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20年前、私が国税担当の記者だったころ、所得税の最高税率は70%で、私の給与の税率は20%前後だった。つまり金持ちからはごっそりいただき、そうでない者からはその収入に応じてもらうという、今から思えば極めてリ―ズナブルな税制だった。
しかし、この税制は金持ちには我慢のならぬものだったらしい。当時の長者番付で松下電器の創業者・松下幸之助氏の納税額が9億3000万円で全国1位になったとき、氏は国税記者クラブにこんなコメントを寄せてた。
「これだけ税金を取れば江戸時代なら一揆になっている。せめて半分は残してほしい」
幸之助氏の怒りは強烈だった。彼が創立した松下政経塾の元塾頭の回想によると、あるとき氏は塾生たちに「君ら信じられんかもしれないが、実は金に困っているんや」と切り出し、こんな悩みを真顔で打ち明けたという。
「自社株をいくら持っていても創業者が売るわけにはいかん。給料はほとんど税金で持っていかれる。ところが社員や得意先の冠婚葬祭では、みんな僕が金持ちやと思っているからそれ相応に奮発せねばならん。すると手元には金が無くなるのや」(同塾HPより要約)
こうした恨みつらみが政治を動かし、累進税率はその後、大幅に緩和された。所得税に最高税率は今では37%、幸之助氏の悲願は彼の死後にかなえられたのである。「100億円サラリ―マン」の部長さんも、自家用ジェット機で世界を飛び回るIT長者たちも、その恩恵を十分に被っているというわけだ。
彼らの税金をこんなに安くしたのなら、我々のだって当然そうすべきだ。誰もがそう思うのだが、現実は大増税ラッシュ、政府は庶民からカネを巻き上げることしか考えていない。もし民主党が「財政危機で仕方がないと言うなら、まず累進税率を元に戻すべきだ」と主張したら多くの国民の共感を呼ぶはずだが、民主党にそんな気配はまったくない。
だって、中核メンバ―の顔ぶれをご覧になるといい。前原誠司代表、野田佳彦国対委員長、原口一博「次の内閣」大臣・・・・・・・・みんな松下政経塾で幸之助氏の薫陶を受けた人たちである。同塾出身の国会議員は自民、民主両党で今や総勢30人。彼らの大半は新自由主義の信奉者で、タカ派の改憲論者だ。かくて我々の「切ない願い」は与党にも野党にも届かない。それこそ一揆でも起こすしかないのだろうか。
日刊ゲンダイ 2005 11 08
魚住昭の「魚眼複眼」
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