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2005年11月6日(日)「しんぶん赤旗」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2005-11-06/2005110625_01_1.html
公務員削減の動きと一体にいま強力にすすめられているのが、公共サービスの民間化です。指定管理者制度や「市場化テスト」の名で国や自治体が担っていた仕事にどんどん企業が参入できる仕組みです。どんな問題点があるのかをみました。
■指定管理者制度「公の施設」で金もうけ
保育所、公民館、図書館など地方自治体の「公の施設」の管理運営に民間営利企業も指定(参入)できるようになったのが「指定管理者制度」です。
二〇〇三年六月の地方自治法「改正」で導入されました。すでに同制度を導入し実施している自治体が各地で生まれています。自治体は、法人等に管理委託している「公の施設」について、法施行から三年以内(〇六年九月まで)に、自治体直営か指定管理者に任せるかを決めることを義務付けられています。いま地方議会で、指定管理者制度導入の議論がヤマ場です。
■導入自治体増加
指定管理者を導入できる「公の施設」の数は膨大です。例えば、図書館は全国に二千六百九十八(〇三年度総務省調べ)、保育所は一万三千九百九十五(同)、体育館は六千八十四(同)。こうした公の施設は全国に二十万あるともいわれています。
同制度を導入した自治体は着実に増えています。民間のシンクタンク、みずほ情報総研が実施した制度導入に関するアンケート(今年五月調査、回収数五百四十七)では、指定管理者をすでに指定した実績のある自治体は47・9%。指定した団体は公益法人60・9%、民間企業は31・4%で、昨年九月調査と比べると民間企業の比率は15%上昇しています。
民間企業が指定された場合に懸念されるのが利用料金の上昇など公共のサービスの悪化です。同制度では、指定管理者が料金を設定し、収入にすることも認められています。
営利企業の場合、もうけを出すためにパートや派遣労働でまかなったり、最悪の場合撤退することもあります。管理者を指定する際、一般の施設であれば三年―五年が期限で、期限がくればそのたびに公募がおこなわれます。サービスのノウハウや経験の継続性が維持されないこともあります。
東京・大田区のある保育園は民間企業に運営が委託されましたが、利益を生み出すために職員全員をパート、派遣などに置き換え、一年もたたないうちに園長を含め保育士が十七人も入れ替わり問題となりました。
自治体労働者でつくる労働組合、自治労連の木村雅英・中央執行委員は「指定管理者が民間企業になって移行する際、簡単に解雇される危険性がある」と指摘します。実際に公益法人などの職員が解雇される事例も生まれています。
■住民と職員共同
指定管理者制度導入のもとで、ムダを省き、住民サービスを守り充実させる視点にたって、自治体労働者と住民が一緒になって運動し、営利企業でなく公共的団体に指定管理者を任せる例も各地で生まれています。
広島市では市の千五百の施設で指定管理者制度導入を決め、二百四十七施設で指定管理者を公募し、民間企業参入の道を開きました。
しかし、職員労組などが「行政サービスは商品? 市民への公平なサービスはどうなるのか」とビラを配布して市民に訴えるとともに、「市民のための施設や事業は、市民や利用者の意見に基づいて管理・運営されるべきだ」との署名を一カ月半で二万五千の市民から集めて運動。市議会は公募方針の再検討を確認する特別決議をあげるに至りました。
■市場化テスト「聖域設けず」競争入札
公務員削減の「非常に有効な手段」として財界が力を注いでいるのが「市場化テスト」(官民競争入札制度)です。この制度は、公共サービスの担い手を行政機関と民間企業が競争入札で決めるものです。
「指定管理者制度は官のつくったハコモノの運営を民間ができるという制度だ。『市場化テスト』はもっと大きく行政機構の一部も民間でできるというものだ」。規制改革・民間開放推進会議の宮内義彦議長(オリックス会長)は九月末の経済財政諮問会議の場でこう説明し、一例としてハローワーク全事業の民間化をあげました。
すでに〇五年度から三分野八事業(表参照)でモデル事業がスタートしています。規制改革会議は、これまで民間開放の制度がいくつかあるがそれらは部分的だとし、「市場化テストは民間開放の横断的かつ網羅的なツール」だと位置付けています。
経済財政諮問会議の民間議員である日本経団連の奥田碩会長らは「一切の聖域を設けず、すべての公共サービスを検討対象」とすることや、地方自治体の業務にも「市場化テスト」を「円滑」に導入するための法整備まで求めています。さらに、「市場化テスト」推進へ、“民間人”を中心とした「強力かつ中立的な第三者機関」の設置を提言しています。
これらの提言を受け、小泉首相は来年の通常国会に「市場化テスト」法案を提出するように指示しています。
財政的効率のみを強調してすすめられている公共サービスの民間化は、暮らし、福祉を守る国・行政の責任を投げ捨て、新たな国民負担につながる危険を伴っています。
■区議と指定企業との癒着も 足立区の例
東京・足立区で指定管理者第一号の株式会社と地元の一部の自民党が癒着し、税金を食い物にする事件が起きています。
株式会社足立コミュニティ・アーツは二〇〇四年、北千住駅前西口再開発で区が建設した文化芸術劇場「シアター1010」の指定管理者になりました。同社は、元・自民党足立区総支部長で現区長の選対本部長を務めた古庄孝夫氏が社長で、株主には現職の自民党足立区議など自民党関係者がズラリと並びます。
区は〇四年度、開館記念事業を含む管理運営費として九億七千五百万円の負担金を支出。コミュニティ・アーツは開館記念事業で約七千万円の赤字を出しました。ところが精算にあたり、区は協定にもない「事務手数料」名目で約一億四千七百万円をコミュニティ・アーツに支出。そのため、会社は黒字となり、法人税八千三百万円を課税されました。
区民の税金が国税に回る事態に批判も上がり、区議会で追及されると、コミュニティ・アーツ側は黒字を株主配当することをもくろんでいたことが明らかになりました。
日本共産党の針谷幹夫区議は、「同じ足立区にある西新井文化ホールは、区の公社が運営し、長年培われた専門性を生かし、より安い費用で質の高い文化を提供している。株式会社であれば効率がよく専門性が高いというわけではなく、実態は逆です」と語っています。
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