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「しんぶん赤旗」11月8日(火曜日)9面 「学問・文化」欄
石川康宏(神戸女学院大学教授・経済学)さんが、先般の衆議院選挙における若い世代の投票行動について評論を書いている。
全文は以下のとおり。
九月の総選挙では若者の投票行動が一つの話題となった。二十四歳までの若年失業率は8.5%、そのうえ完全失業者の半数が三十四歳以下という厳しい状況である。それをつくる上で大きな役割をはたしたのは自民党政治そのものだが、それにもかかわらず比例ブロック別の出口調査では二十代前半に「高い“自民寄り”の傾向」が示されたという(東京新聞九月十三日付)。三十五歳までの若者たちの行動が総選挙での「自民党大勝」に大きな影響を与えたという分析もあり(メディア・レポリューションでの仁平俊夫氏等)、また首都圏四都県の比例区で自民党を支持した二十⊥二十代の63%は、自民党を「革新」的だと評価してもいる(毎日新聞九月十三日付)。
流されやすさと
脱出願う思いと
そこには大勢に流されやすい若者と、現状からの脱出を願わずにおれない着者との入り混じった姿がある。実際、自民党に投票した若者へのインタビューには「小泉首相がかっこいい」「改革力に期待」「郵政民営化に期待する」等のほか、「増税には反対」「九条は守って」「年金の充実を」という言葉が多い。「なぜ自民党に入れたのか?」と問い返したくなるような答えだが、自分もその一員でありたい社会の大勢が、実は自分を苦しめる現状をつくる力となっていることへの無理解であろう。
とはいえ若者は多様であり、また短期間での変化の可能性をもっている。私のまわりにも憲法や大規模開発を基準に政党を選んだという若者がたくさんいる。彼らはその無理解を宿命づけられた存在ではない。「今どきの若者」を安易に一括し、なおかつ固定的にとらえてしまうのは誤りである。ましてや、そうして勝手につくった若者像に「今どきの若者は」という嘆きをぷつけるだけでは、本当の「革新」の模索を励ますことはできない。
一時的熟狂後の
重要な関心事は
若者の政治意識にかんする面白い調査があった。テレビが「郵政民営化選挙」を叫んだ八月末のアンケートだが、この選挙での全国二十〜三十代の主な関心は、老後の生活63%)、財政赤字(58%)、減税(55%)などであり、郵政民営化は十九項目中十二位(13%)でしかなかったという(政策過程研究機構)。民営化への一時的な熱狂があったとしても、若者はそれとは別に根深い不安や要求をもっているのであり、熟狂が冷めた今それは再び重要な関心事とならずにおれない。
他方でこの調査は、雇用問題への関心の低さを示している。雇用それ自体への関心が低いわけではない。雇用が政治問題、選挙の争点として意識されていないということである。雇用破壊の人為性に注意が及ばず、長くつづく不況への無カ感にも打ちのめされている。三十歳の若者でも「平成大不況」は人生のちょうど半分を覆っている。日本経済にも活力ある時代があったこと、それが奪われたのには理由があり、不況が誰にもはねかえせない「自然現象」ではないことを伝える必要がある。
日常と社会結ぶ
視野や知性育て
あるインタビューには「きちんと意見を話す若者のほとんどが野党の支持者だ」という記者の感想があった(東京新聞九月十三日付)。個人の日常を社会全体のあり方に結びつける視野や知性を育てることが必要である。二十代の新聞無購読率は四割に達しており、特に自民党支持者には今回の選挙でもテレビの影響が強く出ているようだが(朝日新聞十月二十五日付)、それだけに心を通わせる語り合いや学習の取り組みが大切であろう。
何冊かの若者論にも目を通してみたが、残念なことに懸命に生き努力する若者の姿を描いたものが多くない。それがこの社会の閉塞(へいそく)感をいっそう強めることになっている。生きづらい世の中はその通りだが、だからこそそれに立ち向かう姿勢をもった若者の力の分析が必要ではないか。現代の青年を論ずる際に、最初に埋められねばならない空自がそこにあるように思う。
引用ここまで。………………………………………………………………………………………………………………
なお石川さんのホーム・ページは
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