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日本海新聞
http://www.nnn.co.jp/rondan/tisin/051027.html
温故知新 −ビル・トッテン−
富裕層への権力集中の道
2005/10/27の紙面より
第三次小泉内閣が発足し、構造改革にますます勢いがつくことは必至である。
すでに小さな政府
郵政民営化法案に加え「民間にできることは民間に」というスローガンにあるように、自民党は以前から掲げていた「小さな政府」の実現に取り組んでいくことだろう。これには日本経団連の後ろ盾もあり、実際、昨年から経団連は郵政民営化を通じて公務員数削減を要求している。しかし以前から私が主張しているように日本の政府はOECD諸国のどの国よりもすでに公務員の数が少ないのが現実である。日本の公務員は他の先進国と比べて人数においても報酬においても少なく、すでに十分小さな政府なのだ。
その事実を隠して経団連も後押しして改革を進めようとする理由は、「民営化」という名のもとで公共セクターをすべて私有化するためであろう。その手本は米国で、米国を牛耳る少数の人々は何もかも民営化したいと思っている。社会保障年金、郵便貯金、電力、水道、そして空気さえも排出権取引によって売り買いされるものなのだ。
独り占めする権利
私は京都の鴨川沿いに住んでいるが、鴨川と私の家の並びとの間は公共の遊歩道となっている。川から離れたところに住む人も遊歩道を散歩することで、この美しい自然を誰もが楽しむことができるのはとても幸せなことだと思う。しかしもし米国のやり方をすべて模倣し始めたら、この遊歩道も、それから美しい湖畔や海岸も私有化されその景観を楽しむことができるのは一部の、それもほんと一握りの金持ちだけになる日が日本にもいつかくるかもしれない。なぜならすでに米国にはそのような「通り抜けお断り」の私有地が数多くあるからだ。
カリフォルニア州にマリブというところがある。この美しい海沿いには豪邸が立ち並び、多くがプライベートエリアになっていて一般人は入ることはできない。本来カリフォルニア州では満潮時の線よりも下にある海岸はすべて公共のはずなのだが、マリブに住む富裕層は長くこの州の法律を無視してきた。この南カリフォルニアの辺りには大きなショッピングセンターはいくつもあるが公共の大きな美しい公園というものがない。
そういう意味で、美しい海岸は素晴らしい公共スペースとして一般の人々に広く開放されるべきなのだが、この辺りの美しい海沿いは一般人進入禁止の立て札ばかりの、プライベートビーチとなっているのが現実である。
米国では金持ちの人々が住む地区はそれ以外の地区と完全に遮断することを求めて、近隣全体を高い塀で囲んでいることが多い。このマリブのビーチフロントに住む金持ちの住人たちは、一般の人々から完全に孤立したいと思っているし、またそれができると思っているために、海水浴客たちが自分の家のそばを通ることを許せず「進入禁止」にしているのである。
私の鴨川沿いの家がそうであるように、公共の土地に隣接した場所に住んでいれば人が近くを通行するのは当たり前のことであり、歩道にロープを張って人が歩かないようにしろとは誰も要求しない。私が信じられないことはマリブに住む住人たちが、自分たちが公共から孤立した美しい場所を独り占めする権利があると思っていること、そしてそれを実行に移していることである。
米国人は貧困直面
ハリケーンに襲われたニューオーリンズで、多くの貧しい米国人が避難するお金も手段もないという現実を目にして、多くの日本人は驚かれたのではないかと思う。日本の人々が観光旅行やハリウッドの映画やテレビを通して目にする米国は、全体の1%にも満たない途方もない金持ちの、マリブの海岸からの視点なのである。
米国人は日々貧困に直面している。特に中流以下の人々は、レイオフや交通事故、病気になればいつ貧困線以下の生活に転落してもおかしくない。米国人はそれを知っている。米国の貧困を無視しているのはメディアであり、映画やテレビが映し出す、そして日本人がアメリカンドリームとしてあがめる貧困とは無縁のその米国像は虚像なのである。
私は米国の現状を少しも誇張してはいない。大部分の米国人は、会社を解雇されないか、来月の請求書が払えるか、国民皆保険制度がないために病気になれば医療費をどう支払うかを、日々心配しながら暮らしている。
米国を模倣する小泉政権が提唱する市場経済も民営化は米国と同じ、不平等の上に成り立っている。市場経済や民営化で、権力やお金を持つ者が自由に美しい海岸線をも独り占めできるようになる一方で、国民の大多数をしめる労働者にそのようなチャンスはない。政府が小さくなればなるほど、大企業や富裕層に権力が集中する。いまの米国をみればそれが一目瞭然(りょうぜん)だが、日本はその道を進み始めている。(アシスト代表取締役)
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