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ODAは日本外交の源泉 渡辺利夫 拓殖大学長に聞く (東京新聞)
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投稿者 彗星 日時 2005 年 11 月 23 日 18:19:16: HZN1pv7x5vK0M
 

核心
2005.11.23

ODAは日本外交の源泉
渡辺利夫 拓殖大学長に聞く

 政府系金融機関の改革方針が政府の経済財政諮問会議で固まってきた。だが、政府開発援助(ODA)の円借款を担う国際協力銀行(JBIC)の扱いに関しては議論が割れている。改革では再編後の「数」に関心が集まりがちだが、ODAの問題を考える上で、今の議論だけでよいのか、渡辺利夫拓殖大学長に聞いた。

 日本のODAは「顔が見えない」とよくいわれる。だが、ODA事業の現場を足しげく歩いてきた私には、そうは思えない。

 ODAとは異文化社会でかの地の人々と「協働」して行う事業であるから、もちろん失敗例もある。それでも日本のODAは現地の政府や住民に好意をもって受け止められているものが大半である。

 日本は世界第二の経済力を持ちながら、国際秩序形成に軍事力をもって臨むことには著しく抑制的である。憲法がそれを禁じているからである。

 ならば、もっとも重要な外交手段はODAでなければならない。「国際社会の平和と発展に貢献し、これを通じてわが国の安全と繁栄の確保に資する」。ODA大綱冒頭のこのセンテンスが、日本のODAの理念を集約的に物語る。

 貧しき国々、虐げられし人々、弱い立場の人間に助力の手を差し伸べ、それによって生まれる開発途上国の日本に対する信頼と尊敬があって初めて日本の安全と繁栄が確保されるのだという、日本外交が目指すべき理念がこの一文に込められている。

 ODA外交がいかに重要かは、今後十年ほどの間に生じるであろう日本の安全保障環境に少しでも想像力を働かせてみればすぐに分かるであろう。国際テロリズムとの闘いは恒常的なものとなろう。中国やインドの「膨張」が、石油を中心とした資源の国際的争奪戦を招来する可能性が高い。

 武力行使を禁じ、武器取引にも自らを厳しく律する一方、エネルギーや食料の供給を圧倒的に開発途上国に依存する日本が生存を全うするための手段は、一言で言って「外交力」以外にはない。繰り返すが、ODAこそは日本の外交力の最重要の源泉なのである。

 政府系金融機関の改革論議を私は期待をもって見守っている。しかし、政府系金融機関の統合問題とODA関連機関のそれとが同列に論じられていいはずがない。外交の手段としてのODAがいかなるものであるべきかを本格的に論じ、それに見合った組織再編が構想されねばならない。

 ODA成功の要諦(ようてい)は人材である。外務省に対する世の風当たりは強いが、開発途上国の言語と事情に通暁した専門家を長年にわたって育成・蓄積してきた最大の組織が外務省である。これに現在は国際協力銀行の一部となっている旧OECF(海外経済協力基金)ならびに技術協力を主務とするJICA(国際協力機構)、さらには大学・研究所での地域研究者・開発協力集団が加わる。

 これらの組織と人材の中に潜む優れた知識とノウハウを組み合わせて機動的なODAを展開することなくして、日本の外交力を発揮することは難しい。

 日本のODAを一元化し、これを首相直属の機関の下に置くという案などが検討されているという。大胆な案だが、過去に育成・蓄積されてきた人材をどう配分してこれを実現するというのだろうか。

 専門的人材とは、知識とノウハウを持つのみならず、ODAの現場で働くことに人生の意義を見いだす高い志と熱い情熱を持った人間のことである。彼らの士気を最大限発揚する組織的再編こそが改革の精神でなければならない。

 わたなべ・としお 1939年、甲府市生まれ。慶応大卒、経済学博士。筑波大教授、東京工大教授を経て2000年に拓殖大国際開発学部の初代学部長。05年から現職。外務省のODA総合戦略会議議長代理なども務める。「成長のアジア 停滞のアジア」(吉野作造賞)、「開発経済学」(大平正芳記念賞)などの著書がある。

http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20051123/mng_____kakushin001.shtml

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