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日米関係を国民の手で再構築する時が来た
ちくま新書から元外交官の原田武夫が書いた面白い本が出た。「騙すアメリカ、騙されるアメリカ」という本である。彼が一人で書いたのか、それとも何人かのスタッフが手伝って書いたのかわからない本だ。しかしそこには極めて面白い視点が指摘されている。
世上よく指摘されている事は、小泉、竹中は米国の手先になって日本経済を米国に差し出している、その根拠に一つに小泉、竹中がやろうとしてきたことは、米国が毎年日本に突きつけてくる「年次改革要望書」の内容がまさに小泉改革そのものではないかという指摘がある。この点については関岡英之が「拒否できない日本」（中公新書）でいち早く見抜いていたところである。
今私はここでその実態を検証するつもりはない。仮にそうだとしても、竹中はともかく小泉にそのような米国の深謀遠慮を理解する能力はない。ただ操られているだけである。
原田が指摘する米国側の戦略は私は当たっていると思う。その認識から我々は出発すべきだ。すなわちこういうことだ。
かつて米国は貿易摩擦で徹底的に日本に圧力をかけた時があった。しかしある時点からこの貿易戦争はパッタリ終わった。貿易戦争のときは日本の官僚は徹底的に抵抗した。米国は戦略を変えた。日本は訳のわからない国だ。理解できない国だ。官僚の抵抗は度しがたい。そこで日本を構造改革して米国に都合の良い国にしてやろう。これは俺たちにとって都合の良いことであるが、日本の国民にとっても良いことなのだ。官僚に牛耳られた理解の出来ない日本をグローバルスタンダードの国にする、これは日本国民も支持するだろう。米国が日本に圧力をかけて日本国民に嫌われるよりも、陰に隠れて日本人を使って改革を進めたほうが手っ取り早い。三文芝居の脇役は小泉や竹中が喜んで演じるだろう。国民に抵抗勢力は悪者であると信じ込ませればいいのだ。日本国民の反発を招かずに、日本を改革することによって真っ先に米国が儲けさせてもらえばあとはどうでも良い。「利益確定」すればよいのだ。その最後の目的が郵貯、簡保の３５０兆円の国民の金だ・・・簡単に言えばこういうことである。
こんなことは既に多くの人が指摘しているし目新しいことではない。しかし私が原田の本で面白かったのは次の指摘である。そしてこれがこの本の私が注目する結論部分なのである。私なりに彼の言葉を言い換えるとこういうことだ。
「・・・日本人の誰と話してもみんな仕方がない、米国のいう事に従わざるを得ない、黙って従った方が得だと、諦めているようだ。我々はもはやアメリカが書いた日本搾取のシナリオから逃れられないのだろうか。
いや諦めるのはまだ早い。その方法が一つだけある。唯一の反撃は、米国の書いたシナリオの『番狂わせ』を行うことだ。それが出来るのは政治家でも役人でも日本の企業でもない。唯一それが出来るのは我々一人ひとりの日本人だ。米国が日本政府を通じて掠め取ろうとしている我々の金を、我々が自分で管理し、運用すればよいのだ。郵貯、簡保の金を引き出そう。銀行や投資会社に預けたり運用したりする金を引き出して自分で運用しよう。米国の国債なんかに自分の金を使わせないようにしよう。米国の投資会社に設けさせないようにしよう。ついでに増税という形で日本政府に我々の金を吸い上げさせることを辞めよう。それが米国に持っていかれるのだから。自分で自分の金を運用することはリスクをともなう。勉強する必要もある。しかしそんなことはちょっと勉強すればだれでも出来ることだ。自分の金は自分で使おう。外資系ファンドや投資会社のカモになるな。外資系ファンドや投資会社の下請けをしているような日本の金融会社に自分の大切な金を任せるな。米国の権力者が日本政府を使って我々の金を奪おうとしても、我々が自分の金を金融会社に渡さなければ、さすがの米国も我々個人の金を力ずくで奪うことは出来ないのだ。これこそが米国の書いたシナリオを突き崩す唯一の方法だ・・・
私は米国の日本経済搾取に着目したこの原田の指摘は面白いと思った。しかしもう一つの日本搾取があるのだ。それは憲法９条を変えて日本を米軍の協力者にすることだ。日本の米軍基地を強化、固定化することだ。
このシナリオを崩せることが出来るのも唯一我々国民の一人ひとりの気持ち次第だ。もう一つのシナリオ崩しである。日米同盟強化のシナリオを我々の手で「番狂わせ」させることだ。すなわち主役米国、脇役小泉で演じられようとしている米軍再編のシナリオを我々の手で狂わせるのだ。それはその気にさえなれば簡単なことだ。政府がどのような約束を米国としようが、「住民が米軍基地を受け入れない」と最後まで反対を貫けばシナリオ通りにはならない。知事や、市長が権力に毒饅頭を食らっても、住民がその知事をリコールしてしまえばそれまでだ。
政府が如何に巧みに憲法９条を変えようとしても、国民の半数以上が国民投票で反対すればどうのもならないのだ。
米国は、日本政府を使って必死になってシナリオ通り事を運ぼうとするだろう。しかし国民が反発すれば米国は脆い。ベトナム戦争を見よ、イラクの現状を見よ。
我々が武装抵抗で米国と戦うのではない。もっと平和で、もっと巧妙に抵抗するのだ。
いやー、米国は越をぬかすだろうなあ。日本国民が気づきやがったと。そういう自覚に目覚めないように必死に情報操作をするだろうな。第二、第三の小泉を見つけ出すだろうなあ。
しかし不特定多数の日本の国民を支配することは出来ない。我々がしっかりしていればどうすることも出来ない。
我々はここで冷静によく考えてみようではないか。我々が汗水たらして貯めた金も、我々が親からもらった大切な命も、守るのは我々だ。それは当たり前のことだ。こんな我々の人生を米国の手先になって脇役を演ずる大根役者、小泉ごときに奪われてたまるものか。我々がお互いに喧嘩しているときではない。我々をバラバラにさせるのは分割統治の植民地支配の典型だ。その手に乗ってはならない。日本国民は意見が異なっても、この点だけでは団結するのだ。
この当たり前の事に我々が目覚めることが出来れば、どうにもならないと諦めていた米国への従属の鎖が、一瞬にしてバラバラにちぎれ、砕けてしまうのだ。これこそ日本の改革である。いやそれこそがもっとも強力な、かつて日本になかった市民革命なのである。
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