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失われた5年半―米軍再編という取り返しのつかない誤り
このまま、何事も起こらなければ小泉首相は来年の9月までこの国の首相としてとどまることになる。彼が首相になったのは2001年4月であるから、およそ5年半もの長い間になる。その間、彼は何か一つでも良い事をしてくれたか。何もない。
驚くべきことである。あれほどの人気を得ていながら、そしてあれほど強引な政治を許されていながら、まともな政策を何一つ実行しなかった。パフォーマンスを繰り返し、改革を叫んでメディアの露出度ばかりが目立ったが、政権末期の今になってふり返って見ると、まったく何もしなかったことに気づく。
しかし彼はその裏で実は大変な「負の遺産」を残そうとしているのだ。無能だが異形な政治家小泉が残す唯一の実績が、日本の戦後史に永久に残る「負の遺産」であるとしたら、これ以上の皮肉は無い。それは何か。米軍再編という名の「平時の日本占領」を許したことである。
太平洋戦争の敗戦によって日本が米国に占領されてから60年がたつ。歴代の首相は米国の絶えざる圧力の中にあって、それでも、その占領から少しずつ独立を回復しようともがいてきた。吉田にしても、岸にしても、佐藤にしても、その評価は分かれるとしても、従属と反米の間の中で葛藤しながら日本の自立と繁栄の為に自らの信念を持って努力を重ねてきた。政治家として当然のことである。
ところが小泉はまったく違う。戦後が過去のものとなった平和時において、しかも共産主義の脅威がなくなって久しい国際政治のパラダイムの中で、戦略も見識もないままに、ただ自らの政権保持の為だけに、米国の軍事占領を固定化させてしまおうとしているのだ。その責任は重大である。
今発売されている月刊誌「世界」の12月号で、「米軍再編の真実」という一連の記事が特集されている。これは日本国民が是非とも真剣に目を通すべき特集である。これは、平和主義者や反米主義者が喜んで読む記事ではない。むしろ保守主義者、愛国主義者、右翼の国民によって読まれなければならない記事である。そしてなによりも、米軍再編の名のもとに今何が行われているのか、関心も知識もない国民にこそ読んでもらいたい記事である。
どんな馬鹿でもわかるはずである。ここまで小泉はこの国を米国に売りわたそうとしているのだ。米軍再編はとは単なる在日米軍の引越しの話ではない。本来ならば削減、撤退されなければならない在日米軍基地の強化、固定化であり、日本の安全保障とはおよそ無関係な米国の軍事戦略に対する一方的な軍事協力なのである。それは平時における米国の日本軍事占領である。
「郵政改革、是か非か」の遊びは終わった。今こそ「米軍再編、是か非か」の国民的論議を起こす時である。小泉政権の5年半を「失われた5年半」にしてはならない。
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