党内の意見も二分される。だからリーダーシップは安定しないと思います。
平野 私は、民主党よりも自民党の中に深刻な対立が起こっていると思います。谷垣(禎一財務相)さん、与謝野(馨金融・経済財政担当相)さんは「人間のきずなが大事」というのに対し、市場万能主義者たちもいる。消費税の議論の行き着く先は、結局は福祉目的税にするかどうかだ。竹中さんは公的健康保険制度をやめて、米国からの資本流入が可能な民間保険制度を入れようとしているから、目的税導入は困るんです。でも、根本は日本人の健康をどう保てるかという問題です。
−−来年9月に予定されている民主党代表選はどうでしょうか。
平野 前原再選はすっきりいかないのではないかと思う。
−−小沢一郎さんは代表選に出ると思いますか。
平野 つい最近も財界OBと話したが、今の暗い社会を変えるため、小沢さんは民主党代表選に出る責任がある、という話になった。
小沢さんが日本を変えるために政治家をやっている以上、秋の代表選は小沢さんにとって最大の、そして避けて通れないチャンスになるでしょう。
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■人物略歴
◇やまさき・たく
72年に衆院選初当選。防衛庁長官や建設相を務め、党では政調会長、幹事長、副総裁を歴任。03年総選挙で落選したが、今年4月の補選で返り咲き当選12回。
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■人物略歴
◇ひらの・さだお
衆院事務局委員部長から、92年に参院選に出馬し初当選。自民党から以後、新生、新進、自由の各党を経て民主党に移り、昨年引退するまで2期務めた。近著に「亡国」(展望社)。
毎日新聞 2005年12月19日 東京夕刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/tokusyu/wide/
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