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タミフル 日本人消費世界一のなぜ
8割を独り占め『ドリンク剤並み』
新型インフルエンザ出現に備え、治療薬の切り札といわれる「タミフル」の備蓄に今、各国が躍起となっている。新型に対応したワクチンがすぐできないため、この治療薬に頼るしか手がないからだ。日本もやっと備蓄に本腰を入れ始めたが、実は目下、タミフルを最も消費しているのが日本だ。消費世界一のわけとは−。
「これまで、タミフルは副作用もあまり言われていなかった。患者の中には、『家に置いておきたいから』とか、予防的に『出してほしい』という人も多かった。子どもがいる人だけでなく、若い人からお年寄りまで、そういう傾向があった」。こう話すのは、神奈川県内で開業する内科医(56)だ。日本では、タミフル“信仰”が蔓延(まんえん)しているようだ。
「今は検査キットで、すぐにインフルエンザかどうかが分かるが、忙しい病院では、検査せずに患者に症状を聞くだけで、タミフルを出してしまうところも多いと思う。(鳥インフルエンザの影響で)これからは『欲しい』という人が増えるだろう」
東京都内の内科医も「うちはキットで検査して、必要な人に出しているが、確かに『タミフルを欲しい』という人はいる」と話す。
不足が指摘されているタミフル。実は、これまでも日本はタミフルの大量消費国だった。
■子どもの処方量米国の13倍にも
製造元のスイス・ロシュ社の調査では、過去五年間に日本で約二千四百万人がタミフルの処方を受けており、処方量は世界の77%を占めたといわれる。日本の販売元・中外製薬によると、一昨年から今年六月までの全販売額の43%が日本分だという。米食品医薬品局(FDA)の調査では、過去五年の処方分のうち、子どもの処方量は、日本が米国の十三倍に上ったとのデータもある。
それだけに、「副作用」情報に波紋が広がった。今月、少年二人がタミフル服用後、トラックに飛び込んだり、マンションから転落するなどの異常行動を起こしていたことが分かった。FDAは日本の十六歳以下の服用者十二人が死亡していたことを発表した。二〇〇三年一月には、服用した二歳児が溶血性貧血を発症した。
ただ、タミフルの「副作用」情報について、専門家の間からは、「発熱や他の薬の影響などを考える必要がある」などと、否定的な意見がある。FDAも同様の見方だ。
厚労省安全対策課は「タミフルと死亡などとの関係については、専門家の意見も聞いたが、否定的であることから、現段階でタミフルの安全性に重大な懸念があるとは考えていない」という。
だが、少年の事例を公表したNPO法人・医薬ビジランスセンターの浜六郎代表は「そのような考えは間違い。異常行動は、熱が下がってきてから起きた子もいるし、熱がなく、タミフルだけしか服用していなくて起こしている子もいる」と指摘する。
■インフルエンザの『恐怖症』で拍車
日本での大量消費はなぜか。浜氏は、まず「インフルエンザについて、恐怖をあおる情報が意図的に流され、多くの人の脳裏に植え付けられたからだ。二〇〇〇年までは、きつい解熱剤をよく使っていて、そのためにインフルエンザ脳症で死亡例が多発した。インフルエンザは怖い、という宣伝が行き渡ってしまった」と指摘する。
この“インフルエンザ恐怖症”を前提に、浜氏は「患者側は、タミフルが効かない場合や、異常行動などが起こる可能性も知らされていなかった。一方で、良心的な医者が、薬を処方しないようにすると、患者側が離れていく。副作用の説明や、薬が要らないことを患者に説明するのに時間がかかり、『出した方が早い』と考えてしまうような状況がある」といった事情を指摘する。
さらに、「各国との保険制度の違いもあるのでは。日本は保険診療の範囲で処方を受けることができる」(医薬品メーカー関係者)。しかも三歳未満の場合は、医療費を無料としている自治体が多いことも、大量消費と無縁ではなさそうだ。
文化的な違いもあるようだ。欧米では、風邪では医療機関にかからず、安静にして治すことが主流だという。山野美容芸術短期大学の中原英臣教授(ウイルス学)は「(タミフルは)一錠三百六十円もする高い薬だが、まるで栄養ドリンク剤を買うような感覚で患者側が手にしている現実がある。もうひとつは日本は医者も患者も薬好きで、効果があるとなると、すぐに飛びつくという習性があり、もともと薬に対するアレルギーがない」と指摘する。
「ワクチントーク全国」元代表で小児科医の毛利子来(たねき)氏も「日本の医者は薬好きで、病気は薬で治すという薬信仰が強く、患者側を必要以上に薬に頼るようにしてしまった。それを可能にしてきたのは、日本の診療報酬制度で、高い薬を出した方がもうかるというシステムもその一因」と「薬漬け」の影響も指摘する。
大量消費は別の懸念も呼ぶ。タミフルは発症後四十八時間以内に服用する治療用として使用されるが、予防用にも使用される方向だ。予防内服は保険の対象ではないが、「今後、(予防内服の保険適用が)公式に認められていく可能性もある」(都内の病院関係者)。
■予防目的の内服「本末転倒だ」
毛利氏は「とんでもない話。予防用にタミフルを大量に投与すれば、免疫力が弱まって、薬が効かなくなる耐性タイプの新型ウイルスをつくり出すことになる。日本でも耐性ウイルスは十数%出ているという報告もあり、予防内服は本末転倒だ」と指摘する。
厚労省は十四日、タミフルの備蓄目標をそれまでの約一・七倍の二千五百万人分に増やした。だが、世界各国で必要となっている今、このまま大量消費を続けると国際批判も出かねない。
毛利氏は「タミフルに頼りすぎてはいけない。生まれながらの心臓病の患者や肺炎を起こす可能性がある人など重篤の患者などに限定し、インフルエンザになった患者に単純に出すようなやり方はやめ、使用の仕方も制限すべきだ」と主張する。
大阪赤十字病院小児科の山本英彦副部長も「乳幼児などの子どもの場合、心臓疾患や重篤の脳性マヒを抱えてたり、肺炎を併発しかねない症状などの場合は、タミフルを積極的に投与すべきだ」と処方基準を示す。
「大阪市内の個人病院でも最近、タミフルがなかなか手に入らなくなったという話も聞く。安易に使わなくなるという意味では逆にいい方向に向かっているのでは」(大阪府立公衆衛生研究所関係者)という声も聞かれるが、これでは消極的すぎないか。
中原氏はこう言う。「医薬分業になって、ある意味で自己責任の面もある。タミフルに限らず副作用はある。添付文書も付いており、分からなければ、薬剤師に聞くべきだ」
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20051123/mng_____tokuho__000.shtml
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