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「特権階級側の政策」 ビル・トッテン
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投稿者 外野 日時 2005 年 11 月 10 日 22:20:09: XZP4hFjFHTtWY
 


日本海新聞 2005.11.03
http://www.nnn.co.jp/rondan/tisin/051103.html

温故知新 −ビル・トッテン−

大衆が手を取り合い変化を

2005/11/03の紙面より

 この夏、わが社は地球温暖化防止策として冷房温度を二八度に設定するための夏服を導入したが、それに合わせて「チーム・マイナス6%」というプロジェクトに参加した。日本政府は京都議定書で温室効果ガス6%の削減を約束したが、これはそれを実現するためのプロジェクトの一つである。

          グループから国家へ

 地球環境という大きな相手に対して個人でできることは限られている。しかし小さなことでも一人一人が力を集結すれば大きな変化をもたらすことは確実だ。わが社の若手社員からチーム・マイナス6%の活動に参加しようという提案を受けたとき、実践することで変化を起こせることを気付いている彼らの思いに私は非常にうれしかった。エアコンの温度を控えたり水や電気を節約すること、移動には自転車や鉄道を利用するといった身近にできるわずかなことが、グループからコミュニティーに、そして国家規模に広がればそれは確実に効果を表すだろう。

 原油価格の高騰が続いており、これから冬に向かう日本では灯油価格の値上がりが予測される。環境省はオフィスの暖房を二〇度にすることを、今度は「ウォームビズ」として呼び掛けているというが、これは少し前の日本であれば自然に行われていたことである。米国の映画に見られるような、寒い冬の日に半袖シャツ一枚でもいられるほどの暖房を効かせるような暮らしは時代遅れなのだ。

          ピークオイルに直面

 数カ月前から米国金融機関のゴールドマンサックスは原油一バレル=百ドルになるというレポートを顧客に提供しているし、南米の産油国ベネズエラのチャベス大統領も同様の可能性を示している。サウジアラビアのアブドラ国王は、米テレビのインタビューに対して日量一千万バレル以上の原油を生産しているとし、また原油供給が七十年以上持つとする予測に言及して、サウジの原油資源が枯渇する心配はほとんどないとの見解を示したというが、この言葉をそのまま信頼することはできない。残り少なくなった原油をとるためには海水を注入するなど膨大なエネルギーと費用がかかるし、東南アジア最大の産油国であるインドネシアが石油純輸入国に転落するという事態も起きている。

 日本国内でもガソリン小売価格が上昇しトラック運送業界などは大きな影響を受け、農業や漁業、原油や石油関連業界にも影響が出ている。われわれの生活のほとんどが石油に依存していることを考えれば影響を受けていない業界を探すほうが難しい。しかし、いまだに「ピークオイル」について触れているメディア報道はほとんどない。政府が国民の安寧や幸福のために存在するのであれば、日本そして地球が直面しているピークオイルに対する政策に着手しているはずだが、残念ながらその気配はない。相変わらず米国の言いなりで十月には再提出された郵政民営化関連六法案が参院本会議で可決、成立した。

          特権階級側の政策

 現在日本で起きていることを見て分かるのは、政府が一般国民ではなく権力と資金力を持つ一部の特権階級のビジネスのための政策をとっているということだ。これが顕著なのは米国の歴史である。一八〇〇年代の労使紛争から北米自由貿易協定まで、政府がどちらの支援を行ったかといえば常に特権階級側であり、公正な賃金、八時間労働、子供労働法などは思慮深い政府が国民のために導入したのではなく、長い労使紛争の後に労働者に与えられた権利だった。しかしテレビや大新聞は日経、ニューヨークダウの株価といったエリート側の視点からのニュースは流しても、経営者と一般労働者の賃金の差がどれほど開いているか、ホームレスの統計や失業手当を失った人の数は報道しない。ニュースの多くは殺人事件や暴力犯罪で、それ以上に絶え間なくお笑いやドラマの洪水で物事を深刻に考えるのがばからしいことであるかのように人々の心をマヒさせていく。

 石油減耗の情報が広まらない理由の一つは、一部のエリートたちがピークオイルで自分たちが利益を手にするためである。エコノミストはエネルギー生産の減少は経済の縮小であることを知っており、それは現在の資本主義経済において崩壊を意味する。そしてマネーを操る人々は撤収の時を知っている。崩壊の時でさえクラッシュ前に最大の利益を手にするだろう。下落するドルを金に換え、暴落する市場を安全地帯から見物し、落ち着けば再び戻ってきて残ったものを奪うだろう。

 ピークオイルによって衰退または消滅する業界があることは避けられないが、エネルギーの減少に合わせて他者を犠牲にすることなくより公平で持続可能な社会を作ることは不可能ではない。それには一般大衆が手を取り合い、実践することで変化を起こせることに気付く必要がある。そのためにも、一方的に流される情報をうのみにしてはならないのだ。(アシスト代表取締役)

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