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(回答先: 皇室典範:有識者会議報告書の全文 その1(毎日新聞) 投稿者 熊野孤道 日時 2005 年 11 月 25 日 21:09:23)
毎日新聞からhttp://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/koushitsu/news/20051125k0000m010159000c.htmlより引用
皇室典範:有識者会議報告書の全文 その2
3 安定的で望ましい皇位継承のための方策
1・皇位継承資格
《歴史と現行制度》
明治22年の旧皇室典範(以下「明治典範」という)の制定までは、皇位継承についての明文の規定はなかったが、皇位は、それぞれの時代の価値観や社会情勢を背景にしつつ、すべて皇統に属する男系の者で皇族の身分を有するものにより継承されてきた。その際、半数近くは非嫡系による継承であった。また、10代8方の女性天皇(男系女子)が存在するが、その性格や位置付けについては、必ずしも一括りにすることはできない。
明治典範において、皇位継承をめぐる争いを回避するなど皇室制度の安定化を図るため、皇位継承について初めて明文化されたが、その際、皇位継承資格が男系男子(非嫡系を含む)に限定された。
さらに昭和22年に制定された現行の皇室典範(以下「現行典範」という)で、嫡出であるという要件が加えられた。
この結果、現行制度は、歴史上、皇位継承の仕方が最も狭まったものとなった。
現行典範では、皇位継承資格者の要件として、皇統に属する嫡出の男系男子の皇族であることを定めている。この制度の趣旨は以下のとおりである。
(1)皇統に属すること
歴代天皇の血統に属することを求めるものであり、世襲制をとる以上当然の要請である。
(2)嫡出であること
明治典範では非嫡出子も皇位継承資格を有することとされていたが、戦後、現行典範制定時に、社会倫理等の観点から、嫡出に限定されたものである。
(3)男系男子であること
歴史上、皇位は一貫して男系で継承されてきたことなどから、明治典範、次いで現行典範において、この要件が規定された。
(4)皇族の身分を有すること
皇族制度は世襲による皇位継承を維持するための仕組みであり、その趣旨から当然の要請である。
上記の皇位継承資格者の要件のうち、(1)「皇統に属すること」及び(4)「皇族の身分を有すること」は、制度の趣旨から当然の要請であり、また、(2)「嫡出であること」は、国民の意識等から今後とも維持することが適当であるため、皇位継承資格者の安定的な存在を確保するための方策を考えるに当たっては、(3)の男系男子という要件が焦点となる。
(1)男系継承の意義等
皇位は、過去一貫して男系により継承されてきたところであり、明治以降はこれが制度として明確にされ、今日に至っている。
ア・皇室典範制定時における男系男子限定の論拠
明治典範、現行典範の制定時には、男系継承を制度化するに当たり、それぞれの時代背景の中で、様々な論拠が挙げられている。
具体的には、明治典範制定時には、
・男性尊重の国民感情、社会慣習がある中で女性天皇に配偶者がある場合、女性天皇の尊厳を傷つける。
・我が国の相続形態は男子を優先し、長子が女子で次子以降に男子がある場合は男子が相続することになっている。
・歴史上の女性天皇は臨時・中継ぎのいわば摂位であり、皇統は男統に存するというのが国民の考え方である。また、その在位中、配偶者がなかったが、今日、独身を強いる制度は、道理や国民感情に合わない。
・女性天皇の皇子は女性天皇の夫の姓を継ぐものであるから皇統が他に移り、伝統に反する。
・配偶者が女性天皇を通し政治に干渉するおそれがある。
・女性が参政権を有しないにもかかわらず、政権の最高の地位に女性が就くことは矛盾である。
などの点が指摘され、また、現行典範制定時には、
・過去の事例を見る限り男系により皇位継承が行われてきており、それが国民の意識に沿うと考えられる。
・歴史上の女性天皇は臨時・中継ぎの存在であったと考えられる。
といったことがその論拠とされた。
イ・男系継承の意義についての考え方
男系継承の意義等については、今日においても、
・これが我が国の皇位継承における確立された原理であり、それ以上に実質的な意義を求めること自体が無意味であるとする見解
・女系になった場合には皇統が配偶者の家系に移ったと観念されるため、これを避けてきたものであるとする見解
・律令や儒教など中国の影響により形成されたものであり、必ずしも我が国社会固有の観念とは合致せず、また現実に、女系の血統が皇位継承において相応の役割を果たしてきた事実もあるとする見解
・武力等を背景とした伝統的な男性優位の観念の結果によるものであり、男系継承自体に固有の原理が存在するわけではないとする見解
など、種々の議論があるが、これらは個人の歴史観や国家観に関わるものであり、それぞれの見解の当否を判断することから皇位継承資格の検討に取り組むことは適当ではない。したがって、ここでは、これまで男系継承が一貫してきたという事実を認識した上で、過去どのような条件の下に男系継承が維持されてきたのか、その条件が今後とも維持され得るのか、を考察することとする。
(2)男系継承維持の条件と社会の変化
男系による継承は、基本的には、歴代の天皇・皇族男子から必ず男子が誕生することを前提にして初めて成り立つものである。
過去において、長期間これが維持されてきた背景としては、まず、非嫡系による皇位継承が広く認められていたことが挙げられる。これが男系継承の上で大きな役割を果たしてきたことは、歴代天皇の半数近くが非嫡系であったことにも示されている。また、若年での結婚が一般的で、皇室においても傾向としては出生数が多かったことも重要な条件の一つと考えられる。
このような条件は、明治典範時代までは維持されており、制度上、非嫡出子も皇位継承資格を有することとされていたほか、戦前の皇室においては、社会全般と同様、一般に出生数も多かったことが認められる。
しかしながら、昭和22年に現行典範が制定されたとき、まず、社会倫理等の観点から、皇位継承資格を有するのは嫡出子に限られ、制約の厳しい制度となった。実際に、現行典範の制定の際の帝国議会では、皇籍離脱の範囲を拡大するとともに、非嫡出子を認めないこととすれば、皇統の維持に不安が生じかねないため、女性天皇を可能とすべきではないかとの指摘もあった。
近年、我が国社会では急速に少子化が進んでおり、現行典範が制定された昭和20年代前半には4を超えていた合計特殊出生率(1人の女性が、一生の間に産む子供の数)が、平成16年には1・29まで低下している。皇室における出生動向については、必ずしも、社会の動向がそのまま当てはまるわけではない。しかし、社会の少子化の大きな要因の一つとされている晩婚化は、女性の高学歴化、就業率の上昇や結婚観の変化等を背景とするものであり、一般社会から配偶者を迎えるとするならば、社会の出生動向は皇室とも無関係ではあり得ない。戦前、皇太子当時の大正天皇が結婚された時のご年齢が20歳、その時点で妃殿下が15歳、昭和天皇のご成婚時(同じく皇太子当時)には、それぞれ22歳と20歳であったことを考えると、状況の変化は明らかである。現に、明治天皇以降の天皇及び天皇直系の皇族男子のうち、大正時代までにお生まれになった方については、お子様(成人に達した方に限る。)の数は非嫡出子を含め平均3・3方であるのに対し、昭和に入ってお生まれになった方については、お子様の数は現時点で平均1・6方となっている。
男子・女子の出生比率を半分とすると、平均的には、1組の夫婦からの出生数が2人を下回れば、男系男子の数は世代を追うごとに減少し続けることとなる(注)。実際には、平均的な姿以上に早く男系男子が不在となる可能性もあれば、逆に男子がより多く誕生する可能性もあるが、このような偶然性に左右される制度は、安定的なものということはできない。
このような状況を直視するならば、今後、男系男子の皇位継承資格者が各世代において存在し、皇位が安定的に継承されていくことは極めて困難になっていると判断せざるを得ない。これは、歴史的に男系継承を支えてきた条件が、国民の倫理意識や出産をめぐる社会動向の変化などにより失われてきていることを示すものであり、こうした社会の変化を見据えて、皇位継承の在り方はいかにあるべきかを考察する必要がある。
(注)試みに、仮に現世代に5人の男系男子が存在するとして、現在の社会の平均的な出生率(平成16年合計特殊出生率1・29)を前提に、将来世代の男系男子の数を確率的に計算してみると、男子・女子の出生の確率をそれぞれ2分の1とすれば、子の世代では3・23人、孫の世代では2・08人、曾孫の世代では1・34人と、急速な減少が見込まれる(出生率を1・5としても、曾孫の世代では2・11人となる。)。
毎日新聞 2005年11月25日 0時06分
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